夢小説 | ナノ

Trojandeath



▼ メローネ夢 『夢は幻』@ 19.9.9

嘘かと思った。

というか、私の見間違えか、気のせいか妄想だと。
そうだったら、そう思い込めたらよかったのに。

でも全てただの現実なのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

彼と初めて任務を共にしたのはいつだったか。
私が方向音痴とか物忘れとかによるミスばかりして、ずいぶん迷惑を掛けた気がする。
だけど、彼は大して怒らず、
「平気、平気。あせんなくていいさ」
と言ってくれて、私はとても救われた。
それは今でも覚えている。



今日の任務はメローネとの共同だ。
大体いつも誰かと組まされるのだが、それはまあ、私一人に任せるのは不安だからだろう。
わかる!!!自分が一番心配だ。

今回は潜入するため、変装をする必要があった。
目的地の近くにある組織の建物の一室で着替えることになった。
部屋が狭いため、仕切りのカーテンの中で着替える。
メローネは先に終えてしまって、椅子に座ってベイビィを操作していた。

薄暗く狭い仕切りの中で、まず上を替える。
次に履いていたジーンズを屈んで脱いでいるところで、カーテンの脇にあった引き出しがガコと開く音がした。
ふと下を見ると、スマホがカーテンと床の隙間で光っていた。
インカメラにズボンを脱いで下を見る私が写っている。
え、と思うと、すぐに引っ込められた。

今のはなんだ?
この部屋には、私と彼しかいない。ということは、彼がやったのだろう。
何かの手違いでスマホが入ってしまったのか?
引き出しを開けようとして、ウッカリ隙間から入り込んでしまったとか?
「わざと」だなんて、私の考えすぎ、思い込みなんじゃないか?
だけどわざわざインカメ状態になっているなんて不自然だし、どう考えてもおかしい。
幸いというか、逆光のようになって、私はほとんど真っ黒に写っていたと思うが、一瞬のことで曖昧だ。
なぜあんなことを?

頭がぐじゃぐじゃした。
胸のあたりが気持ち悪くなって、硬くなる。心臓が速く打っているのがわかる、走ったときみたいに。
身体がさなぎのように硬くなっている。

だけど、私は、とにかく「自分さえ何も言わなければ」、気付かなかったフリをすれば、全て無かったことになる。だから、着替えを終わらせよう、と考えた。
とにかく平穏を崩しちゃいけない、黙ってなくちゃならない。こういう時いつもそう思った。

着替えが済み、彼が何か言ってくるかなと思いながらカーテンを開けた。
「やあ、結構、似合うじゃないか」
「はは、本当?」
なんてことない会話だ。
本当に普通だ、あんなことをしておいて?
彼に対する怒りが湧いた。

ところで私は今、「ちゃんと」普通に出来てるんだろうか?声が不自然になってないだろうか。表情が硬くないのか?
彼は分からないのだろうか。

メローネはといえば、いつも通りに見える。
いじっていたスマホをしまい、仕事の準備を始める。
でも、少し笑顔がわざとらしいというか、テンションがやや不自然に高いようにも感じる。

でも、とにかく「いつも通り、なんともない風にしよう」とだけ考えた。
自分が恐ろしいのかどうかわからないが、聞こうなんてとても思えない。

なぜあんなことをしたの?

彼は普段と変わらないようだし、私もそのようにした。
なんとなく、二人で「共同の秘密」を持っているようで、なんだかおかしくなった。
同じ秘密を持ち、お互いそれについて黙って触れないでいる。
「同じもの」を見ている気になって、なんだか妙な気分だ。
突然へんな目に遭ったから、動転してるのかもしれない。


任務はなんとかヒィヒィしながら終えた。
また着替えなくてはならなくて、またされるんじゃないかと恐ろしくなったが、モタついてる時間はない。
南無三!的ブラックジャック的エセ希望的思考でエイヤッと服を脱いだが、今回は彼もカーテンの外で着替えているし(時間がないから)とくに何も起こらず安心した。

