雨のち、曇りのち、晴れ | ナノ


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湖の真ん中に立つワニの屋根の建物。ビビの気配を追ってノエルもその建物に入った。扉の向こうは賑やかな機械音とジャラジャラとうるさい金属音、そして客たちの声。ここにいる者達はこの国で何が起きているのか、自分達が英雄と称している男が何をしようとしているのか、知りもしないのだ。


「葉巻の匂い・・・」


ノエルは風になりその匂いの続く扉をすり抜けた。少し進んだ先、左右に分かれる道の真ん中に看板を見つけたノエルは姿を戻し一度立ち止まった。左にVIP右に海賊と書かれたそれを見てルフィ達がどちらに進んだのかは容易にわかる。そして彼の匂いもそちらへと続いているのだ。何かしらの罠だとわかってはいたもののまずはルフィ達と合流しようとノエルはフードをかぶり直し彼らと同じく右へと進んだ。


「ノエル!!?」
「ああ、いたいた」


そこは海楼石でできた大きな檻の中だった。


「何でお前も罠に引っかかってんだよ!!アホか!!」
「後から来るならせめて檻の外に出てきなさいよ!!バカじゃないの!?」
「言いたい放題ね・・・で、ビビは?」


そう言って檻の外を見たノエルの視線の先には片手にワイングラスを持ち不敵に笑うクロコダイルが椅子に座っていた。


「クハハ・・・顔を隠す必要なんてないんだぜ?しばらく名前を聞かねェと思ってたら、こんな小物海賊と馴れ合ってたのか・・・もったいねェな・・・・・・ノエル」
「!!?」


クロコダイルの言葉でナミ達の視線がノエルに集まった。フードを取ったノエルは煙草を取り出し火をつけてクロコダイルを見据える。その視線はとても冷たいものだ。


「ノエルは七武海と知り合いだったのかー!?スッゲー!!」
「そうじゃないでしょ!?」
「・・・ビビは?」
「まだ来てないのよ!!!」
「そう」


それだけ言ってノエルは一緒に檻にいたスモーカーの隣に腰掛けた。


「驚いた?」
「ああ、驚いたな。お前のような大物がなぜ奴らに関わってんだ」
「大物って・・・そういう言い方はやめて」


2人は周りに聞こえない程度の声で話すがルフィ達がその関係性に疑問を持たないわけがない。


「ノエルは・・・」
「クロコダイル!!!」


ルフィが何かを聞こうとしたその時、扉が開きやっとビビが現れた。


「やァ・・・ようこそアラバスタ王女ビビ、いや・・・ミス・ウェンズデー。よくぞ我が社の刺客をかいくぐってここまで来たな」
「来るわよ・・・!!!どこまでだって・・・あなたに死んでほしいから・・・!!Mr.0!!!」


死ぬのはくだらないこの国だと笑うクロコダイルに怒りの色を顔に漲らせて彼をめがけ長い階段を一気に駆け下りて行く。


「お前さえこの国に来なければアラバスタはずっと平和でいられたんだ!!!!」


ビビの痛みとも思えるその叫びと共にクロコダイルの顔面に攻撃を放つ。彼の顔は無くなり彼の座っていた椅子の背もたれが切り落とされる。しかし、再びクロコダイルの声は聞こえるのだ。


「気が済んだか、ミス・ウェンズデー」


スナスナの実を食べた砂人間。さらさらとビビの周りを漂う砂がクロコダイルの姿へと戻り彼女の体をしっかりと捕えた。口を押えられ苦しそうにするビビを見たルフィが離せと声を荒げるが檻の中からでは何もできない。するとスモーカーの隣にいるノエルが口を開いた。


「離しなさい」
「ッ・・・!!?」


するとビビの体は解放され力なく椅子へと座らされた。ノエルは先ほどよりも鋭い目つきで彼を見据え気を放っている。それはクロコダイルだけに向けられているがその場にいた全員が息をのむほどのものだった。


「2度と彼女に触れないで。もし触れたら・・・」
「檻の中にいるお前に何ができるってんだ?」
「私が君を、殺してあげる」


そう言ったノエルの口元は弧を描いたが目の奥は決して笑っていない。そして強い殺気も放たれたままだ。


「チッ・・・まあいい。ちょうど頃合・・・・・・パーティーの始まる時間だ。違うか?ミス・オールサンデー」
「ええ・・・7時を回ったわ」


B・W社『ユートピア作戦』開始。
これからが本番。長い長い1日が始まるのだ──





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