03 動 1


 牧率いる海南は、インターハイ準優勝という結果になった。優勝出来なかったのは本当に悔しい。だが牧は引退はせず、冬の選抜も出場するつもりなので、選抜こそは優勝してみせるという気持ちの方が強くなった。



 決勝戦が終わり、あとは神奈川に帰るだけなのだが、表彰式が残っている。今年は会場の関係で女子の表彰も一緒に行われることになったそうだ。女子の決勝戦終了後にそのまま表彰式を行うため、監督の案で決勝戦を観戦することになった。


 しかし会場に着いた時にはコートに選手の姿もボールの跳ねる様子も見られなかった。試合開始時間から計算して、前半が終了してハーフタイムといったところか。少し遅れて着いたようだ。(監督……)


 インターハイの決勝戦ともなると席が空くことなどそうないが、観客席には所々空席がある。トイレ休憩や飲み物を買いに行く等、後半戦が始まるまで各々一休みしている様だ。それを眺めていると、「牧」と後ろから声をかけられた。振り返ると見知った顔が。


「諸星、お前も来てたのか」


 愛知県男子代表愛和学院のキャプテン諸星大だった。


「嫌味かよ。海南には負けたけど3位決定戦で勝ったんでね。表彰式待ちのついでといっちゃ悪いが同郷の女子チームを応援しに来たんだよ」
 

 愛和学院の勝利は知っていたが、そういえば決勝戦の対戦カードなど全然チェックしていなかったことに気付く。諸星と同郷―ということは愛知県代表か。


 「桜ケ丘か?」


 桜ケ丘といえば高校女子バスケの全国優勝常連校で有名だ。ぶっちぎりといっていい程だ。インターハイ、選抜と何回優勝しているか数えきれない。

 諸星は牧の顔を少しばかり見つめた後呆れ顔でつぶやく。


 「相変わらず天然だな牧は……。今から試合見ようとしてんだろうが?対戦カードぐらいチェックしとけよ」


 牧はコートに目を移して得点ボードに目を凝らす。1校は愛知代表の桜ケ丘だった。そしてもう1校の名前を確認して目を見開く。その直後に自然と顔がほころんだ。

 牧が微笑んでいるのを見た諸星は、顔を引きつらせ、牧を訝しげに見つめた。


 もう1校とは玲奈の高校だった。そうか、決勝までいったのか。凄いな、と牧は心の中で感心し、喜んでいた。また、対戦カードをチェックしていなかったのを後悔した。事前に知っていれば前半も見れたのに、と。


「……何が楽しいのか分からねーが、もうすぐ後半始まるから、俺らと一緒に試合見ねーか?」


 諸星の言葉で牧は我に返った。


「悪いが桜ケ丘の対戦相手の方に知り合いがいる。そっちを応援するから」


 顔を真顔に戻しそう言うと、諸星は首を傾げる。


「え?誰だよ。俺前半から見てたから名前と顔分かるぜ」


 諸星は女子チームに牧の知り合いがいることに少し驚きつつ尋ねた。


「兵藤玲奈って子だよ」
 
「あぁ、兵藤兄弟の妹だろ?でも足を怪我してるとかで、前半は出てないぜ。ずっとベンチだった」


 牧は驚いた。開会式後に会った様子を思いだしても、玲奈が怪我をしてるなんて思わなかった。


 そして玲奈が決勝戦という舞台で出ない訳がない、とも思った。怪我の状態は分からないが、後半は絶対コートに立つ、と牧は妙な確信を持っていた。 






 ※バスケのルールは原作時に合わせてます。




2011.10.12



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