帰り、行きと同じように、彼のバイク、このばかでかいバイクの後ろに乗らなくちゃならない。
彼に掴まらないといけない。
スゴク嫌だなあ、と嘘偽り誇張なく思った。
彼のことが嫌いとか、そーいうことではなくて、ただただもう本能として感じた。
だけどそんなことは言っていられないから、バイクに跨る。
「しっかり掴まってなよ」
いつものようにそう言って、走り出す。

振り落とされるのが怖くて、しっかりと片手でグラブバー(バイクの後ろについている掴むとこ)、もう片方でメローネの腰を掴む。
正直、バイクに乗っているときはいつも任務の時より命懸けと思っているのであまり余裕がない。

だけど、いつもより脳が朦朧とする感覚がある。
視界になんだか映像が流れているようで、ゲームとかTVの世界みたいな。彼の腰を掴んでいる感覚もなんだかにぶくって、簡単にいうと現実が遠い。

近頃は良くなっていたのに舞い戻ったこの感覚は、間違いなく彼の行為のせいに違いなくて、憎々しく思いながら背中を睨みつけた。


帰り着くと、何も知るはずもないみんなが、
「おう、どうだった?」
とかいろいろ言ってくる。
普通みたく返したけど、あのことばかり考えてしまっていた。
「私は今何をしてるんだろう」という違和感がすごい。
「今」笑っている私がおかしいように思う。
「現実」と「さっき」が、私の中に同時にあるみたいで、みんなはいつもと同じに笑ったり呆れたりなんかしてて、だけどそれは私と無関係なように感じた。
頭というか、身体の、心の中にさっきの感覚、感情、映像が残っているのに、これは誰にも見えない。
私も「見せない」から、ヘラヘラ無駄話なんかしている。
「現実」にいるのに、「現実」を見てないというか、「そこ」に生きてない。ズレがある、感覚が鈍い。

この感覚はいつからか、昔からずっとあって、最近良くなっていたのに彼のせいで悪化した。
殺す。と思ったが、プロシュートに怒られるなあとか考えてた。


部屋に戻っても、思考は帰らなかった。

メローネは、チームの中でも割と仲の良い方だった。
私は男子と話すのはそんなに得意ではなくて、年が離れていればいいけど、同年代くらいはどうもニガテだった。
学生のころ、私はいじめられていた。
だから、歳の近い人、とくに男子が得意じゃない。

それで、だけどチームのみんなとはちゃんとやっていかないと、捨てられたら困るし組織に消されたくないからと、なんとかやっていた。
みんなも見た目は怖い(冗談めかして言ったら怒られたことがある)けど、割と思ったよりは優しいし、まあ怒ると震えるけど。

そんな中、メローネはチームで一番話すことが多かった。
なんとなく男の子っぽくないし、フランクでヘラヘラした感じが近付きやすかった。
ただの「親しい仲間」だと思っていた、昨日までは。

あんなとこ撮ってどうするのだろうか、仮に私の妄想でも思い違いでもないとするなら。というかそうであって欲しかった。
LINEとかで共有してみんなで笑い合ったり、ネットに上げたりするのだろうか。
それとも一人で見てバカにするのだろうか。

なぜ私はいつもロクな目に遭わないのだろうか。
薄汚い人間だからなのだろうか。

今日、着替え終わってから確認したが、カーテンの中にスマホを差し込むには、かなり手を伸ばさないといけない。
だから、「引き出しを開けようとして」というのは、あまりに不自然だ。

できればもうあまりメローネと会いたくないけど、みんなでここで寝泊まりして生活する以上、部屋に引き篭もったって限度がある。(そもそもそんなことしたら「サボってんじゃねえ」とドヤされる。無理)
割と頻繁に彼と任務を組まされるし(リーダーが私と彼は仲が良いと思っていて、スタンドの相性もいいと考えているから)。

彼のことを嫌いというか、なんというか今は不信感しかない。
あんなに話してくれたのに。優しくもしてくれたのに。いい人なんだと思ってたのに?
彼がなにを考えているか、私にはサッパリ分からない。
他人の意図などいつもよく分からなかったが、今回は格別だ。
いやだなあ、と思いながらベッドに横たわる。

これからの生活を考えると、胃みたいなところがへんな風になった。




prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -