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「本田先生〜。私です、名前でーす」

「おや名前さん。いらっしゃい。今日も寒いですねぇ」

「先生の家が引きこもりっぱなしで雪に埋もれてないか見に来たんですけど大丈夫みたいですね」

「昨日ルートヴィッヒさんとフェリシアーノ君が手伝ってくれたところなんですよ。危うく雪解けまで家に閉じ込められているところでした…」

「ほんと雪かきくらいしないと死にますよ先生…」


小ぢんまりとしつつも趣のある佇まいのお宅の前にかき出された雪の山。
ルッツ君とフェリ君大変だっただろうなぁ…。ほんと本田先生引き篭もると長いから。
家の前で体についた雪を払い台所へ向かう。本田先生とは勝手知る仲なので特に気を使うこともない。


「うわ〜…冷蔵庫ろくなもん入ってねえ…」

「名前さん、爺はお腹がすいて死にそうなんです…早く何か食べ物を…」

「私が来るまでピンピンしてたくせに何言ってんだ爺。えーっと、お米は…あるな。あとは塩ジャケかぁ…」


ほんと好きだな塩ジャケ。我が家の住人達も鮭、すなわちサーモンが大好物であるが本田先生もなかなか負けてないぞ。
とりあえずあるだけの鮭を冷蔵庫から取り出し調理をすべく手を洗う。
そうしているとなにやら玄関先でガタガタとドアが揺れる激しい音が聞こえてきた。
風…にしてはやけに激しすぎないか。


「風ではなさそうですね…。どなたか来られたんでしょうか」

「見てきてくださいよ先生」

「爺を顎で使わないでください。締め切り明けで疲れてるんですよ」

「善意で一人身の爺の面倒見てやってんの誰だと思ってんすか」

「お小遣いあげてるでしょうが。貴方が行ってきなさい名前さん」

「ちぇー」


めんどくさいな〜とのろのろと玄関に向かえば玄関の引き戸のスリガラスの向こうに大きな影が見える。
そして「おい!!ここに居るのは分かってるんだぞ!!」だとか「君は完全に包囲されている!!」と騒がしい声まで聞こえてきた。
って、このやかましい声はまさか…!!


「ストップストップ!!ストーーップ!!アル君!!」

「Go to it!!!」

「あああああ玄関がぁあああ!!」

「やっと見つけたよ名前!!もう逃がさないぞ!!」


がっしゃーんと引き戸が外れドヤ顔のアルフレッド君が現われる。
っておいおいおい!!なに人様の家の玄関壊しちゃってんのこの子!!


「あちこち探し回ってへとへとだよ〜!!何でこんな所に居るんだい君は!!」

「はぁ!?どうしたのアルフレッド君、私に用があったの!?」

「どうしたんですか名前さん…それにさっきの騒がしい音は…ああああああ玄関がぁあああああ!!!」

「やあ菊!!久しぶりじゃないか!!冬眠してるとばかり思ってたよ!!」

「アルフレッド君!!私の家の戸を壊さないでくださいと何度言えば…!!」

「だってこれどうやって開くか分からないんだよ〜。普通ドアといえば押すか引くかだろう!?」

「っていうか私に用ってどうかしたの?またアーサー君と喧嘩したの?」

「違うよ!!さっきアーサーから聞いたぞ!!この間シチューをくれたそうじゃないか!!俺の分だけないなんてどういう事なんだい!?」

「あー、ごめんごめん。だってアルフレッド君沢山食べるしアーサー君も今日はあいつの帰りが遅いから大丈夫だって言うもんだから」

「君のシチューがあるって知ってたなら俺だって寄り道なんてしないで真っ直ぐ帰ってたさ!!アーサーとマシューとクマ次郎だけなんてずるいんだぞ!!」


ぷりぷりと頬を膨らませるアルフレッド君は随分不機嫌なご様子だ。
いつまでも玄関で話すのも寒いのでアルフレッド君と本田先生を炬燵のある居間に押し込んで台所に戻った。


「さてと…まず塩鮭を塩水に浸して塩を抜いてっと…おっと、鰹節と白ゴマははっと…うん、あるある」


白ご飯に醤油と白ゴマを混ぜ込んでおにぎりにしてトースターで焦げ目を作る。
アルフレッド君の分は特別大きくしてやろう。
どんぶりにおにぎりを入れて焼いた塩鮭を解して乗せて白ゴマを振りかけてっと。三つ葉があれば良いんだけな〜。まぁないものはしょうがないか。


「できましたよ〜!」

「OH!!何か作ってきてくれたのかい!?お腹ペコペコだぞ!!」

「ちょっとアルフレッドさん!!ゲームを途中で放り出さないでくださいよ!!ああせっかくドラゴン倒せるとこだったのに!!」

「本田先生もゲームは置いてこっち来てくださいよー」

「名前、これなんなんだい?オニギリ?」

「焼きおにぎり茶漬けだよ〜ん。ここにちょっと出汁の入ったお湯を掛けて…よし出来上がり!!解しながら食べてね!」

「おおお!エキサイティングじゃないか!!いっただきまーす!!」

「良い匂いがしますね。では私も…こ、これは…!!」

「んぐっ、FOOOOOO!!なんだいこれすっごく美味しいじゃないか!!」

「焼きおにぎりの香ばしさがなんとも…流石名前さん、私が育てただけはあります」

「育てられた覚えないですから。じゃあ私もいただきまーす。ズズッ…っあ〜〜!美味しい!」


出汁と醤油がよく利いてる!簡単だし良いよね〜これ。今度家でも夜食に作ってみよう。


「やっぱり君の作るご飯は最高だな!これでシチューの件はチャラにしてあげるよ!」

「うわ〜上から目線…。そういえばマシュー君の体調はその後どう?」

「ああ、あれはアーサーの料理のせいだからね。数日寝たら治ってたさ」

「やっぱりか!アーサー君のあの料理音痴は一生治らないだろうね〜」

「期待するだけ無駄さ!君が毎日俺の為にご飯を作ってくれれば良いのになぁ〜」

「アルフレッドさん、爺の前で名前さんを口説くとは良い度胸をしていますね。もう漫画貸してあげませんよ」

「NO!!酷いぞ菊!!いいじゃないか名前は彼氏も居ないんだし!!このままじゃあっというまにオバサンになっちゃうんだぞ!!」

「うわ〜今の言葉はお姉さんの胸に刺さった。この後片付けは全部アルフレッド君がやってね」

「玄関のドアの修理もお願いしますよ」

「OH MY GOOOOOOOD!!!!」




2014.8.18
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