夢小説 | ナノ

Trojandeath



▼ テレンス(とダニエル?)夢「全知全能の夢」

「皿洗いが終わったら次は拭き掃除ですからね!ホラ早く!!」
執事であるテレンスは屋敷の仕事を取り仕切っており、夢主にも厳しく指導していた。
「ハィイッ汗」
夢主はどんくさいながらも必死に彼の要求に応えるためというか怒られないため、洗車機のようになって皿を清めていった。

キッチンから場所を移し広間。
何本もの柱が立ち並ぶ立派な作りだ。何に使うかはよく分からないが……。
とにかく上から下へ、脚立に上りながらホコリを落としていく。
毎日拭いてるのになぜこんなにも積もるのか。もはや宇宙人の卵とか洗脳粉とかで人類を侵そうとしているのでは?と思わせる量の埃が何故か日々出るので、夢主は休まず掃除に追われていた。
大体こんなもんかと段差に腰掛け、休憩しているとまたテレンスがやって来る。く〜る〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!(zkymさん)
見ていると、彼は調度品が幾つも置かれ拭きづらい、これまた派手な装飾を施されたアールヌヴォーな棚に近付き、指を滑らせた。
ツツーー〜〜…フッ。
「……まだホコリありますよ」
「えーーー〜ん!!!姑がいるぅうう!!!!!!泣」
毎度のようにモメているとダニエルが近くにいたようで仲裁しに来た。
「コラっテレンスまた虐めてるのか、だめだぞ優しくしないと。」
「……黙って帰ったらどうです?ここの管理は私が任されています。」
「また何かあったら私に言いなさいね、反省させるから」
ダニエルは夢主の方を向き弟に背を向け、聞いてない様子。
「ぁっありがとうございますう」
「オイコラ聞けよ兄!!!!!!」
テレンスは青筋を立て怒っていた。

〜〜〜

溢れる弾んだ声。何人もが楽しそうに笑っている。
夢主を含め数人でTVを観ているのだった。
そこへ執事が通り掛かり、一度通り過ぎまた戻って来る。
「ちょっと夢主!なにダラけてるんですか。ヒマなら仕事手伝いなさい」
夢主のトレーナーの襟を鷲掴み引っ張っていこうとする。
「うわーん!」
夢主はなんとか逃げ出し、丁度居たダニエルが受け止めた。
「はは、またやってるのか。飽きないなあ。テレンス、乱暴はよくないぞ」
「アナタに関係ないですよ」
拗ねたように軽く俯く執事は、いつもより普通の男の子っぽい顔に見えた。

〜〜〜

「ホーントどんくさいですね!アナタは!!身体中痣作るのがシュミなんですか?笑」
バスルーム洗浄を言い付けられ、ズボンを膝まで捲り作業していたところ、そうテレンスに煽られた。
「違うぅー〜〜……泣」
「あっダニエルさん!テレンスが………」
「……なんだまたイジメてるのか?まったく少しは懲りたらどうなんだ大人になりなさい」
「三十路のオッサンは黙ってなさい」
「31はまだ若いぞ!!!」

〜〜〜

幻覚を使わずとも長い石造りの廊下。二人分の靴音が響く。
(自称?)天才ゲーマーとギャンブル狂いは一度視線を合わせ、弟はそのまま歩いて行こうとする。

「フフッ」
「………。なんですか。キモイですよ」
ダニエルのこうした嘲るような笑いは、子供の頃から嫌だった。自分が軽く見られているのが伝わるから。
「いやね……お前もしかしてあの子に気があるのかな?やたら突っかかって………天邪鬼ってヤツかい?まーだガキだねえフフッ」
「………。」
ズカズカズカと兄とのキョリを詰める。
「私にケンカで一度も勝ったことない人は黙ってたらどうです!30にもなっていつまでもブラブラしてるアナタには何も言われたくない!
………ぁあ……もしかして。『アナタが』あのムスメを気に入ってるんですか?あんな取り柄のないパッとしない女」
「……そんなことある訳無いだろう、同じボスに使えてるから優しくしてやってるだけさ。私はもっと顔の良い人が好みでね」
「そうですよねえ。あぁ………夢主も言ってましたよ。『中年のおっさんがやたら構ってきて気持ち悪い』ってね。」
「……あの子がそんなこという訳ないだろう。」
「忘れました?私はウソを吐きません。アナタと違ってね」
「………………。」

まさかあの子がそんなこと言うとは思えないからどうせテレンスのハッタリだろう。
爪を噛みながら廊下を曲がるとそばの部屋から何やら声がする。思わず立ち止まり耳を立てた。

「なあダニエルって夢主にやたら構うよなあ。好きなんじゃねーの?笑」
「まーじかよ趣味わりい笑 おれならもっと美人がいいね!」
「アレ?でもおれダニエルとあいつ付き合ってるって聞いたぜ」
「まじ!???やっべーじゃんwウケんべ」
「なんか夢主がそー言ってたってさ」
「えーダービー兄ぜってえメンクイだと思ってた意外だぜ」

その場をすぐさま早足で離れた。
あの女………ちょっと優しくしたらカン違いしたのかブスのくせに。調子に乗りがって!
今度シメてやろう。

〜〜〜

ダニエルが眉間に皺を作りつつ凝った紋様の編み込まれた絨毯を進むと、テレンスに小突きまわされてる夢主がいた。

「あっダニエルさ……」
?
いつもと感じが違う。立ち止まったまま、こちらへ近寄ろうとしない。
暫く黙って私達を見ていたが、やっと耐えかねたように深い息を吐く。
「………あのなあ。いつも私を頼ってないで偶には自分で言い返すなりしたらどうなんだ?まったく………!」
夢主は目を大きく真ん丸にする。
「えっ………あの」
突然のことに虚を突かれていると、なおもまくしたてる。
「やさしくしてカン違いさせた私にも責任はあると思うが勝手な噂を流さないでくれたまえ!迷惑だ」
「何が………えっ……?何?なんのことで…」
「しらばっくれるなよ!………っもういい」
そう言いたい分吐き出しきってしまうとこちらへ背を向けサッサと歩き出してしまう。
「えっ待って!ほんとに知らない………っ!」
追い掛けようとするが、テレンスにまだ掴まれており叶わなかった。

妙に上機嫌な様子でテレンスは夢主に問う。
「あー〜〜あ………嫌われちゃいましたねえ。何したんですか?笑」
「………………………。」
それには答えず、夢主は黙って自室へ引き返した。

〜〜〜

「夢主!いつも働きっぱなしでしょう。たまには一緒にゲームしてあげても……」
本日の仕事を終えた夢主に執事が声を掛ける。しかし、彼女はそのまま歩いてってしまい、提案は無に掛けられた。
「ーーー〜〜〜〜〜っっッ………クゥウ………ッッ」
彼だけの空間に歯軋りが響いた。

〜〜〜

あの日から、夢主はだんだんと自室に留まることが多くなり、今ではトイレ以外殆ど一歩も出ない。流石に水は飲んでいるようだが。
「ほら食事持ってきてあげましたよ。開けなさい」
執事はドア越しに声を掛ける。
あれから何度も食事やゲームなどに誘ってもDead fish eyes★のままの夢主を見かねて、執事はこうして毎日何かと世話を焼こうとするが、彼女がそれを受け取らない限り一方通行でしか無い。
今も、返事はないただのしかばねの…略!だった。

「いつまで引きこもるつもりですか!さっさと出てきて手伝いなさい!食事もろくに摂ってないでしょう」
ドンドンと力任せに木製のドアを叩きつけつつ押してダメなら更に押せてな感じで畳み掛ける。
「……いらない帰って」
「………。ダニエルに嫌われたのがそんなに…堪えるんですか?アナタは」
廊下に置かれた時計の音だけ聞こえる。
「………ちがうからあ!!!!!!!!!!!!!!!!!!帰れえ!!!!!!かえってよォ」
何かが破裂したようなとんでもない音がドア付近でした。
なんか家具とか部屋に雑多に積まれたモノ(コイツは片付けが全然出来ない)でも投げ付けたな………。と悟ったテレンスは、ここに置いときますからごはんくらいは摂ってくださいね!と言い残し仕方なく去った。

〜〜〜

やばい。
全然計画と違うぞ。おかしい。
天才のおれの予定が狂うなど……………。

テレンスはまた歯軋りしながら彼の巣と化しているゲーム部屋でうんうん唸っている。
ダニエルと夢主がやたら仲が良いようだからちょっと引っ掻いてやろうと、『夢主がダニエルと付き合ってると言っていた』というウワサを数人、口の軽そうな……鋼がどうとか節制がナントカ言ったか?大したことない奴は覚える意味も無いから知らないが、とにかくそこら辺のウマノホネのよーなのにバラ撒いてやった。
別にこれは嘘って訳じゃない。多分夢主だって兄のことを憎からず思ってるだろうし。

そしたらおれの考え通り上手いこと兄の耳に入ったようで、そしてやっぱりキレてくれた。
あいつは、兄は「人をだます」のが本質のギャンブルを生き甲斐にしてるせいか、見た目をとても気にする。
第一印象で油断させることも、言葉尻や顔のシワひとつでフェイクを掛けるのも声色も、全てを他人を欺くことに費やす兄には、そして安っぽいスリルに耽溺するギャンブラーは、いつだって若くて美しい女ばかり追いかけてた。
だから絶対夢主を好きになんか『なる訳がない』。
それなのにやたら構うから邪魔くさくて、うざったい。
あとは思った通りに進むはずで、ゲームのシナリオとおんなじ、おれの手のうちだと思ったのに。
あいつはなんなんだ?
折角おれが誘っても世話を焼いてやっても全然反応が無い。あいつそんなにあの兄のこと………。

