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「アー・・・」
エルマルを出た一行はユバに向けて歩き続けるが砂漠の暑さにバテてしまっている。冬島育ちのチョッパーは自分では歩けず簡単に作ったソリに乗りゾロに引いてもらっている状態だ。
「おれダメだ、暑いの苦手だ・・・寒いのは平気なのにな」
「おめぇがモコモコしてっからだ。そのきぐるみ脱いだらどうだ?」
「この野郎!トナカイをバカにするのかァ!!!」
ウソップの発言に怒り人型に変化したチョッパーに今度はチョッパーを引いているゾロが怒りまたもくもくと進む。ノエルはそんな様子を最後尾で見ながら彼女もまた、静かに歩いていた。
「・・・・・・ビビちゃんはあまりこたえてねェみてェだな」
「・・・私はこの国で育ったから多少は平気」
「ノエルちゃーん!大丈夫かい?」
「寒いのに比べたら全然。ありがとう」
「お前は視てるだけで暑くなるよ・・・そんな真っ黒に包まって」
ただでさえ熱を吸収しやすい黒を身に纏いフードまでしっかり被っているノエルは見るからに暑そうだろうが、彼女の顔からは暑さは感じられなかった。
「見なきゃいいでしょ」
「嫌でも目に入るんだよ!」
「後ろ見なくていいから黙って歩きなさい!」
「はい・・・」
しばらくして今度は喉が渇いたルフィが水に手をかける。少しだけだと言うナミの言葉に返事をして水を含んだルフィの頬はぷくっと膨らみまるで顔が3つ並んでいるかのよう。それを見たナミとウソップにより殴られたルフィの口からはその水が全て吐き出されてしまった。そして始まる水の奪い合い。
「ケンカしないで!!余計な体力を」
「待ってて」
「ノエル、さん・・・?」
ビビの肩に手を置き彼女の前に出たノエルは静かに3人に近づきたった一言つぶやいた。
「いい加減にしなさい」
「ッ!!?」
動きを止めそのままピシッと固まったサンジ、ウソップ、ルフィの顔は青くなる。恐る恐る見たノエルの顔は笑顔だが目の奥は全く笑っておらず纏う空気はとても冷たい。3人にしか見えていないがその様子に仲間達も顔をひきつらせた。
「サンジ君とウソップはひと口ずつ飲みなさい。ルフィはなしよ」
「ええ!おれも喉かわいて」
「返事は?」
「はい・・・!!」
再び歩き出してすぐ、今度は弁当が食いたいと言い出すルフィ。だがユバまでの道のりを4分の1ほどしか進んでおらずここで食べてしまえば後が持たないだろう。
「半分行くまで我慢しなさいルフィ」
「そんなぁ・・・!」
「じゃあ次に岩場を見つけたら休憩しましょう?」
そんなビビの優しい提案にテンションの上がったルフィがじゃんけんをしようと言う。勝った人が全員分の荷物を持とう、と。勝ったのは言い出しっぺのルフィだった。
「重い・・・重いぞ、暑いし・・・」
「お前がじゃんけんで勝ったんだろ。黙って運べ」
「落とさないでよルフィ!」
ノエルはルフィのペースに合わせて隣を歩いている。サンジに半ば強引に預けられた自分の荷物と水を一つ持ち上げた。
「いいよノエル!おれが運ぶから!」
「自分の荷物くらい自分で運ぶわ。ほら、頑張って」
「・・・にしし!おう!!」
さっきまでだらしなく口を開けていたルフィが嘘のように笑いペースを上げて進み始めた。単純と言うかなんというか、ノエルがそう思っていると前にいたウソップから前方に岩場を見つけたとの知らせが入る。すると一目散に走って行ったルフィが慌てた様子ですぐに戻ってきた。
「大けがして死にそうな鳥がいっぱいいるんだ!!チョッパー来て治してやれよ!!」
「う・・・うん、わかった」
「鳥!?ちょっと待ってルフィさん、その鳥ってまさか・・・!!!」
気付いた時には遅かった。全員が岩場へと駆けつけるが荷物と一緒に鳥はいなくなっていた。ワルサギと言う旅人を騙して荷物を盗む砂漠の盗賊にルフィはまんまと引っかかってしまったのだ。
「あれは3¥3日分の旅荷なんだぞルフィ!!鳥なんかに盗まれやがって!!この砂漠のど真ん中でよりによって全員分の荷物をだと!!?水も食料も何もなくてどうこの砂漠を・・・」
ルフィの胸ぐらを掴み怒るサンジ。過去に飢えと言うものを経験しその辛さを知っているからこそだろう。その上この暑さで体力も消耗されいらだってもいる。
「だってだまされたんだから仕方ねェだろうが!!」
「てめェの脳みそは鳥以下か!!」
「なにをーっ!!!」
再び喧嘩を始めた2人を止めに入るのはここでもノエル。今度は彼らの頬を叩いた。
「落ち着きなさい。こんなことして荷物が戻ってくるわけじゃないでしょう」
「でもよ・・・!」
「ルフィ、身勝手な行動がどういう事態を招くのかをまず考えなさいと君には何度も言ったはずよね。お願いだからもっと慎重に動いて」
「ご、ごめん・・・」
叩いてしまった2人の頬に手を当て「ごめんね」と言ったノエルは岩場に座ったゾロの隣へ移動し自分もそこへ腰掛け煙草に火をつけると大きなため息と一緒に煙を吐き出した。
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