静雄の従姉妹 10歳




ピンポーン


インターホンの音で目が覚める。仕事疲れで重い体を引きずるようなゆっくりとした足取りで玄関へ向かう。


ピンポーン


そんな俺を急かすようにまたインターホンがなった。――ったく、誰だよこんな朝っぱらから……。ぶつぶつと一人ごちて、玄関のドアに手を掛けドアを開けた。瞬間、お腹の辺りに軽く衝撃が走る。予想外なことだったため軽くよろけてしまった。誰だよ俺にこんなことしやがる命知らずはよお?しかも仕事で疲れてるのに無理矢理起こしやがって………

「………ん?お前莉央か?」

そのイライラの原因をみたらそんな考えは一気に吹っ飛んだ。俺の腹に頭を押し付けていたのは従姉妹で、俺のこの力を恐れることなく話し相手になってくれるやつの一人だ、――っても5年くらい会ってなかったが。

「久しぶりだな、一人でどうしたんだ?」
「…………」

問いかけたが俺の服をぎゅ、と掴んだだけで一向に口を開かない。
(本当にどうしたんだ?)
痺れを切らして引きはがそうと肩に手を置くと微かに震えているのがわかる。笑っているのかと思ったが耳を澄ますと嗚咽を押し殺したような声がした。――泣いている。が、その理由がわからず俺は困惑した。莉央の家はごく普通の家庭だし、莉央自身も明るくて人に好かれるような性格をしている。友達も多かったため、いじめを受けるようなやつではなかったはずだ。一人頭の中で悶々と考える。考えれば考えるほど訳がわからなくなってきた。とりあえず莉央を落ち着かせようと、手ぶらだった手を背中に置き優しく撫でてやる。しばらくそうしていると落ち着いたのか、莉央はゆるゆると緩慢な動きで顔を上げた。記憶の中より大分大人びた顔の莉央と目が合う。涙でぐちゃぐちゃな顔を服の袖で少し乱暴にごしごしと拭いてやると困ったような、しかし嬉しそうな顔で微笑んだ。

「しずちゃん変わってないね」
「おう、お前はおっきくなったな」
「5年振りくらいだからねー」
「で、どうしたんだいきなり?」

眉がどんどん下がって悲しそうな顔になる。そして持っていたナナメ掛けのバックに手を入れ、白い封筒を引っ張り出し、そしてそれを無言で俺に差し出す。その封筒を手に取り乱暴に破って中身を取り出し、羅列された文字に目を通した。静雄くんへ、から始まる文章の内容は、離婚したからどちらかが引き取れる環境になるまでお金は毎月振り込むから莉央を預かってて欲しいとのことだった。

「お家に帰ったら誰もいなくて、ここに行きなさいって静雄くんの住所が書いてある紙とそのお手紙だけしかなかったの」
「お前どうやってここまで来たんだ?」
「住所書いてある紙持ってうろうろしてたら親切なお兄さんが連れて来てくれたの!」
「そうやって誰にでも簡単について行くなよ」
「でも優しかったよ?飴も貰ったの!」

かなり嬉しそうに言うからそれ以上何も言えず、とりあえずこれから先に起こるであろう出来事を想像して深いため息を吐いた。



 
しずちゃんと

     ずーっと一緒!


(とりあえず可愛くなりすぎだろ!)

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テーマ「人外ファンタジー」
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