夢小説 | ナノ

Trojandeath



▼ ホルマジオ夢 『蜘蛛の糸』B 21.1.25


前回の奇妙なあらすじッ!
適当高校1年友人0人クソボッチいじめられ夢主!やさC先輩ホルマジオと出会ったと思ったら、彼が夢主をいじめた?教師を校舎裏でタコってるのを見たったwww
他のいじめっ子達が入院したのも彼のせいなのではと確信する夢主であったがーーー……?!(てきとう

〜〜〜

「よぅ!おひさー元気してたかぁ?」
いつものヘラヘラフェイスといい加減ボイスを携え彼が現れた。
まだ陽は落ちてないが、段々と肌寒くなり始めている。雲が光を反射し、オパールのように遊色を起こした。
周囲にはぞろぞろと帰途に着く制服のグループが流しソーメンとなり坂を滑り降りて行く。
正直、彼に暫くは会いたくないというか、何を話せばいいか、何も言えない気がするしというか近付きたくなくて、失敗した愛想笑いで黙ったまま突っ立っていた。
「お!あんだよォげーんきねーじゃーんオッタマゲー!ウリウリ」
私より遥かに長い腕を首の後ろから回してホールドし、そのまま頬を擦り付けてくる。
「んぇぁちょっやめてよぉ」
普通に不快で手で拒んだ。彼の頬周りは朝ひげを剃ったろうに、もう夕方だからか少しジョリジョリして、昔父とこうしてじゃれていたことを思い出す。
流れで一緒に帰ることとなり今日自分の採った選択全てが悔恨である。時既遅。

「……ホルマジオっていっつもたのしそうだよね。」
「おれー?まあなー」
彼の猫に似た扁桃の目は、笑うとますます細く吊り上がる。
この人は今楽しげだけど本当は何を考えているのだろう。声を聞いても表情を読んでも何も分からない。ただ愉快そうに見えるけどこの人の裏にあんなことをさせる「何か」があるのだけは確かなのらしい。
男の子ってみんなこうなのかな?男兄弟も、男子(女子も)の友人も彼以外居ないから知らないが皆あんな風に乱暴なのが普通なのかな?多少暴れ回るくらい、ちょっと素行の悪い子なら「アタリマエ」なのか。ちょっとイラついたり気に食わないからとブン殴りまわし入院ハンゴロシとかも別におかしいことでは無いのだろうか?喧嘩したり自分の気に食わないことを何かした訳でも無いと思われる人を平気でブチのめせるもんなのか。
「なあ、今度遊び行かね?どっか連れてってやるよ」
どう返答すべきか分からず、
「へへ……今度ね!」
とつい調子の良いことを言ってしまう私は曖昧にしてしまった。

帰宅するといつものように母が横になっている。
「遅かったね」
二人だけのリビングがデンキウナギの棲み家のようにビリビリする。
「……ちょっと買い物してて………。」
「ふーん。」
肺が固くなりながらなんとかご飯を食べた。

〜〜〜

彼から逃れたいと思いつつ何ともないフリをする日々が続いた。
昼食も、余り一緒に摂らないのも突然だと変に思われるだろうし、頻度を減らすことで対応した。おかしなそぶりをして危険な目には遭いたくない。
彼は表面上いつも通りこれまでと変わらない。だけどこちらの見る目が変わってしまったから、もう「面白い先輩」とも「少し変わった珍しい友人のような人」とも感じられない。
嫌いというよりただただ理解出来ず脅威、市街地に出るヒグマよろしく出会いたくない。そんな風だった。

〜〜〜

早退したいなあ………。
今は現国だ。
前の教師は(明らかにされなかったようだが彼にボコられたのを目撃したよ!)入院したから臨時の先生が来たのだが、そいつはやたらグループで話し合い!とかさせる無駄にやる気あるメンドクサイので、苦痛だった。
他クラスと合同でやるのだが、まず知り合いもいなくてグループが作れないし、話せない、同じクラスの人達にはヒソヒソ陰口を言われたり机を少し離されたり。
席を何度か移動してグループになり、授業終わりに自席へ戻ると机にシャーペンで悪口を書かれていることもあった。慣れてるからどうでも良いけど、身体の外側がビシビシと薄い氷が張るみたくなった。

