夢小説 | ナノ

Trojandeath



▼ アレッシー夢 買い物に行く 20.12.23


雑踏。白く直線な日射しが石畳を遠赤外線(?)風に温め、野良猫がエイリアンの卵のようにいくつも玉になり眠っている。

「ねえこっちも持って」
「えらくないねーもうちょい自分で持てょォ……」
黙って買い物袋を押し付けると、大人しく受け入れた。
夢主はアレッシーと、執事のテレンスに言い付けられ買い出しに来ていた。
太陽が照り照りに照り、二人とも額に水の玉ができては首筋へ流れ落ちるのをうっとうしく感じた。

「ちょっとこっち来ないでよ暑い!」
彼が日傘の影に入ろうと近付いてくるのを夢主は拒否った。
「ぇえ〜〜〜ずりぃ〜〜〜〜よォおめえばっか〜〜〜こんな荷物持たされておれってかわいそうだと思わんのかね」
「おっさんは丈夫」
「ぉっおっさんて………!!!!」
夢主は身体はメチャクチャ頑の丈だが、ヒフだけはそうじゃない。余り日射しが強かったり汗を掻きすぎると湿疹が出てしまうため、仕方なく黒い日傘を差していた。
「おれも入れろよ!なァー!!」
「あついからアッチ行ってえ!!」
通常運転でギャァギャア喚き散らし少し周囲の視線を集めつつ歩を進める。屋敷だとテレンス辺りにうるさいですよ!と叱られ、だってアレッシーが、いや夢主がと責任の押し付け合いをするのが常だった。


「ねェおねーさん!」
「ね!ねーってば」

それが自分に掛けられていると気付くのに少し時間を食った。
夢主は大抵意識がトンでること多かったし、また突然の声を聞き取るのも苦手で、苦労した。
そちらを見やると、知らん男性数人がこちらを向きなんだか分からんがニヤニヤしてひそひそ話している。
無視して通り過ぎようとすると、日傘の柄を掴まれた。
「ちょ待ってよーおれたちと友だちにならない?」
ならないと言われても。こんなブスを遊びに誘う馬鹿もいたもんだと周囲を見回すとアレッシーが居ない。
「アレッシー……」
鈴の音が小さくした方に目を凝らすと、長く横に伸びた髪が遠くの路地を慌てて曲がっていくのが見えた。相変わらず逃げ足だけは速いな。
なおも声を掛けてくるメンズ(Dead language!)を無視し暫くそちらを観察すると、チラチラこっそりこっちを窺っている。
どうせオトナ(と言っても彼より遥かにワカモノだが)が来たから咄嗟に逃げ出してしまったのだろう。
『あっ!!!!!』
私は空を指差し大声を出す。
『UFO!!!!!!!!!!!!!!!!』
彼らが思わず上を見た隙に(こんなんまさか引っかかんなよ)、アレッシーの方へ駆け出した。

「あービックリした!アハハ。」
荒く息を切らしながら彼の元へ駆け寄る。
「す すまねえ……」
アレッシーは俯いてしどろもどろっている。
「てゆーか逃げてんじゃねえよ」
「で でもよ……。
お前一人でべつにへーきだったろ?だからいーじゃねえか………なあ?」
そう言う彼の清廉さや信頼性のない感じの容姿、表情のつくりも普段は好きだったが、今は別人のように見える。
卑屈にこちらの機嫌を取ろうとする様子も、自分のつまらない、心底くだらない無きに等しいプライドを保とうとする姿勢も。

「もういい。」

「え?」
みっともなく口を開けた彼に、持っていた荷物を全て投げるように押し付け、来た道を倍速早回しで戻る。
「ちょ!オイっなんだょオこれ………っどうすんだよ〜〜〜っっっえらくねえーーーーー〜〜!!!!!!!!」
アタフタして曲芸師のようにいくつもの袋を滑稽なポーズで何とか抱えようとする彼は複雑骨折させた人形のようだった。

〜〜〜

「なっなぁ………わるかった………昼間…」
ミジンコの鳴くような声で(鳴くの?)何か聞こえると思えば役立たずのアレッシーくんだった。
ソファーで座ってたところに話し掛けてきた。
手には缶入りのクッキーをどうやら献上品として携え参上したようだ。
暫くシカト決めていたが怒りか焦りかなんかで震えつつ顔面を茹で甲殻類のように赤くするから仕方なく譲歩してあげた。
「フーーン……誰かに言われたんでしょ。」
彼の手元を見つつ、チラリと表情を見上げる。
図星です!みたいな顔をしてから、
「いっ!ィヤアぁ?べっつにだれにもなーんも聞いてねえけど?イヤちょっとアドバイスくらいはその$%〒々:」
モニャモニャ文章にしたら文字バケルみたくなりそうな言語音声になってきた。
缶を勝手に受け取り、真ん中に赤いジャムのくっ付いたクッキーを頂く。
「ん!オイシイわあ。不味いクッキーて無いのかもね」
続いて正面のソファーを指で促す。
彼は大人しく座り、ぎこちなくクッキーを手に取る。 ベージュとコーヒー色のゴッホが好みそうな渦巻き模様だ。
「……ンメェ。」

山羊かよ!とツッコミそうになったが彼は私のせいでそろそろ何かが限界そうだから黙る。
「ねェ、あとでゲームしようね」
「ええ?おれ全然勝てないからやりたくねェよ………」
私は別に執事みたくゲームにドハマりしてないし強くもないのにアレッシーが弱すぎて毎回勝ってる。
多分今日も全勝だろうとバタークッキーをむさぼりつつ予想した。



★END



prev / next

[ back to top ]



×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -