夢小説 | ナノ

Trojandeath



▼ チョコラータ夢「イモムシ」

うちにはイモムシが一匹いる。
とても醜くじゃまくさい、何度いなくなれと思ったことだろう。

彼はジョルノに制裁を受けなんとか生き延びたのだが、四肢は壊死し切り取られ、包帯まみれでベッドに置かれた様はまるでダルマ、巨大な芋虫であった。
しばらくずっと昏睡状態とか医者が言っていて寝たきりだったが、近頃はこんなナリでも回復してきたのか、だんだん意識のある時間が増えてきた。

以前は遠目からでも判るほど自信タップリでヅカヅカ歩き、どんな悪事だってやれないことは一つも無いと思わせた。だからこんな自己中ヤロウと一緒に居たのだ。
して良いことは自分のしたいこと全て、何もかも許される自分が絶対に正しく他人は一切鑑みられない。他者は愚鈍なカスで自分だけが正しいと信じ切っているクソな思考がとても気に入ったから、キレられても頭をグリグリ小突かれても持ち物を勝手に捨てられてもシャワー中勝手に入ってこられても寝てたのにビデオ鑑賞に付き合わされても通帳を勝手に見られても着るフクを指図されても罵られても、全部我慢した。
そうしたいくらい他の誰にもないパワーがあったから。私は彼みたくなりたかった。

今のイモムシ野郎は喋るのもおぼつかず、言葉も余り出て来ない。
世話はよく分からないしやりたいとも思えず、結構サポートの人に任せているが様子を見に行ったりはする。私に見覚えはあるのか、他の人より反応するようだ。
あるとき傍の椅子に腰掛け近況を聞いたり話したりしていたとき、こちらを見、彼が微笑んだ。そんなのは以前は少しもしない表情で、正直キモチ悪かったが流石に重病人にそんなことは言えず、ただ
「ご機嫌だね」
と言った。

その時殺してしまえば良かった。
「〜〜…」
最初は別の言語か喃語でも言ってんのかと思い聞き取れなかったが、数回繰り返されるうち普通に日常単語と分かった。
『好き』彼は私にそう言っていたのだった。
会話が途切れることをどっかで「天使が通る」とかトンチキな言い回しをするそうだが、肉体的にもそんな感じになった。
ビデオのテープを途中でチョン切ってしまい先が再生されなくなったような、レコードがここまでしか刻まれておらず音が突然途切れたような、ヘタクソな歌手みたく喚く鶏の首を落としたような。
突然古いWindowsよろしくフリーズした私を見たまま彼はニコニコして、今まで見たことない満たされた、幼児が親愛する人に向ける視線をしている。
気絶出来るもんなら今スグしたい、吐けるモンなら吐いてしまいたい、いつもみたく病室が平面に遠くなり、彼も人形のようにしか見えない。
私は黙って立ち去った。彼は貼り付いたヘラヘラ顔のままだった。

次会ったとき、
「ねえ良くなったらまた人、殺したいよね?」
と聞いてみた。
そしたら少し黙ってから首を振った。「これからは私とのんびり生活したい」と。
ああ…………。

こいつはもうチョコラータじゃない。


その日のうちに彼の預金を引き出しありったけ灯油を買ってきて、悶える彼にブチ撒けてBBQにした。
彼はジョルノに負けたあの日に死んだんだな、と思った。








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