2015 Summer



※少し下品かもです




 夏休みの青心寮――甲子園が終わっても青道高校野球部の面々は休むことなく厳しい練習を日々行っていた。そんな寝る前のちょっとしたひと時。


「なーなー、皆これ見ろよ」


 御幸の部屋に集まっていた寮生数人が一斉に「見ろ」と言われた雑誌に注目した。水着姿の女の子が10人、それぞれ違ったポーズをきめて写っている。


「今からタイプの子、いっせーので指差そうぜ!」


 「え、ちょっと待てよ」「ちゃんと見えねえ」「俺もう決めた」等と言葉が行き交った後、大きめの声が部屋に響いた。


「いっせーの――…せ!」


 その場にいた者全員が雑誌のページに人差し指を向けた。辺りが一瞬静まりかえる。皆それぞれ好みの子を確認した後、倉持が最初に口を開いた。


「…思ってたより割れたな」

「一番人気はこの子か…確かに笑顔がカワイイな」

「でも水着で写ってるんだからやっぱ身体重視だろ」

「なるほどな、だからお前巨乳の子選んだんだな」

「――そういうお前はどうなんだよ!!」


 この部屋にいるのは御幸、倉持、木島、白州、川上、麻生、樋笠だ。皆言い分があるようだが、水着から、女性の身体のどの部分に惹かれるかという話題に発展した。


「やっぱ胸だろ、大きいと目がいくし」

「俺も胸」

「俺は尻だな、やっぱ」

「俺うなじとか見ちゃうな」

「ムチムチの太ももとかたまらねー」

「ワキも好きだけど。二の腕が柔らかそうだったら言う事なし」

「ワキかよ!」


 それぞれこだわりを言い合っているなか、ある男が溜息まじりに呟く。


「でも生で水着ギャルなんて拝めねえしよー、野球ばっかでプールや海にも行けねえ」

「まーなー、夢のまた夢だよな…」

「あーくっそ、ちょっとでいいから遊びてえ」

「青道入った時点で覚悟はしてたけどね」

「…俺もだ」

「俺も」

「なー」


 高校生活の全てを野球に捧げ頑張るのを覚悟してはいたが、たまにふと普通の高校生が過ごしている夏休みを想像して、気落ちする。そうなると「自分が選んだ道だから」と思い直し、また奮起するのだ。



「…まあ明日も早いし、お前らそろそろ部屋戻れよ」

「じゃあ『タイプの子』じゃなくて『ヤりたい子』ならどの子か選ぼうぜ!」

「…待てよ、もうちょっとよく見てから決める」

「俺はタイプもヤりたい子も同じだ」

「俺もそうだなー」

「カッコつけやがって!そうなりゃ話は変わってくるぜ、乳と尻がデカイ子に決まってんだろ!」

「…必死だな、お前」






 くだらない話で盛り上がったり、ちょっとしんみりしたり、夏の夜の青道高校野球部。










誰がどの台詞かは、ご想像にお任せします。


2015.7.6



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