夢小説 | ナノ

Trojandeath



▼ ホルマジオ夢 『蜘蛛の糸』A


 彼が男性教師をボコってるのを見てから一週間が経った。
 この間、私はずっと教室などで昼食を摂っていた。あまりにも来ないとこっちに来られるかもと、チョイチョイ場所を変えつつ食べていた。
 LINEも送られてきた。「最近昼こねえけどどした?」というメッセージに、「ちょっと体調がよくなくて、でも大丈夫」という意味の通らない返信をした。でも彼は、「だいじょーぶかよ〜〜おだいじにな」といかにもいい人そうな気遣いをみせるだけだった。
 帰りも、出来るだけ誰よりも早く(ワリと元々そうだったけど、ますます)帰宅するようにし、彼に出会わないようにした。
 その甲斐あって、この一週間、彼と対面せず済んでいる。

〜〜〜

 夢主は頼りなかった。
というか、なんかフラついてて、死にそうな感じがした。

 朝の地下鉄のホームで、アクビしながらだるい学校に行く過程。ふと目の前を通り過ぎた女がいた。同じ制服だ。みたとこ、多分下の学年だろうな。おれは3年だし。雰囲気が変わっているから、気になって目で追っていた。
 実際話しかけてみたら、友達はいねえというし、どうやらクラスでの地位も全然よくねえみてえだし、虚ろな感じがして、その「死の近さ」みたいな、その感じに惹かれたのかもしれない。
 これまで会ってきた奴らとは違った。多分、それは「いい方に」じゃないのだが、なんつーか、ものめずらしさつーのかな、違和感、でもそれが気になって、もっと見たい知りたいと思っちまって、そんでいろいろ話しかけたりなんかした。

 打ち解けはじめると、案外愉快なヤツだった。
 大抵女子ってのは、化粧品とか、TVドラマとか、俳優とか、どの男子が好きとか、あの子がきらいとか、そういった話ばかりする。クラスメイトもそうだし、おれの姉貴(すげえ気が強い)もそうだから、みんなそんなんだと思ってた。
だけどアイツは、こないだカタツムリを見ただの、可愛い指輪のガチャガチャがあって一回200エンだから三回やったら全部ダブっただの、百均のシールを自慢してきたりガキくせえこと極まりなかった。もう身体は大人なのに。
 その不釣合いさがおれは愉快だったが、こんなんじゃまわりと馴染めねえだろうし、だから親しい奴もいなくていじめられてるんだろうな、と思った。

 あるとき、廊下を歩いてたら。でかい声でギャアギャアわめいてる男女数人1年ズがいて、おーおーうるせえなと思っていると、夢主の名を口にした。
「あんないじめるなんてヒドイじゃーんwかわいそうだよ〜〜ww」
「だって、アイツなんかいじめたくなんだよね!笑」
「ひっど〜い!」
 キャハハと、笑いながら通り過ぎていった。
 そっからそいつらのことを観察し始めた。割と仲が良いようで、固まって動いてることが多かった。そこが狙い目。
 女子2人、男子3人。帰宅時は、男子女子で別れたり、また他のクラスのやつとかと帰ったりもする。アイツとは正反対だな、と苦笑いしつつ、尾行を続ける。
 こーゆーことしてる間はアイツに構ってやれなくて、寂しいぜ。でもきっといい結果をもたらすからな。
 女子のうちデブなほうは駅前のマックでバイトをしてる、週4回。学校に届けは出してないな。チビなほうは、とくに何もしてないが、「ダンス部」に入って、時々活動してるみてえだ。けどそんな真剣にやってるワケじゃない。目立つタイプだな、顔も化粧も派手、身なりに気を使ってるギャル系。二人とも友人は多い。クラスの「上の方」だな。発言力のある階層。
 男子は、髪がフワフワした感じのヤツと、背が低めの童顔ぽい男。それに、長身のメガネ。髪フワフワは陸上。結構いじられキャラ。週2で飲食でのバイト。弟がふたりいるのか。両親は共働き。童顔はそこそこ頭が良いらしい。卓球部で活躍している。こいつは片親。女子に「カワイイ」と言われるのが嫌い。見た目に反して結構鬼畜なんだな。メガネは容姿がいいタイプだ。そんなに頭はよくない、帰宅部。この3人でつるむことが多い。

 ナルホドなあ。こうして見てるとよく分かる。
 こいつらは全員、クラスで「普通より上」のあたりにいる。あるよな、「人類皆きょうだい!人は平等です!」なんていったって、「階層」つーもんが。どこにでも。
 アイツは変わってて、周りとも馴染めず一人で、しかも危害を加えてもやり返してこない。格好の餌食ってわけだ。

 昼が狙いどきかな。こいつら、大抵つるんでメシを食ってる。外におびき出し、人気のないとこに追い込みゃ簡単だ。
 いいことすると気分もいい。

 安心しろよ、夢主。間違いなく『楽しい学校生活』手に入れてやるぜ。





<続く>



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