クァアッと髪を掻き乱し、コントローラを乱暴に掴み、とにかくスイッチを入れ、画面にのめり込むことにした。

〜〜〜

最近夢主を見ないがどうしたのかと何人もから同じ質問をされるようになった。何故おれに聞くかというとこれまで一番一緒にいたからだろうな。
その都度、
「知りませんよ、そんなこと。私に聞かないでください。」
と撥ね付けた。それしかなかった。
ダニエルも気まずいのか、また何処かそこら辺でギャンブルをして回っているらしくここのところ見ていない。
私だって知らねーよバーカと内心腐っていた。
しかし急遽解決☆名探偵テレンスになるべき日がやって来る。
DIO様に告げられたのだ。
「おいテレンス……この館のことは全てお前に任せてあるから私は口を出さないが………。どうやら一人欠けているようだな?
何度もそのような話を耳にするのだ。私としては部下の一人くらい構わないが業務に差し障れば……わかっているな?」
あの方は別にびびらせようとか思ってなかったはずだが、その時はとても振り返るなど、そして二度と何かを発することも不可能なような気さえした。
誤解を解こうと決めた。(私が発端というのは隠して)

それに、近頃夢主の食べる量もより減っているようだし。頃合いかもしれない。

〜〜〜

「あ………いやなんだその……悪かったねカン違いしてたのは私の方だったようだ」
人の来ない裏庭に3人の人影。
夢主はでっど☆ふぃっしゅあいずでダニエルを一瞬見、また地面へ戻す。
「……別に………いいです全然私の方こそ………誤解が解けたなら。」
二人の呼吸音だけが響く。
「………それでは。サヨナラ」
随分やつれた夢主は踵を返し、一度も振り返らず向こうへ消えていった。
「あ……。」
そう言ったもののダニエルは追うこともできず、溜息を吐きばつが悪そうに生え際のあたりに手をやる。
「あーあ、嫌われちゃいましたねえ?クク」
この対面をセッティングし、一部始終を観察していたテレンスは口角が上がっている。
「………随分愉快そうだな。もしかしてお前が仕組んだんじゃないのか」
「まさか。アナタと違いますから私は。」

これで夢主も部屋から出るだろうし二人の確執も無くなったしDIO様からの命も守れるし、あいつの機嫌が良くなればちゃんと私の言うこと聞くかもしれないな、と久々に鼻歌混じりに過ごした。

〜〜〜

今回の件で、ダニエルが自分のことをどう見ていたか分かってしまった。
彼は単に憐れみとか普通に優しくしてただけで、私は割と好きだと思ってたけど。こんな人間好きになる訳好意を持つわけ無いのだよな何を浮かれてたのか恥を知った。自分がとても愚かに思える。
そして誤解でもあんな風な態度を取るんだ……と思い一気に冷めてしまった。
優しくて親切で大人で格好良いと思ってたけど、髭の生えた薄汚い歳のわりにヘラヘラしたただのジジイじゃねえか。

二度と近寄らない。

〜〜〜

「夢主!早くしなさい!もうどんくさいですね……」
以前のように反応がくると思い、チラリと窺うが夢主は手元を見たままだ。
「ごめんなさい。」
不明瞭な声。病気の魚のような濁った瞳に見える。
「………………。」
上手く言葉を継げず、そのまま自分も黙りこくってしまう。
兄ならこんなとき…と思わず考えてしまう自分が憎い。
「い……いいから続きをやりなさい。私は向こうを見てきます」
はい、と言ったか言わないかを聞かず私は逃げ出した。

夢主はダニエルに決して近寄らなくなった。兄が来るとさりげなく避け、自室へ戻ったり場所を移す。
兄もそれに気付いているようで、何でも無い風をしているが私には分かる。気まずさを纏っている。
二人が一切話さなくなってから、周囲もどうしたのかと時々疑問を抱いているらしいのが聞こえてきた。

やっと夜になりゲーム部屋兼自室へ引き返す。
なんだかいつもの数倍は疲れた気がする、何故だろう。
ゲームをして気分を変えようと思ったが、集中出来ずミスが目立つため、やめた。
こんな調子が悪いのは久々だ。
あの女のせいだ。おれの思い通りにならないから悪いんだ。
昔、兄とケンカしたとき、今みたく「おれの思い通りにならないのが悪い」と言ったら怒るどころか笑われ、「他人はお前のお人形じゃないんだぞ、テレンス」と物知り顔で言われた。
当時は意味がよくわからず取り敢えず殴りつけたが、今少しだけ理解出来そうな気がした。
少しだけ、気がしただけだが。


おれのしたことは一体何だったんだろう。そう考えながら眠りについても、別に悪夢は見なかった。



END




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