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ユバに向かう麦わらの一行は同日の昼、緑の町エルマルに上陸した。
「着いたぞユバ!!!いやーなんもねェなここはっ!!」
緑の町と言われるそこはつい最近まで緑でいっぱいの活気のある町だったと言うがそうだったと思わせるものが何もなく辺り一面砂で埋もれてしまっている。この国で一体何が起きたのか、歩きながらビビが話した。
「ここ3年、この国のあらゆる土地では一滴の雨さえ降らなくなってしまった・・・」
降雨ゼロなんてアラバスタでも過去数年あり得なかった大事件だがその中で一か所だけいつもより多く雨の降る土地があった。王が住む宮殿のある町『アルバーナ』だ。人々はそれを「王の奇跡」と呼んだが2年前のある事件で一転する。
王の命令だと言って国に運び込まれた大きな荷物。誤ってぶちまけられたことでそれが『ダンスパウダー』と呼ばれる緑色の粉だと言うことが明らかになった。
「『ダンスパウダー』が・・・!?」
「なんだ、知ってんのか」
「・・・別名は『雨を呼ぶ粉』」
「雨を呼ぶ粉!?」
簡単に言えば人工的に雨を降らすことのできる粉だ。粉を開発した国がその名の通り踊るように喜んだほど、アラバスタにとってうってつけの粉なのだがこれには大きな落とし穴があった。風下にある隣国の『干ばつ』だ。人工降雨はまだ雨を降らすまでに至らない雲を成長させて雨を落とすというもので、放っておけば隣国に自然に降るはずだった雨さえも奪ってしまうのだ。
それに気づいた国が戦争を始めたくさんの命を奪う結果になり、以来世界政府ではダンスパウダーの製造所持を世界的に禁止した。
「使い方ひとつで幸せも悪魔も呼んじまう粉か・・・」
「その『ダンスパウダー』が大量に運び込まれた時、国では王の住む町以外は全く雨が降らないと言う異常気候・・・!!」
王には身に覚えのない事件だったが宮殿には知らぬ間に大量のダンスパウダーが運び込まれてしまっている。気づいた時にはもう手遅れ、王が疑われないわけがなかった。
そこまで話したビビはその場に膝をつきそこにあった頭蓋骨を拾い上げると自分の額を寄せて今にも泣きそうな顔で言う。
町が枯れ人は飢えその怒りを背負った反乱軍が無実の国と戦い殺しあう。国の平和も王家の信頼も町も処して人の命までも奪いアラバスタを狂わせたのはすべてクロコダイル。
「なぜ、あいつにそんなことをする権利があるの!?・・・私は!!!あの男を許さないっ!!!」
ビビの悲痛な叫びにルフィ・ウソップ・サンジの3人が動く。少し離れたところにあった建物が爆音と共に崩れ落ち爆煙の中に彼らの姿があった。
「・・・・・・ったく、ガキだなてめェら・・・」
自分達の方へ戻ってくる3人に言ったゾロの横でノエルはビビを見ていた。唇を強く噛みしめている彼女のその表情は涙を我慢しているようにしか見えない。
本当なら声を上げて泣いてもいいくらいなのに彼女は決して涙を見せない。自分だけで抱えるのが辛いのならば「仲間」である自分たちに少しでも分けてくれればいいじゃないか。
「・・・さっさと先へ進もう。ウズウズしてきた」
ルフィの言葉で皆が前を向きユバへ向けて進み始める。それを最後尾で見つめるノエルはふと町を振り返り見回してまたビビを見た。
(大丈夫よ・・・)
君はこんな時でも他人を心配してしまうお人好し。強く心優しい君だからこそ仲間達は助けようと、一緒に戦おうとしてくれている。国も国民もそしてもちろん君も、必ず救われる。
君は1人じゃない、こんなにも近くに仲間がいる。
(私のやるべきことは・・・)
「ノエルー!何してんだ置いてくぞー!!」
その声にノエルもやっと歩き始める。
彼らのために自分がやるべきことを心に決めて。
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