2016 Autumn



※御幸と青道マネージャー





「御幸!Trick or Treat!」

「――ん?」

「トリック・ア・トリート!ほら、何かちょーだい!」

「――何それ」

「今日ハロウィンでしょ!『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ』って意味!ほら早くー」

「あー…、ハロウィンってそんな日だったのか」

「もしかして知らなかったの!?」

「いや仮装する日とばっかり……」

「もー、じゃお菓子!くれれば出てくからーー寮に長居してたらマズイから早くして!」

「俺甘いもん食わねーから菓子なんて持ってねーよ」

「甘いお菓子じゃなくても塩系のやつとか……ってなに座ってんの」


 今この部屋には御幸1人だけだった。寮の同室の誰かが持っていそうなお菓子を探すこともせず、御幸は胡坐をかいて床にどっかりと座り込んでいる。


「お菓子あげなかったらイタズラするんだろ?」

「……え?」

「どんなイタズラされんのかなー」


 ニヤニヤと笑いながら言う御幸に、完全に予想外だった私は面食らって固まった。


「お、お菓子ないならもーいい!次の部屋に行く」

「まーまー、お前が思うイタズラを俺にやっていいって言ってんだけど。こんなチャンスないぜー?」

「そ、そんなチャンスいらない!お邪魔しましたっ!!」


 思考のキャパを大きく超えたパニックの私は、出て行く前に御幸の頭を思いっきりはたいて部屋を飛び出した。


 御幸が「イタズラ」って言うと変な意味に聞こえるのは、きっと奴の素行が悪いからだ…!

 ハロウィンもやる相手を選ばなきゃ……と一気に疲れた私はがっくりと肩を落とした。








(ハロウィン当日・御幸)

2016.10.27



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