2013 Christmas(神)


 クリスマスなんか待ってない。
 だってあなたにとってクリスマスなんてあって無いようなものじゃない。




「……絶対協会は高校生に嫌がらせしてるでしょ」


 私は宗ちゃんの部屋で1枚の紙とにらめっこしている。高校バスケ選抜優勝大会の日程を見て私は恨み節だ。高校生の恋路を邪魔してるようにしか思えない。なんでクリスマスを挟んで試合なんだ。冬休みだぞ。学生は休みだぞ。


「……バスケはまだいいんじゃない。サッカーやラグビーなんて年越しなんて無いよ」


 軽く溜息をつきながら彼は言葉を返す。


「で、も!選手が恋人の人はたまったもんじゃないよ!年越しデートもいいかもしれないけど、クリスマスなんて恋人達の一大イベントじゃん!街を歩けばカップルだらけ、店の中もカップルだらけ、その中をひとり寂しく歩く私……ああああ私クリスマスの日何するの!?何したらいいの!?」

「試合見に来ればいいじゃない。来てくれたら俺も嬉しいし」

「……もちろん行くけど!!選抜は席取るのも結構大変なんだからね!?宗ちゃんは選手だからコートで駆け回ってて関係ないかもしれないけど!普通のカップルは2人でくっつきあってラブラブしてるクリスマスを、何が悲しくて客席から遠く見つめなきゃならないの……」


 だんだん言ってて悲しくなってきた。いや、好きな人が好きなバスケでプレイしている姿を見るのはいい。もちろん見たい。彼氏のキラキラ輝いてる姿なんて見たいに決まってる。でも、人の温もりが恋しい寒い冬に、1人で観戦て……。ジレンマが私を襲う。


「選抜終わったら2人だけのクリスマスしようよ」

「クリスマスはキリストの誕生日ー!他の日じゃ意味無いのー!しかも選抜終わったらすぐ新年おめでとうじゃん!」


 「2人だけの」に心がグラつきかけたけど、私はどうしても文句を抑えることが出来ない。ちらっと宗ちゃんを見ると、パラパラとバスケ雑誌をめくっている。怒ってはいない。平然としてる宗ちゃんを見てると、私も少しずつ冷静になってくる。




 ……言いながらも分かってるんだ。こんな事言ったってどうしようもない事を。何の意味もない事も。宗ちゃんは全く悪くないんだって事も。

 私がそう思ってることを、宗ちゃんが分かってくれてるって事も。


 さんざん愚痴言ってごめん、の代わりに私は宗ちゃんの手をぎゅっと握った。
 すると宗ちゃんは私に微笑んでくれた。とても、優しく。


 そうなんだよ、結局。
 選抜の予定ひとつで私が宗ちゃんを嫌いになるなんて100%無いんだ。
 クリスマスひとつで私が宗ちゃんを諦めるなんてある訳ない。
 だって好きなんだから。


 私が顔を赤くして俯くと、宗ちゃんが耳元で囁いた。


「好きだよ」


 これなんだよ、結局。
 12月24日やら25日なんか私とあなたにとっては関係ない。
 お互いが大好きだと認識するための、只の通過点の一行事に過ぎないんだから。





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