後日談
※R18です。苦手な方は閲覧をお控えください。
“ちょっ……凛ちゃん!私こんなの履けないよ!!”
“いつも着けろとは言ってないわよ。ここぞ、ってときに使えばいいんじゃない?”
“ここぞ、っていつ!?──ていうか恥ずかしくて履きたくない!”
“んー、それこそクリスマスとか誕生日とか?別にいつでもいいのよ。──御幸を喜ばしてやんなさいよ。女の下着って男を興奮させるものでもあるんだから”
“興奮なんかしなくていい!これ……っ、着けてどーするの!?”
“──エッチする時に履いてればあとは御幸がどうにかするわよ。じゃ今年のプレゼントはこれね〜。もう渡したから返品不可!”
“凛ちゃん!!”
──高3の時の姉との会話が頭に浮かぶ。毎年頼んでないけれど、何かしら姉からクリスマスプレゼントをもらっていたが、高校生活最後の年のプレゼントは今まで履いたことのない形をした下着のセットだった。
その下着の形は姉が好んで履いている。下着のラインが出ないので着ている服に響かないとか、夏場は蒸れなくて楽だとか、色々とメリットを言われたけど自分には関係ないとスルーしていた──のに。
洗濯をする時にお目にかかっていたそれと同じタイプのものを、自分が履く日が来るなんて。
『……そーいえばさ、凛さんがクリスマス前に言ってたじゃん。澪にあげるプレゼントの話』
「……え?」
『結局もらったんだろ?年末年始に会った時は慌ただしくて忘れてたけど。俺まだ着てるの見たことない、よな』
「え、あ、えーっと……うん」
『じゃー今度着けてきて♪』
「えっ!……ていうか、す、捨てたの!!」
『……貰った物、簡単に捨てるタイプじゃねーだろ?』
「うっ……」
『じゃあ次会う時よろしく〜』
……で、今に至る。
プロ野球選手の仲間入りを果たした一也とは、そう頻繁に会えなくなった。だから下着のことは忘れてるだろうと思っていたら、会う前日に念押しの連絡が来て逃げられなくなった。何でちゃんと覚えているのか、ノリノリなのか。
ホテルで、シャワーを浴び下着を履き替える。初めて履いたそれは生地の面積が普通のそれとはあまりにも少なくて、今までにない冷や汗が流れる。浴室の鏡で後ろ姿を確認すると、下着を着けているのにお尻が丸出しだった。恥ずかしすぎて、もう脱ぎたくてたまらないけれど、この後の事を想像すると堂々巡りな気がする。下着の上からタオルを巻いて、憂鬱な気分で扉を開けた。
先にシャワーを済ませていた一也が私に気付くと、ベッドに呼ばれ押し倒される。私はまだ100%覚悟が出来ていなかった。初体験の時以上に今の方が恥ずかしい。どうにかこの姿を見られない方法が無いものかと必死で考える。
──真正面から見ると普通の下着と変わらないから、後ろ姿を見られないようにする!
考えがまとまったのと一也が私の巻いていたタオルを取るのがほぼ同時だった。いつもの下着よりはレースも多めで可愛いから、後ろを見られる前に脱ごう!
「これ?凛さんからもらったヤツって」
「……うん。凛ちゃんの好みだけど……可愛いでしょ?」
「おー。でも凛さん“エロ可愛い”って言ってたんだよなー」
私はギクッと固まる。ここは凛ちゃんのエロはこの程度だ、という流れに持っていきたくて「色とかレースとか」と慌てながら口を動かした。
一也は「ふーん」と呟いた後、唇を近づけた。重なった唇はすぐに濃いキスに変わった。頭がクラクラしながら浸っていると、一也が私の身体を起こした。後ろに回した腕が肩、背中とだんだん下りて触れてくるのが分かると、私はハッとして唇を離した。
「もう脱ぐ」
「え?積極的〜」
ニヤつきながら驚いた一也を目の前にショーツに手をかけようとした瞬間、一也が私のお尻に触れた。
「ひゃっ」
「え」
「──あ……っ!」
「ちょっと待って、もしかして」
私は思わぬタイミングで一也に素肌を触られたことに驚き、一也はあると思っていた下着の生地が無かったことに驚いている。
一刻も早く脱ぎたい私の手を一也が上から抑え、止めた。
「澪チャン、後ろ向いて♪」
「や、やだ」
「これTバックだろ?──なら後ろから見ないと意味ないじゃん」
「見なくていい、見なくていい!──わっ」
一也は言いながら私のお尻を触り始める。パニックになっているのも災いして、頭が働かない。
一也は腕の力を強めた。力ずくでひっくり返す気だ。昔ならった空手の技をここで繰り出してもいいのだが、プロ野球選手となり身体が資本になった彼氏でもある一也にそれ以上の気は起きなかった。
身体が反転しベッドの生地が顔に触れ、一也にお尻を突き出す格好になり赤面する。顔が見られないのがせめてもの救いだった。
「──うーわ、えっろい」
「……もういいでしょ!?──ひゃっ……」
お尻に柔らかい感触がする。上体を上げ振り向くと、一也は下着を脱がさぬままお尻にキスをしている。後ろ手に止めようとするが無理だった。
何をされるか分からない、という状態がいつも以上に感度を高めてしまう。
「すげー感じてる」
「も……言わなくていいっ、そんなこと」
「後ろからの方が感じやすい?」
一也が覆い被さってきたのが分かると、後ろから胸を揉まれる。もう片方の手は股に触れる。下着越しなのにどうして、と働かない頭で考えるけれど、下着越しだからなのか、と納得しいつもと違う感覚に溺れる。
表情が分からない分、手の感触に一層敏感になる。
「凛さんに感謝だわ〜、澪エロ過ぎる」
「そんなこと、ない……っ」
「1回この体勢のまましよ」
1回って、と突っ込みたかったがそんな余裕もなくなった。
一也が喜んでいるのは確かだけど、私にとって良かったのか悪かったのか。
クリスマス後に日の目を見ることになったプレゼントは、凛ちゃんの思惑通り大活躍となった。
お題『想像できないかもしれないが、クリスマスなので彼氏のためにエッチな下着を履いている』
お題はtwitterから拝借しました。
2017.12.22