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反乱軍のリーダーがいる砂漠のオアシス「ユバ」を目指す一行を乗せた船はサンドラ河を渡る。日中は50℃になるという砂漠では強い日差しでやけどをしてしまう為全員がローブを羽織り上陸に備え準備をしていた。
「で?何をしてんだノエル。お前も上着羽織っとけよ」
「はーいはい」
荷物をまとめている仲間達をよそにノエルが一粒のチョコを空にかざしていた。
「ビー玉とかをそうするよな、普通」
「このチョコは最後の一粒なの。これから砂漠に入る私は大好きなこの子達を連れていけないからね、大事に食べなくちゃ」
「何言ってるかわからんわ」
そこに通りかかったルフィが足を止めてノエルをじっと見つめた。それに気づいたウソップが「狙われてるぞ」とノエルに教えるとチョコを下げてルフィに振り返る。
「なーにルフィ」
「いや、いつもと違うなーと思ってよ」
「ああ、こんな格好したことないもの」
自分の姿を改めてみたノエルが苦笑いをする一方でルフィはニカッと笑って言った。
「綺麗だな、ノエル!」
「ありが・・・え?」
「なッ!!?」
「ん?なんだよお前ら」
ルフィの口から出た意外な言葉にその場にいた全員が動きを止めてそちらを見る。ノエルの手からは大事に食べようと言っていたチョコがぽとりと落ちてしまっているが本人はそれに気づいていなかった。
「あー驚いた・・・」
「綺麗とかわかるんだな、ゴムのくせに」
「衝撃大きすぎて本人固まってんぞ」
「お前ら失敬だなこのやろう!!!」
この時ノエルが驚いていたのはルフィの発言自体ではなく、ルフィの発言にドキッとした自分に対してだったことをナミ達は知らない。いつもなら「ありがとう」と返していただろうに一瞬感じたあの感じはなんだったのだろう。
(暑さのせいだ、きっとそう)
頭の中でそう自己解決をしたところで大事なチョコが落ちていることに気付き「いやー!」と声を上げたノエル。そしてその横では上着を羽織ってしまった女性陣の姿に甲板を転がるサンジがいた。
「見て、目的地はここ!ユバという町」
「そこに反乱軍のリーダーがいるってわけか」
「そいつをぶっ飛ばしたらいいんだな!!?」
「ルフィ、最後まで話を聞きなさい」
「反乱軍は説得するの。もう二度と血を流してほしくないから・・・!」
そう言うが70万人の反乱軍が止まるのかとゾロが言うと眉を寄せたビビが着ている服をきゅっと握った。バロックワークスという組織が国に何をして国民がどんな目に合っているのか、ユバへの旅路ですべてわかる。
「止めるわよ・・・!!!こんな無意味な暴動・・・!!!もうこの国をB・Wの好きにはさせないっ!!!」
「ビビ・・・」
「砂漠越えの為の弁当は任せろ!!」
「うわっ楽しみっ」
「・・・・・・悪かった・・・」
そう言って笑う仲間達をノエルは何も言わず黙って見ていた。
「よしわかったビビ!!行こうウパ!!!」
「ユバね」
「ユバ!!!」
「そう」
もっと自分の周りを見てほしい。もっと頼ってくれてもいいんじゃないか。
そんな風に思いながら。
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