雨のち、曇りのち、晴れ | ナノ


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「はァ…そりゃ惜しいことをしたが…まだおれにも活躍の場は残ってるわけだ。大丈夫!!この眠れる騎士が目覚めたからには君の安全は保障する」
「は〜〜〜〜〜〜〜〜っ寝ててよかった〜〜〜〜〜〜っ」


ウイスキーピークでは寝ていて状況を知らない2人にビビやナミが事情を説明するとサンジはサンジらしい、ウソップはウソップらしいことを口にした。それに続きルフィの「雪は降らないのか」発言に対して更に説明をするのだが男性陣はすっかりリラックスモードでサンジが作ったスペシャルドリンクを飲みながら楽しそうにしている。ビビがこの海をナメないことと言った矢先のことだ。


「いいの!?こんなんで!!!」
「いいんじゃない?」


彼らを指さして怒鳴ったビビだったが隣ではナミもドリンクを飲んでいて「シケでもくればちゃんと働くから」と彼女の分のドリンクをビビに差し出した。ノエルもその隣で同じようにドリンクを飲んでいて、彼女もまた楽しそうに男性陣の様子を眺めている。


「なんか・・・気が抜けちゃうわ・・・・・・!!」
「悩む気も失せるでしょ、こんな船じゃ」


笑って言ったナミの言葉にビビは目を大きくして騒ぐ彼らに視線を移す。それから微笑み空を見上げた。


「・・・そうね。ずいぶん楽・・・・・・」
「で、あんたは何でそんなに楽しそうなのよ」


ナミの隣で下にいるルフィ達を眺めているノエルに聞くとその視線がやっとナミの方へ向く。その顔はやはり楽しそうでどこか嬉しそうだ。


「ずっと大人たちに囲まれていたから嬉しいのよ」
「・・・なにが?」
「妹や弟が出来たみたいで」


ノエルの言葉に今度はナミも目を大きくした。2人に微笑みかけたノエルはまた視線をルフィ達に向ける。その横顔はやはり嬉しそうで、そしてとてもきれいだとナミとビビは言葉には出さなかったが心でそう思っていた。
ふとゾロが自分をじっと見ていることに気が付いたノエル。目が合い視線を逸らされてしまったが何か話したいことがあるのだろうと彼の元へと降りて行った。


「ゾーロちゃん」
「その呼び方やめろっつったろ!!」
「そう怒らないでよ。私のこと見てたでしょ?どうしたの?惚れちゃった?」
「お前はコックかよ」
「冗談よ。気になるのはこれかしら」


ノエルがゾロに差し出したのは自分の腰に付けている黒い鞘の刀だった。世界一の剣豪を目指しているゾロだ、同じ船に刀を持つ者がいて気にならないわけがなかった。
ノエルが持っている刀は「黒夜」という最上大業物の妖刀で、中でも妖気が強く扱いづらい物でこれをまともに扱える者は持ち主であるノエルと世界最強の剣士といわれている男くらいじゃないかと言われている。


「ッ・・・!」
「鞘からは抜かない方がいいみたいね」


それを手にしただけで顔をしかめたゾロを見てノエルは刀をゾロの手から離した。


「どれだけ強いんだ、お前は・・・」
「え?」
「あ、いや・・・いつ、手にしたんだ」


声に出てしまったのかとゾロは頭を掻いた。
自分は触れただけで気分が悪くなってしまうその刀を目の前の女は平然と持っている。使っている所を見たことはないが持っているんだ、それを武器として戦うのだろう。鞘から抜けば今よりも強い妖気が放たれるはず。それをこの女は扱うと言うのか。


「10年くらい前かな、この子に出会ったのは」
「10年ってお前・・・」
「まあ慣れよ、慣れ」


ノエルが笑って言えば「はぁ?」と拍子抜けしたような声を出す。それ以上、ノエルが刀について話すことはなかったがゾロは気になって仕方がなかった。
ノエルがどう戦うのか、どれほどの強さを持っているのか。そして自分が世界一の剣豪になる為には「あの男」と戦う前に彼女と戦わなければならないんじゃないだろうか、と。


「おい、みんな見ろよ!イルカだぜ」
「おお」
「わあっかわいい・・・」


全員がイルカに目を向けて笑う。青い空とエメラルドの海で片手にドリンクを持ち船に乗っているかを眺めるなんてなんてリゾート気分なのだろう。そんな時イルカが波音を立てて飛んだのだがそれを見た全員が声を上げた。


「デカいわ───っ!!!」


船の数十倍はあるだろうそのイルカが自分たちの船の方へ飛んでくる。「逃げろーっ!」という船長ルフィの声で全員が一斉に動き出す。
そんな時でもノエルはマイペースに笑っているのだ。





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