夢小説 | ナノ

Trojandeath



▼ メローネ夢 『夢は幻』B 21.6.28


また無くなってる。
いつものシャーペンを探すも、何処を探しても見当たらない。絶対ここに置いたのに、と探しても探しても見つからないのだ。
昨日も、消しゴムとメモ帳を紛失してしまった。
家にあるのは余り無くさないのに、ここに置いてあるものばかりどっかへやってしまう。なんでだろ。
私がゴソゴソやってるんで、他のメンバーも「どうした?」と言って、手伝ってくれたのだが、ついに一つも発見されなかった。
ここひと月だけでも無くしものはかなりの数になる。
私の持ち物がガンガン減ってゆき、元々忘れっぽいし紛失しがちだったが遂にボケたかと悲しみに暮れた。
無い無い言ってると呆れながらも他のメンバーが「使わねえから」と恵んでくれたりし、優しさに震えながら感謝した。

「昨日もまたあれとあれも失くした、一体どうしたんだろう」
とメンバーにこぼすと、その場にいたメローネがそんなに気にしなくていいと言い、使ってないからと消しゴムとシャーペンをくれた。
あれから、彼に特に変わったことはされていない。
でも着替えを盗撮されたのはどうしようもなく事実だし彼への不信感はそのまま安置されている。
「いいよ、悪いよ、流石に私が悪いんだし」
「いやいいさ、他にいくつか持ってるしな。それより、自分の脳の心配したほうがいいんじゃないか?」
「ちょっと!!??」

他のメンバーもいるし、あと私は他人に対し反射的に愛想を良くするという個人的には最低な性質のため、普通に明るく話した。

ーー

うおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!
組織の仕事向いてないし全然出来ないがとにかくやるしかねえ!!!!!
計画性無先読み能力ゼロの自分はとにかく行動するしかないから(怖い)先輩sにコツを聞いたり筋トレしたりして出来ることをとにかくやろう!と生活していた。

 電車の少し固い椅子に揺られる。
目の前に男女が立つ、自分と同じくらいの歳だろうか。
「ねぇ〜ゼッタイあの人痩せたらもっとカッコいいよねえ」
女のヘラヘラした阿呆ボイス。男が何か答える。
目を決して上げないのに、女が男にドンドンぶつかってふざけてるのが見えてしまい、吐き気がする。
何処かへ行ってくれ!!!!!!マジで。何でこんな思うのか自分でも分からんが本当に気が狂う。目の前でやるな、死ね。
日焼け止めを買うついでに本も見ようと街まで足を伸ばすんじゃ無かったかも知んないと早速後悔しかけた。
電車から降り、カップルが手を繋ぎ前を歩くのを視界が捉え、脳を小さめのヤスデが大量に這い回る感じがした。


***


 シャーペン消しゴムノートにメモ帳、薬用リップヘアゴムTシャツに下着靴下キーホルダー。
戦利品を並べ、壁に掛けた鏡の自分は顔を緩ませる。
 こんなに小さくなっても消しゴム捨てないのは変なとこ神経質で真面目なのが出てる。ゴチャゴチャ雑多に荒れた字で書き込まれたメモ帳は忘れっぽいから工夫してるんだな。服はこれいつ買ったんだろう、くたびれてきててそろそろ新しいの買ったほうがいいんじゃないか、下着が大分地味だし上下も揃いのヤツじゃないけどあの子らしい。

 こんなに物を失くしても「自分がどっかやってるだけ」としか思わない愚鈍な夢主。ペンと消しゴムをやったらニコニコ感謝してたあの子。俺にあんなことされても変わらない態度の夢主。
 ベッドに寝転び、コレクションからスースーする匂いのメンソレータムのリップを取り、唇に塗る。もうちょっと高いの使っても良いんじゃないか、いかにも必要最低限、保湿さえできれば……ってあの子が言ってるのが想像つき、なんだか笑けてくる。

 別に彼女をどうこうしようという気はない。
ただこうすることでおれの気が満たされればそれでいい。あの子はあの子のままでいて、それで。


***


自宅は相変わらず魔窟だったが、アジトに置く自分のものは少し整理した。
そのせいか、ここ1〜2週間ほどで失せ物は止んだ。
きっと仕事とか寝不足とかで疲れてたんだろう。よかった…。もっとしっかりするようにしよう。

そう思った途端、おみやげを忘れたことに気付く。今日、オンナに貰ったけど甘いもん食わないからとイルーゾォがアジトにアイスシューを持って来た。
それぞれその場で食ったりおれイラネとかやってたが、私はうちで食おうと思い冷凍庫にぶっこんだのをスッカリ忘れてた。置いてっても良かったが明日になったら多分もう誰かに食われて無くなってると予知し、慌てて来た道をリプレイする。

