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俺はイライラしていた。その辺のチンピラに対してではなく、ノミ蟲野郎に対してでもない。自分自身に、だ。
俺には高校生の頃付き合ってた彼女がいた。好きだった、依存していた。彼女も俺を慕ってくれていた、はずだった。なのに高校を卒業した次の日、いきなり音信不通になり家に行っても誰もおらず、部屋の中はからっぽだった。携帯に電話をかけても繋がらず、俺はしばらく放心状態になった。数日後、なんとか己を取り戻し死ぬほど嫌だったが臨也の家に行き、彼女の行方を聞いた。臨也は一言知らない、と言った。

だが俺は待ち続けた。誰がどれだけ俺を女々しいと言おうと、彼女が理由もなく俺から離れるわけがないという確信があったから。


それから3年が経った。俺はトムさんと共に仕事をしている。いつもと変わらない池袋の街並み。そこに、いた。見間違えるわけがない。3年前よりも大人びているが変わらないその姿。俺は――駆け出した。

「っおい!静雄!?」

トムさんの静止の声を振り切って彼女へ向かって一直線に走る走る。彼女に届くまであと50m、40m、30m、20m、10m――――あと…………。

「っ莉央!」

腕を掴み振り向かせる。3年振りに見た表情は驚愕と、それから悲しみが入り混じっていた。とりあえず俺は掴んだ腕を引っ張り、人通りの少ないところへ連れていった。莉央の顔をまともに見れず、前だけ向いてどんどん歩き、着いたところでやっとまともに莉央の顔を見ると、頬に涙が伝っていた。俺が何か言おうと口を開いた瞬間、被せるように彼女の口が謝罪の言葉を紡いだ。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!親に無理矢理連れ戻されて携帯も解約されちゃって…………!っ何も言わずにいなくなっちゃってっ、ごめん…………っ」

ぼろぼろと大粒の涙を零しながらそれを拭おうともせず彼女は言葉を紡ぐ。俺は彼女の話が終わるまで黙って聞いていた。

「でも親も亡くなってっ、どうしようもなくて、あなたを傷付けたことだけがすごく心残りで…………だけどあなたを傷付けてしまったから私はあなたに会う資格がないの…………!」

話終わった彼女の背中にそっと腕を回し頭を撫でた。彼女は抵抗したがそんな抵抗は俺の力の前じゃ無意味に等しかった。彼女を落ち着かせるためにそっと言葉をかけた。

「大丈夫だ、大丈夫。少しも傷付いていないっつったら嘘だが俺はこの3年間ずっと莉央を待ってたんだ。だって、」



お前の居場所は

      ここだろう?





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企画サイト「鴉の羽」に提出させていただきました
素敵なお題ありがとうございました!
楽しかったです^^

(100602)
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