雨のち、曇りのち、晴れ | ナノ


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「大佐!!追わないんで!?」
「・・・ああ、疲れた」
「疲れた!?・・・あの、そちらは・・・?」
「こんにちは」


私を見た海兵君に笑って挨拶をすれば少し頬を赤らめて軽く会釈をしてくれた。さっきまでルフィ達と一緒にいたのに、この人は私のことを彼等の仲間だとも海賊だとも思っていないのだと思ったらなんだか笑えてくる。


「今追ってった奴ら無駄だから呼び止めろ・・・そしてここに召集」


私のことには触れず海兵君にそう指示をするスモーカー君は続けて今アラバスタ周辺にいる軍の船をすべてこの国に集めるようにと言う。少数海賊のために上官が船を動かすかわからないと言った部下をスモーカー君はすごい形相で睨みつけた。


「おれがいつ上官の意見を聞いたんだ!!?」
「あ・・・いえ、はい・・・!!」


可愛そうに。海兵君はその恐さにダラダラと冷や汗を流しながらその場を離れていった。


「スモーカー君」
「・・・・・・なんだ」
「なにって、再会のハグ」


新しい葉巻をくわえて火をつけるスモーカー君に向かって両手を広げて言えば彼は片眉を上げて私を見て煙と一緒にため息を吐き出した。


「聞きたいことってのはなんだ」
「・・・ハグは?してくれないの?」
「ふざけてんのか・・・?」
「至って真面目よ」
「・・・バカ言ってねーでさっさと用件を言え!」


頭を押さえてまたため息をついたスモーカー君は湖を囲っている柵に腰掛ける。私も自分の煙草に火をつけて彼の隣に腰掛けた。


「ありがとう、あの子達を逃がしてくれて」
「勘違いするんじゃねェよ。おれは借りを作りたくねェだけだ」


海賊はどこまで行こうと海賊なのだと七武海さえ嫌うこの男が、その嫌いな海賊に借りを作るなんてことをするはずない。そうだったと笑うとスモーカー君はまたため息をつく。


「ゆっくり話してる暇なんてねェはずだぞ」
「そうだね・・・聞きたいのは君が知っている私に関しての情報だよ」
「お前に関して・・・?」


赤髪海賊団の幹部にはノエルと言う女剣士がいてその女は何かしらの能力者である。
これは海軍にも海賊にも知られていることなのだが『ノエルという女=私』だと言うことを知っているのは海軍上層部を除けばスモーカー君と一部の人間だけ。私が知りたいのはスモーカー君がその情報以外に知っていることがあるのかどうかだ。
普通なら知っている情報を易々と教える人間ではないスモーカー君だけれど、知りたいのは私自身に関しての情報だと言うこともあり話してくれるのだ。


「上からは入ってきてねェが・・・新しい情報なら数分前に入ったな」
「え?・・・あー・・・」


能力者なのに泳げること。
それに関しては誰にも知られてはならないことだった。だから檻の中でもギリギリまで何もせずにいたのに、まさかこんなことになろうとは。しかも知られたのがスモーカー君とは、なんてついていないのだろうか。
そう考えながら座っていた柵から離れて彼に背を向けた。


「・・・・・・ノエル」
「・・・ん?」
「おれが今知っている以外の情報を持っていたらなんなんだ?なぜそんなことを知りたがる」
「へ?」


能力のことを聞かれるのかと思いきやそんなことかと振り返るとスモーカー君は葉巻をふかして下を向いている。多分、彼は空気を読んでくれたんだろう。能力については触れないでほしいと言うそれを。
だから私も何も言わず、聞かれたことに対してだけを答えた。


「少し面倒なことになるだけよ」
「面倒・・・?」
「君達海兵が知っている情報によっては私も行動を考えて行かないとだから手遅れになる前に情報を知っておきたいの」
「・・・お前、よくそれを海兵の俺に話せたな」
「何を今更。スモーカー君は他の海兵君達とは違うと思ったから話したんじゃない」
「今更じゃねェさ。ずっと思ってたことだ」
「君だって同じなんじゃないの?」


海軍に属するスモーカ―くんと海賊に属する私が仲良くしましょうなんて普通ならない話だ。互いに顔を合わせれば私は逃げて相手は追ってくる。例え親友であろうが親子であろうが、片方が海軍片方が海賊であればそんなものは関係なくなってしまうのだから。
でも私とスモーカー君はそうじゃない。彼は私を捕まえようとはしないし、私も彼のことをただやみくもに海賊を捕えようとするだけの男だとは思っていない。
少なくとも私はスモーカー君のことを信用しているんだ。


「私が君に一目置いているように君もそう思ってくれてるのかと思ってた」
「・・・自惚れんじゃねェ。今ここでお前を捕まえてもいいんだぜ」
「できるもんなら・・・どうぞ?」
「・・・チッ」
「そろそろ行かないと・・・あ、そうだ」


最初と同じようにまた両手を広げてスモーカー君を見る。彼は又大きくため息をついたけれど今度は私の腕を引いて自分の腕の中に入れてくれた。
煙草とは違う、葉巻独特の匂いが私を包む。なんだかとても、落ち着いた。


「今日知ったことは君の中だけに留めておいてほしい」
「・・・・・・・・・」
「君にはちゃんと自分の口から話したいから・・・」
「仕方ねェな・・・おら、さっさと行け」
「ふふっ、ありがとう」


体を離してルフィ達の走って行った方角へ進む私の手には数本の葉巻があった。彼と会った時はいつも何本かちょうだいしてくるのだ。
今は協力してくれるスモーカー君だけれどすべてを知ったら今まで通りにはいかなくなってしまうだろう。彼自身が変わらなくたって彼が海軍である以上どんな手を使ってでも私を捕まえなければならなくなるときがやってくる。
私達のちょっと変わった鬼ごっこは終わることがないのだ。





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