もう皆帰ってしまったのか、中は暗い。カーテンが開きっぱで、外の灯りでなんとなく足元は見える。どうせすぐだから、とそのまま進むとキッチンが明るい。まだ誰かいたのか…。
覗き込むと、ピンクの髪が蛍光灯に揺れる。
メローネだ。
うわ気まずというか会いたくないと咄嗟に身を隠す。もうヤッパ帰っちゃおかな…サヨナラアイスシューたん(クソキモ言語)と思いつつこちらへ来られても困るし様子を伺うと、流しの横のトレイに載せてある皆のカップから私のを掴んでいる。
それを鞄に入れ、全く同じものを取り出し差し替える。
脳が固まるが、こちらへ来そうな予感で隠れるか離れないと、と思うも振り向く彼と目が合ってしまい、お互い止まる。
しばし外で会う猫のように見つめ合い、彼が切り出す。
「やあ。どうした?また忘れものかい」

 前とおんなじ。ちっとも普段と変わらぬ風で、まるで何もしてなかったように。
こいつクソか?割と知ってたけども。
自分が言ってしまうべきかどうか逡巡する。
「あぁ……シュークリーム忘れた。忘れちゃって。アイス」
冷蔵庫を指しつつ、何故か阿呆のように半笑い、無意識で何事も無かったように流そうとする自分。
正直、死ね。こいつ。
でも彼とはこれからもどっちか死なない限り同じチームだ(消えるとしたら無能な私だろうけど)、その上でモメ事を起こしていいのか?
大して賢くないのに変に考え過ぎる脳がいつも本当に邪魔だ、咄嗟にキレたり出来ればどれだけ楽だろう。
「ああ、それな。おれはもう食ったけど悪くなかった、今食べるか?」
そう言って先程自分で取り替えた「私のカップ」を彼が手に取る、いつものグローブを嵌めた手で。
限界だ。
「いらない。」
強めに放った言葉は思ったより大きく響き、ちょっとしまったかなと思うも取り戻すことは出来ない。
彼はそんな私を何ともなげに、いつものダルイ様子で見てる。どのツラだよ!
彼のそうか、を聞かず波状に続ける。
「そのカップもういらない!捨てて!!!!」
こういう時の私は昔の親にソックリで死にたくなる。いっそ彼がキレて殺してくれればいいのにとすら思う。
彼の返答は簡単だった。

「わかった。」

そのままカップをゴミ箱に落として捨てた。
死んで欲しいと思った。

ーー

 その後、ムカつき過ぎて話す気にもなれずシューアイスのことも忘れあのまま私はキレて帰った。もう終わった。もうあそこに行けない。メローネにどう思われたか分かったもんじゃない。仕事も出来ないヤツが先輩に怒鳴り付けてタダで済む訳もない、気がする。
彼は思考が読めない。変なことを気にしてまともなことは気にしない。彼なりの論理はあるものの他人が理解出来るシロモノじゃなかった。

 ビクビクしつつ職場へ行くも別に思ってたようなことは何も無かった。シュー食っちまったからな、とホルマジオに笑われただけ。
そしてまた何も知らぬリーダーにメローネとチームを組まされ気分は寝床にあの小っこいウネウネした赤っぽいムシを100匹見つけたようになった。

 ポンコツなりに仕事は全力で頑張った(無能だったけど)。
帰り、もうどうでも良いやと彼に疑問のボールを投げ付ける。
私のもの盗ってたよね、私のことが嫌いなの、何がしたいの。

「だって君恋愛とか嫌いだろ。
イヤなことは良くないことだ。おれもそういうのはどうでも良いんだよ、モノが欲しいだけ。お互い合ってるだろ。」
取るだけじゃ良くないと思って取り替えることにしたんだとあけすけに平然と話す。
「困るし嫌だからやめてくれませんか」
無駄に整った瞳が私の顔を見る。
「いらないよ敬語なんて。それより困る?なんでだ、同じモノがあるならそれでいいじゃあないか。キミにとっては何も変わらない。それに新品になるんだから、かえってトクだろ。」

 同じ言語を繰るようでいて、話しても分かり合えない人種は確かに存在する。うちの親も、政治家も、そして彼も。
言っても分かって貰える筈は無いのだなとそこで会話をブチ切りし、警察に頼れない身をこんなにああ………と思ったことは無い。まあ言ってもどうせロクに何もしてくれないだろうけど。
仕事だから私情でこいつと組みたくないなんてリーダーには言えない。そもそもモメてることも言えないから、取り敢えず鍛えまくり彼をボコボコに出来るくらい強くなろう!!!!!!と心に決めた。






その後、夢主にボコられて酷い顔になっても「いいパンチだ」とか言ってるメローネを見たとか見ないとか聞く。





**end**




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