雨のち、曇りのち、晴れ | ナノ


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一行は急いで船へと乗り込んだ。
ビビは今まで調べたことと自身が生きて心強い仲間と共に国へ帰っていることが記してある手紙を王宮にいる父親に届けてほしいとカルーに手紙を託す。ビビの言葉に強く返事をしたカルーはアルバーナへ向けて走り出した。


「兄ちゃん!?」


カルーを見送った後でナノハナを出航した船では先ほど自分たちを助けてくれた男の話で盛り上がっていた。


「さっきの奴は・・・お前の兄貴なのか!?」
「ああ、おれの兄ちゃんだ」
「・・・チョコレート溶けてる」


男の名前は「エース」と言いルフィの兄だと知り仲間たちが驚いている中、ノエルだけは輪から外れて1人チョコレートをつまんでいた。


「まァ別に兄貴がいることに驚きゃしねェがよ、何でこの偉大なる航路にいるんだ」
「海賊なんだ。ひとつなぎの大秘宝を狙ってる。エースは俺より3つ上だから3年早く島を出たんだ」
「しかし、兄弟揃って悪魔の実を食っちまってるとは・・・」
「うん、おれもびびった!ははは」


エースが実を食べたのは海に出てかららしくルフィも知らなかったらしい。ルフィがエースが勝負をして一度も勝ったことがないらしく、この怪物並の強さを持つルフィも勝てないのかとナミもウソップも驚いていた。


「でも今やったらおれが勝つね」
「それも根拠のねェ話だろ」

「お前が、誰に勝てるって?」
「わっ」


手すりに座るルフィを突き飛ばしその場所に降り立ったその男は、まさに今話していたルフィの兄、エースだ。彼は仲間達に深々と頭を下げて丁寧にあいさつをすると唐突に言った。


「ルフィお前・・・うちの白ひげ海賊団にこねェか?もちろん仲間も一緒に」
「いやだ」


分かっていたと言うようにエースは笑う。その会話でウソップが彼の刺青についてそれは本物なのかと聞いた。


「ああ、おれの誇りだ」


背中のそれはあるだけで威圧感があり知っていれば近づくことを躊躇するだろう。誇りに思うことはいいがよくも隠さず上半身裸でいたものだ。エースは白ひげを最高の海賊だと慕っていて海賊王にならせてやりたいと話すがルフィは言うのだ。


「いいさ!だったら戦えばいいんだ!!」


白ひげという男を知ってか知らずか、きっとその男がどんな男であろうとルフィには関係がないのだろう。


「ところでよ、お前は何知らん顔をしてるんだ?ノエル」


ここまで黙ってひたすらチョコを食べていたノエルが顔を上げてエースを見る。手招きをする彼を見て1つため息をつくとゆっくりと歩み寄った。


「そうだノエル!何でエースのこと知ってるんだ?」
「知ってるも何も、おれとノエルは言葉じゃ言い表せない関係だぜ?な?」
「なにィ!!?」
「うぞだああああああ!!!」


ノエルの肩を抱き寄せて意地悪く笑うエースの言葉に全員が声を揃えて驚く。サンジにいたっては涙を流し鼻水を垂らし泣き叫んでいたが「そんなわけないでしょ」とエースの腕を払いながら否定すれば何の安心なのかまた全員で「よかった」と息を吐いた。


「この子バカだから敵だってのに私がいるところにちょくちょく来てたの」
「バカって言うなよ!わざわざ会いに行ってやってたんだろうが!」
「違うでしょう?エースが私に会いたくてたまらないから来てたんでしょう?」
「なッ!!」


ノエルが彼の両頬を挟んで顔を近づけて言えばエースの顔は赤く染まる。そんな2人は兄弟にも見えるが、会話を聞けばエースがノエルに想いを寄せていると言う風にも取れるだろう。
ルフィには分かっていないのだが、2人の様子に頬を膨らまし口をとがらせた。


「離せ!」
「なーに照れてるの」
「うっせー!おいルフィ、おれはお前にこれを渡しておきたかったんだ」


ずっと持っていろと言ってエースが渡したのは小さく折りたたまれた白い紙だ。


「なんだ紙きれじゃんか」
「そうさ、その紙きれがおれとお前をまた引き合わせる。いらねェか?」
「いや・・・いる!!」


ルフィの言葉にエースはまた笑うといつかのことを思い出すように口を開いた。


「できの悪い弟を持つと・・・・・・兄貴は心配なんだ。おめェらもコイツにゃ手ェ焼くだろうか、よろしく頼むよ」


エースの顔は確かに弟のことを思う優しい兄の顔だった。久しぶりに会ったしゆっくりしていけと言うルフィにエースは先を急ぐと言って自分のストライカーに戻っていく。
元白ひげ海賊団クルーでエースの部下であり今は「黒ひげ」と名乗る男がいるのだが、海賊船で最悪の罪である仲間殺しをして逃げ出したその男に始末をつけなきゃならない。それがエースがこの海を逆走している理由だ。


「え?おい、ノエル!?」


その話を聞いたノエルは船を飛び降りエースのストライカーに乗り込んだ。エースが何をしているか知らなかったわけではないが本人の口から聞いたことで心配になったのだ。


「嫌な予感がするの。止めたところで君が言うことを聞かないことは分かってる、けど・・・」
「そんな顔すんなよ」


心配そうにするノエルの腕を引き抱き寄せたエース。ノエルは自分の頬をエースの胸に寄せた。


「気を付けてね」
「ああ、わかってる」
「・・・死なないでよ」
「おれは死なねェよ」


体を離したノエルが背伸びをしてエースのおでこに唇を寄せた。


「おまえじないよ」
「にひひ!サンキュ!」


どうか無事で、また笑って会えます様にと願いを込めて。そして互いを見つめ合い笑いあうとノエルは仲間の元へ戻った。


「次に会う時派海賊の高みだ」
「またな───っ!!!」


そう言ったエースの姿はあっという間に見えなくなってしまう。ルフィはしばらく手を振り続けノエルも彼の消えた先をしばらく見つめていた。





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