保健室に時々結構しょっちゅう死にかけ仕方なく行きたくもないのに行った。
以前、腹痛はストレスによるものなのに、ばれたくなくて咄嗟に寝不足のせいだとか言ったのを真に受けられ、泣いているのも鼻炎だと思われたのか気付かれず?ということがあってからやはり他人は馬鹿の役立たずだと認識した。困り事も何も言わなかった。
まあそもそもこちらが信頼しないからこうなってるとも思うが、言ったらきっと家に連絡され、親にばれたらこの先生きていけない益々状態悪化なるから、自分で耐えるしかない。

ある時のこと。
ベッドに寝ていると、硬いカーテンの向こうから他の子の話し声がする。
「教室にいたくない………怖い、」
声が震えている。…泣いてる?クラスで虐められてんのかな。あるあるー
「うんうん、わかったからね。いつでもここに来ていいよ。そのための場所なんだから。」
吐ァき気がするぜェェーーーー〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!??????
と内心思った。が黙って寝た。

早退はしたくてもガクセーにはクソの単位様というのがあり、普通に課題を出しテストを受け出席してたら高校なので留年するこたまず無いのだが(学校側もさせたくないのだろう)、余りに休み過ぎると危うくなる。
私はホルマジオと会う前からかなり使ってしまっていてもうYA★BA★E(ぅいー)といったところでドン詰まりなのだったガハハ!!!!!!!!
それと他の学校は知らんが、うちは早退すると帰宅時に電話をしなくちゃならないクソかすな仕組み(タテマエ的には安全確保なんだろうがどうせサボり防止でしょとしか思えん)で、だけどあんまり早い時間に帰るとおかしくて許されないから、仕方なくブラブラして回る。街中は補導されるから誰もいない普通の道をフラフラする。
そして1時間後くらいに出来るだけ道路に面さない静かな場所を探し、学校に電話する。どっかの建物のトイレとか。探すのに一苦労。脚の感覚が遠くなってもお腹が空いてそれが分からなくなってもまだ歩く。
どこへも辿り着けない行くべき場所など何処にも無いのだった。

〜〜〜

昼飯をin教室で一人で食う。もさもさだし食欲も湧かないが食う他Night☆
「呼んでるよ」クラスメイトにドアの方を指で促され、見るとホルマジオが立っていた。
ヒョェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
まあ教室も知っているからでもそこまではしないかなと思ったが彼にそんな「控えめ」「遠慮」の辞書は記されていないらしい。
「しょうがねえなあー夢主、エンリョしなくていいんだぜ?おれは全然迷惑じゃねえよ」
彼の前向き(?)ボンバーなメンタル的には自分が拒否られる可能性は素粒子ほども無っthingらしく、私が大人しくてドンクサで内気だから自分に引け目を感じてる、と解釈したようだ。
人の来ない、4階の屋上へ続く階段で昼食を摂ることになった。彼なりに私へ配慮したらしい、人混み無理というのを覚えていたっぽい。
辿り着くまでにもう逃げようと思ったのだが、私が余りに後ろを歩くから業を煮やしたのか、彼が手をホールドしてきて虜囚となった。
「お前手え冷たくねえ?すげえ冷たいんだけど」
彼の手はメチャでかくカイロ(地名ではない)みたくあったかくあったか〜い(自販機)だった。以前なら緊張&ホノボノだが今はただ気の狂った父の斧から逃げ惑うダニーの気持ちが分かった。

余り人の来ない踊り場はなぜか砂っぽく、綺麗とは言いにくい。てらてらした生成りの床面の隅には黒いじゃりじゃりが溜まっている。
陽が当たらないせいかなんだかじめじめしていて、ホコリを気にしつつ二人で座り込む。彼はコンビニ弁当をとっとと食っている、相変わらず箸が速い。
見ていると、何か思い出すような仕草をし、ポケットを探る。
「おー、これやるよ。」
目の前に突き出されてから手渡されたのは不細工なキーホルダー。豚だかエイリアンだか、けばけばしいアメリカンサイケデリック悪趣味感なゴム素材のブヨブヨしたもの。手のひらほどあり結構インパクトある。制服に入ってたせいでなんかうすらあったかいのもあってちょっとキモイ。
何故これを………とそれを見つめると、こうやんだってよ、とグニューとでかい手のひらで人形を押し潰す。すると、陸地へ引き上げられた深海魚さながら、真ん丸の目玉がベョンと飛び出した。
「ぇえ!…なにこれ!!」
思わず吹き出してしまう。それを見て彼は、
「気に入ったろ?お前こーゆーの好きだと思ってよ」
とご機嫌な狐の顔をした。
なんかまた彼のペースなような……。
「………。ねえ。あのさあ…あの」
「んん?」
彼はもう食い終わりペットボトルのお茶をノドを見せて飲みながら視線だけこっちへ向けている。
「あのさ………なんでここまでしてくれるのかな。いやなんか……意味っていうか変な意味じゃないんだけど。私といて面白いの?」
喋りだすうち口内で絡まったが、ごく単純な疑問だった。
どんな答えが返ってきてもそれは黙って聞こうと構える。
「んー………そーだなー」
飲み口を離しこちらを向く。
「なんか気になるんだよなあ、地下鉄で見たときから。放っとけねえっつうか」
理解は出来なかったが思ったよりだいぶまともな返答でミクロンだけほっとした。

〜〜〜

「ずっと居ないでどっか出掛けてくれば?」
休日、家に居たところ魚の骨のようにバリバリした雰囲気を出され、仕方ないから行く当てもなくほっつき回ることにした。
何処かへ行っても家に居てもイライラされ、私は正しくないのだった。
微熱で早退が続いたときも「自分は呪われてるんだー」とか意味不なこと抜かす役立たず。こいつを刺し殺して自分も死んだらと何度も考えたが、こんな奴の為に人生を捨てる程馬鹿にもなれないから結局何処へも辿り着かない。

家の外周をやる気無くヘロヘロし、ふとスマホを見るとLINEに通知が来ていた。
「今どこ?ヒマ?」
彼からだ。というかほぼ彼からしか来ない、誰とも交換しないから当たり前だけど。
こういうのは休日や一緒にいない下校時など時々来ていたがいつもは疲労や恐怖により申し訳ないが断っていた。でも…。

ジャンジャカ有線を流すブラック豆腐のスピーカーから流行りのJ-POPを大音量で流しまくる。君に会いたいとかやたら走り出したり夏だったり結ばれない恋してる自分……きらきらみたいな。
半笑いになりつつドリンクバーでお茶を汲み、来た道を戻る。
しっかり出る前に覚えておいた部屋番号を確認し入ると、彼はもうなんか知らん歌を熱唱していた。初っ端からこんな元気かよ!薬でもやってんの?でかい音がガキの頃から大嫌いなので、勝手にマイクとミュージックのつまみを回し音量を下げる。
「あーっ、下げんなよ〜〜!!!」
エコーが効き過ぎてるのも聴き苦しくて嫌いだから同時に下げ、やっと落ち着いた。
ホルマジオは納得いかなそうだったが間奏が終わりBメロが入るとまた気分よく歌い始める。なかなか上手いが『本当の』巧さではなく『カラオケの』うまさ、つまりイケイケウェイ系のノリノリソングとゆ〜ことなのだ(意味不)。つくづく自分とは分かり合えない人種だなーと感じる。
本当は来ない方が良かったのかもしれないが明るい彼を見ると少し気分がマシになる。本当はというか彼自体は勿論嫌いなんかではない。ただ理解出来ない、おかしい点があるからもうそこだけが問題であるだけで。
あのまま何処にも行けず当ても無く彷徨うのはもうイヤだったし、普段と違う新しいことをすれば何か変わると思った。

「最近はどうだ?楽しいか?」
何度も繰り返す時々会う親戚みたいな質問。その裏側を多分知ってるだけに恐ろしくなる。
「ん………うん。たのしい」
なるたけ刺激しないように、彼の望む回答を提示したと思う。
しかし、彼は首を傾げ腑に落ちないという表情をつくった。
「なんか変だぞ。なんか…隠してねーか?」
真っ直ぐ覗き込む彼の目は、形のせいか生態系上位捕食者脅威みたいで、獲られる寸前の獲物の感覚になる。
彼はこうして見過ごしてくれないかなあという時ほど繊細に読み取ってしまった。
「そんなことない」
声が変に硬く、上滑りしたようになる。
「……フーン。まあいいけどよ…なんかあったらおれに相談しろよ。なんとかしてやっから」
優しい気遣いの言葉、言い方も穏やかだ。なのに何故そう思えないんだろうか。認識が歪んでるせいか。上手く言えないが、彼は違うことを考えている気がするのだ。というか前科が少なくとも一つは確定してる時点で有罪だ。
でも結論を出せなくてそこにあるものを見ないようにしているのだった。

〜〜〜

「なあーんだ……そっか知ってたのかよ。」
元々滅多に来ない、そしてあれから一度も訪れなかった校舎裏。
緑の屋根の隙間から陽が溢れ、まだらに地面を白くする。素肌では少し寒いような風が通り抜けた。

私は今、自分が何と向き合ってるのか分からない。ホルマジオという先輩なのか、違う何かのような。プリズムや幾何形態のように視点を変えることで全く別の何かに見えるなら統合された個体なんだろう。

「やっぱり知らないフリしてたんだな。わるいヤツだなあ。お前って。」
愉快げに笑みを溢す。
先ほど、授業が終わってさあ帰ろうとリュックに教科書などを詰めていると、直接ホルマジオに呼び出された。今は手ぶらで、校舎を背にし遠くからする部活の声をなんとなく拾っていた。
すると、なあ、いつになったら楽しくなるんだ?と突然切り出された。
友達ができて嫌いな奴らもみんな消えて万々歳だろ?欲しいもんがあるとかやりたいこととかあんのかよ?
と。
私が答えられずにいると、
あー責めてるとかじゃねえんだよ。ただ望みは叶えないとだろ?いけねーよな。お前にはハッピーでいてもらわなきゃよ。

今すぐ逃げ出したい。でもそれは許されない。
「あなたは何をしたいの?」
やっと口をついたのは濁した言葉だ。
彼の返答は『お前を笑わせたい』だった。
「………それであんなこと……したの」
微妙に風の強い今日、彼に届くか分からん小声。
「あ〜!あれか!気にしなくていいんだぜ!」てゆーか。
「なあーんだ……そっか知ってたのかよ。やっぱり知らないフリしてたんだな。わるいヤツだなあ。お前って。」
「『生きる』ってそういうことだぜ。選択すんだよ大事なもんをな。優先順位つけてそれを守る、何をしても汚くても。それが生き延びるってことだ」

それは解るがだからと言って他人をメチャメチャにして良い訳が無いし、他に方法も幾らでもあるんじゃないか。どうしても分からないそこが。彼の中に見えない部分が確かにある。
黙って彼を見たまま、視線を反らせずに棒立ちした私に彼は無遠慮に近付き、髪を触った。
「別に、『お前のため』とは言わねえよ。おれが勝手に好きでやってんだからお前は気にしなくっていいんだよ。な?」
なおも動けずにいる私に続ける。

「前より楽しくなったろ?学校。」

また………。
そんなことあるわけ無いのに。目立ついじめてくる子や嫌な教師がなくなっても私は私のまんまなんだから何も逃れられないから浮いたきりでどうすればいいかいつも分からないそういう時ほど自分でなんとかするしか無いのに。
家に帰ればまた嫌な思いをするのに。ずっと明日がやって来て何処へも逃げられないのに。
楽しいわけ………………………。

だけどこれは彼に言っても、誰に言ったって分からない。そうなんだろう。
彼のことは分からない。私のことも彼は、皆も多分きっと分からない。分かりたくても分かってあげられない、若しくは知りたくも無い。
彼の猫の目より、オレンジの髪が忘れられない。

一人で帰りやっとうちの玄関に辿り着く。帰りたくないが他に行くとこもある訳ない。
TVで、親にスゴク歳上の彼氏との結婚を反対されたエピソードを女の人が話してるのを見て、母は「でもやっぱり『親は子どもが一番大事』」だと言った。黙って聞いていたが、でも痛いのも悲しい辛いのも全て不快にしか思われない許されないなら、それは単なる自己愛でしかないと思った。

〜〜〜

帰り、歩道に溶けた飴みたいなベタベタを見つけた。
よく見ると大きな見たこともない踏み潰された橙色の蜘蛛で、腹が破裂し、手脚も千切れている。鮮やかな内臓がぶち撒けられ、全体をその色に染めていた。
これからどうしよう、明日からどうなるかなと彼から貰った変なキーホを制服のポケットから出すと、取り損ねて道路へ飛び出し、拾う間も無く轢かれてしまった。
慌てて見ると摩擦熱で溶け、サイケデリックなチューインガムのように道路にへばりついている。
それは蜘蛛の死骸によく似ていた。


☆END☆



prev / next

[ back to top ]



×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -