[ 4/12 ]
「降りてきてやれ!!」
クロッカスの声がノエルに届く。黙って見送るはずだったのに、ここで顔を合わせてしまえばルフィは自分を仲間にすると言うだろう。首を縦に振るまで離してくれないことは目に見えている。それ以外に選択肢はないのだ。
ノエルは煙草に火をつけて大きく吸い込むとため息と一緒に煙を吐き出した。
「いるんだろー?おーい!」
「い!?」
「い、いまどこから・・・!」
「はああああ綺麗なお姉さんだああああ!!」
ルフィがそう叫んだ時にはもうノエルは後ろにいた。突然現れた彼女に驚く仲間達の声でゆっくりと振り向いたルフィの目に見えたのは風になびく白金色の髪と自分を写す灰色の瞳。
「ノエル・・・?」
「君の名前は?」
「え、ああ、おれはルフィ!海賊王になる男だ!」
「海賊王・・・」
「ああ、そうだ」
「・・・ッ・・・ふふッ」
10年前と変わらぬままの夢と彼らしいその言い方につい笑ってしまう。
「変わらないのね、ルフィ」
「え・・・」
「そういえば、私が上げたお守りはどうしたの?」
そう言って着ているローブで隠れていた首元を出してつけているチョーカーを見せればルフィの目はみるみるうちに大きくなりその両手がノエルの両肩を掴んだ。
「ノエル、だよな」
「そうよ?」
「うおおおおおおおおお!!」
そう声を上げたルフィは目の前にいるノエルに迷わず飛びついた。
「ノエルノエルノエルノエル───ッ!!」
「はいはい」
力強く抱きしめられ何度も名前を呼ばれ、困ったと笑うノエルだが同時に大きくなったとまるで親のようなことを思ったり、彼の背中に腕を回して優しく撫でた。
「ルフィ!てめぇ何を麗しきレディを抱きしめるなんて羨ましいこと晒してくれてんだコラァァァアアア!!!」
女性に飛びつくという行為を羨ましいと怒り狂うコックのサンジ。体を離したルフィはニカッと笑って言った。
「新しい仲間だ!」
「なんだ、そうか!・・・あ?」
「ハァ───!!?」
驚きもするだろう。素性もわからないたった今会ったばかりで仲間達とは一切の言葉も交わしていないそんな奴を仲間だなんて言われて驚かないわけがない。
ノエルはため息をついてルフィに言った。
「待ってルフィ。私、『仲間になる』なんて言ったかしら」
「ええ!?これくれたじゃんか!約束の印!!」
「あら、切れちゃったのね。さっきも言ったでしょ?それはお守りとしてあげたの。それに私は『楽しみにしてる』と言っただけでしょ」
「何だよそれ!!!」
必ず探し出して絶対に仲間にするために、守れるようにたくさん修行して強くなった。忘れたことなんて一度もなくて会えるのをずっと楽しみにしてたんだ。
そう言ったルフィがノエルの腕を強く掴んだ。
「仲間になってくれよ!」
「・・・断るって言ったら?」
「許さん!おれはそれを断る!」
「何よそれ!それに、私を仲間にしたいなら彼に許しを得ないと」
ルフィが被るシャンクスから預かっている麦わら帽子を指さした。
海賊旗を掲げてる以上彼はれっきとした海賊で、勧誘している相手は四皇の1人である大海賊の船員だなのだから勝手に仲間になるなんて許されることじゃないのだ。
「どうする?」
ノエルが意地悪く口角を上げて言えばルフィは俯いた。さすがのルフィも事をわかっているのだろうと思ったのだが、次に彼の口から出た言葉でまた驚かされることになる。
prev │ next