雨のち、曇りのち、晴れ | ナノ


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ようやくついたユバは砂嵐に襲われ後だった。エルマルとさほど変わらずとてもオアシスとは言えないその場所に、スコップで砂を掘る1人の老人を見つけた。


「旅の人かね・・・砂漠の旅は疲れただろう。すまんな、この町は少々枯れている・・・・・・」


顔を上げた老人は宿ならいくらでも休んでいくといいと言うのだが自身の体はふらついている。
顔を隠したビビが反乱軍について尋ねるとその老人は途端に血相を変えそこにあった樽やバケツをルフィ達に投げつけた。


「貴様ら反乱軍に入りたいなんて輩じゃあるまいな!!!」
「うわッ!!なんだなんだいきなりッ!!!」
「・・・あのバカ共なら・・・もう、この町にはいないぞ・・・!!」


反乱軍はナノハナの隣に位置するオアシス『カトレア』に本拠地を移していた。と言うことはルフィ達は今来た道をまた歩いて戻らなければならない。どうするんだと言ったルフィがついビビの名前を口にしてしまう。すると老人がそれに反応した。


「ビビ!?・・・今、ビビと・・・!?」
「おいおっさん!!ビビは王女じゃねェぞ!!?」
「言うな!!!」


ビビ本人もどうにかごまかそうとするがみなまで言ってしまってはもう遅い。しかし老人はビビが幼い時からよく知る、反乱軍のリーダーである男の父親だった。


「トトおじさん・・・・・・!?」
「そうさ・・・・・・」
「そんな・・・!!」


老人はビビが国に帰ってきたことに喜び涙を見せ、ビビは口を多い言葉を失った。
自分の知る『トトおじさん』はこんなに痩せてはいなかった。真ん丸としていていつも笑顔で接してくれていたその人が細くやつれてしまっている。ビビが声をかけられないでいるとトトが口を開いた。


「私はね・・・ビビちゃん!!国王様を・・・信じているよ・・・!!!」


国王は決して杭を裏切るような人じゃない。そう言ったトトの目からは涙が溢れそのまま頬を伝う。


「次の攻撃で決着をつけるハラさ。もう追いつめられてるんだ・・・!!死ぬ気なんだ!!!頼むビビちゃん・・・あのバカ共を止めてくれ!!!」


泣いて頼むトトにビビは持っていたハンカチを差し出す。そして顔を隠していたフードを取ると笑って見せたのだ。反乱はきっと止めると言って。
誰が見てもわかる無理をして作った、まるで貼り付けた笑顔。自分が泣いていては国も国民も救えないとでも思っているのだろうか。声を上げて泣きたいだろうに。
ルフィ達は笑うビビをただ黙って見つめていた。


カトレアへ向かい来た道を戻らなければならないが、これまでの長旅で一行の体力も限界に近いためこの日はトトの宿で仮眠をとることにする。


「はー・・・寒い・・・」


部屋の中ではまくら投げが繰り広げられており落ち着いて寝られる状況ではない。そんな中ルフィの姿がないことに気付いたノエルは毛布に包まったまま外へ出た。


「・・・トトさん?」
「おや、寝れないかい?」
「ちょっと、バカ共が騒いでて」


トトはまだ穴を掘り続けていた。彼の掘る穴の隣にもう一つ穴があり覗いてみると寝ているルフィの姿があった。トトの手伝いをしているうちに寝てしまったらしい。


「君も休みなさい。砂漠の旅は楽なものじゃない」
「まだ、続けるんですか?」
「ユバはね・・・砂なんかには負けないよ・・・この町はまだ、生きているんだ」


そう言って微笑んだトトにノエルは言葉が出なかった。
この町を襲う砂嵐が自然現象によるものではないと知っているから。クロコダイルに今までにない怒りを覚えた。


「・・・無理は、しないでくださいね」
「ああ、ありがとう」
「おやすみなさい」


枕投げで騒がしかった部屋は静まり全員ベッドに入り眠っている。ノエルも開いていたベットに横になり目を瞑る。そしてビビのあの笑顔を思い出す。
これから一行は反乱軍を止めるために来た道を引き返す。しかしそれが本当にやるべきことなのだろうか。反乱軍を止めれば紛争は怒らないだろうがただそれだけだ。1番にやらなければならないことは黒幕であるクロコダイルを止めることじゃないのだろうか。
ビビがそれをしようとしないのは自分の力ではクロコダイルを倒すことができないからだろう。最初は王女の護衛だったろうが一味は今彼女を1人の仲間として認めている。それなのに自分が一番つらく大変な思いをしているそんな時でも他人を心配してしまう、お人好しな性格の彼女。国民と同じように一味にも血を流してほしくない、傷ついてほしくないと思っているのだろう。


「どう切り出そうかな・・・」





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