午後18時57分、警察庁にて
「降谷さん」
「風見か。わざわざ警察庁まで来てもらって悪いな」
「いえ、ここくらいしか降谷さんと堂々と話せる場所なんてありませんからね。報告書と調査書をお持ちしました」
「ああ…。ところで名前はどうした?二人で来るように言っていたはずだが」
「それが…」
「どうした風見。理由があるのならはっきり言え」
「は、はい…。実は苗字は腹が痛いと言って登庁するなりトイレへ駆け込みました。どうやら昨日机に入れっぱなしだった賞味期限切れのおにぎりを食べた事による食あたりかと思われます」
「はぁー…どれだけズボラなんだあいつは…後で説教だな」
「降谷さんも苦労しますね…」
「まったくだ。あいつは昔っから大雑把で向こう知らずなやつだったからな…。その癖やたらと勘が良くて仲間内でもあいつに隠し事をするのは至難の業だった。それなのに恋愛事には鈍いんだから本当に面倒な奴だよ」
「ああ…これまで降谷さんの好意にも全く気付いてませんでしたからね…。正直降谷さんが苗字に告白された時は驚きもありましたがホッとした気分でしたよ」
「あんなにすんなり上手く行くならもっと早くに言っておくべきだったよなぁ…。まぁあのタイミングだからこその功績とも言えるわけだが」
「本人はいまいち付き合っている自覚はないようですが…」
「だろうな。まぁじっくり時間をかければいいさ」
「いくら相手が苗字でも降谷さんが本気を出せば楽勝なのでは?」
「それがそうでもないんだよな…」
「っは〜すっきりした…やっぱ賞味期限が一か月も過ぎたおにぎりはまずかったか…しかも生タラコだったし…」
「お前なぁ…せめて冷蔵庫に入れておこうとか考えなかったのか?」
「あ、降谷だ。給湯室の冷蔵庫に入れとくと誰かに勝手に食べられちゃうからね。この間も私のデパ地下プリンを郷田さんが勝手に食べて危うく乱闘騒ぎだよ。窃盗容疑で逮捕してやろうかと思ったわ」
「公安部内で逮捕者を出させるなよ。プリンくらい僕がいくらでも作ってやる」
「マジで!?えっほんとにいいの!?私焼きカスタードプリンが好き〜!!」
「じゃあ次の休みにな」
「やった〜!!降谷最高!天才!よっイケメンゴリラ!」
「は?誰がゴリラだって?」
「いぎゃいれひゅりゅやひゃん」
「ホォー…いつもは立場上上司の俺への態度を改めないくせにこんな時だけ敬語を使うのかお前は。躾がなってないな」
「あ、あの降谷さん…」
「ん?ああ、悪い。用はすんだから二人とも職務に戻ってくれ」
「えっもしかして今日の呼び出しって書類渡すだけ?私が一緒にきた必要なくね?」
「まぁそうなんだが…お前の顔を見たくて呼び出してしまった…、って言ったら怒るか?」
「(ウワァアー!!!イケメンにのみ許される台詞…!!)
「え、なにそれどうしたの降谷…なんか悪い物でも食べた?」
「…それはお前だろう」
「(苗字お前ーーーっ!!!このフラグクラッシャー!!)」
「なんか顔色悪いみたいだしちゃんと寝てんの?髪もここんとこ跳ねてるよ」
「え…どこだ?さっきまで仮眠してたから乱れたんだろうな…」
「ここここ。ほらちょっとじっとしてて」
「え…」
「(あっ…)」
「んー…よしっと。うん、いつも通りかっこいいね」
「………」
「……」
「今ので分かっただろ風見」
「ええ…降谷さんも苦労しますね…」
「もう慣れっこだがな」
「苗字…お前と言う奴は」
「え、なに二人で悶えてんのこわ…」
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