2015 Autumn



※御幸連載小ネタ




 3年に進級して、まだ教室内も落ち着かないある日の昼休みに携帯が震えた。
 制服のポケットに手を入れると振動が止んだので、電話ではなくメール着信だと分かった。
 誰からだ、と思い携帯に触れると馴染みのある奴からだった。中学の頃からの仲で、今では彼女である人。

 メール本文は、あいつらしい簡潔な文章だった。


 “やほ!新入部員はどう?キャプテン”


 先日、青道野球部に新1年が入部した。例年に負けず今年も多人数。シニアで名が売れている奴だったり、中学でエースを張っていた奴だったり。毎年それは変わらずなのだが、今年は粒揃いというか、この間まで中学生だったにも関わらずオーラが出ている奴が多い気がする。


 俺は1人で席についているのをいいことに、指先を動かした。


 “今年は戦力にもなりそうだけど、生意気な奴が多そうだよ”


 ポチ、とメールを送信すると、頬杖をついて外を眺めた。1学期の初めというのは慌ただしい。放課後はすぐに練習だし、このゆったりとした一時を堪能すべく机に伏せようかと思っていた時だった。

 机に置いていた携帯がまた震えた。手にとって操作するとメール着信で、送信者は先程と同じだった。

 携帯のキーを押し、画面を見た俺は固まった。


 “御幸より生意気な奴ってそういないから大丈夫だよ”



「ぶっ……」


 完全にメールに気を取られていて、近くに人がいるのに全く気付かなかった俺は振り返ると、口に手を当て笑いを堪えている倉持が背後に立っていた。


「ヒャッハッハ!やっぱ分かってんなー流石!!」


 この調子だとメールの内容を見たんだろう、倉持が腹を抱えているのを見て俺はあからさまに不満げな顔をした。


「つーか倉持と同じクラス、もういいんですケド」


 「何か言ったかコラァ!」という倉持を無視して、俺は何て返信をしようか考えを巡らせた。






2015.11.5





×
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -