4月×日
2年生に進級しました。平和島静雄という怖い不良さんと同じクラスでした。




足に力を込め、自転車を漕いだ。風が颯颯し、爽やかな朝の風を全身に受けとても気分がいい。今日は来神学園の始業式だ。新しい環境に胸を踊らせ、時間に余裕を持って登校していた。制服は自由だが、ほとんどの生徒が基準服を着ている。そんななか私は基準服にネクタイという来神学園の女子にしては少し変わった服装だった。まあ入学時からこの格好のため私には違和感はないし、この格好を更々変える気はないが。家から20分程自転車を走らせると学校がみえてくる。そして校門から入り、自転車置き場に自転車を止め、きちんと鍵をかけた。学校指定の鞄を持って貼り出されている自分のクラスを見に行き確認する。仲がいい友達のクラスも確認して、同じクラスではないことを知り少し気分が落ち込んだ。ついでとばかりに男子の方を見た。見ないほうが良かった。いや、まあどっちにしろ教室に入ればわかることだったのだが。私の視線の先には来神学園の中でも不良として有名な問題児、平和島静雄の名前があった。だがしかし同じクラスだからといって自分から話し掛けに行かないかぎりはそうそう関わることもないだろうと大して気にも留めず私は新しい教室に行こうと足を進めた。


ガラッと教室のドアを開け、軽く視線を巡らせる。教室内はざわついていて、もういくつかのグループに別れていた。その中に見知った顔がちらほら見えて少し安心し、そのまま黒板の方へ顔を向け自分の席を確認して席についた。やはりと言うべきか何と言うべきか平和島静雄の姿は見当たらない。そのことに内心安堵していると学校の始まりを告げるチャイムが鳴り響き、教室内が静まり返った。直後、まだ若い男の先生が入ってきてざっと生徒の顔を確認するように見渡した後、ありきたりな自己紹介を始めた。つまらない、実につまらない。そのつまらなすぎる話を聞き流しながらぼんやりと窓の外を眺めた。あ、平和島静雄だ。何やら沢山の不良と対峙している。喧嘩のようだ。ぼーっと眺めていると彼はおもむろに持っていた標識を振り回し、不良を吹っ飛ばした。すごい、すごい!圧倒的だ。次々と向かってくる不良を純粋な力だけでどんどん倒していく。なんて格好いい喧嘩をするんだろう!喧嘩に格好いいも何もあったもんじゃないけど本当に綺麗で、格好いい。ついつい見とれてしまっていた。最後の一人を倒したらしい彼は軽く息を吐いて顔をあげる。――かちりと目が合った、気がした。


がやがやと、何やら教室が騒がしい。なんだなんだと思いつつ、視線を前へ向けると黒板に何か書いてあった。四角が並んでいる。なんだこれは?よくよく見ると上の方に"席替え"の文字。なるほど、そういうことか。担任の「出席番号順にくじ、引きに来いよー」という声を引き金に生徒たちがどんどん席を立っていく。どこかに向かってお祈りしてる人や、くじの箱の中をしきりに掻き回してる人。実に様々な人がいる。私は適当に1番最初に手に触った紙を摘んで中を見た。廊下側から二番目の一番後ろの席。やった!と一人内心喜んだのもつかの間。最後に残ったらしいくじを見て落胆した。今、教室に来ていないのは平和島静雄だけ。そして最後に残ったくじは廊下側の一番後ろの席、つまり私の隣だ。ということは私の隣イコール平和島静雄?何ということでしょう!外国人的に表すならオーマイガッ!若しくはマンマミーヤ?そんなことはどうでもいい。私が何を言いたいかというとあれだ。もし平和島静雄が教室に来た日には私、終わるね!




早速席替えをしました。
そしてなんと私は、その平和島静雄の隣の席になりました。



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