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仲間になると決めたチョッパーはドクトリーヌに別れの挨拶をしに行っている。ルフィ達はそれを城の外で待っていた。
「おい・・・ノエル・・・」
「ん?」
「お前は何をしてるんだよ」
「・・・うん」
「うんじゃねェだろ」
人一倍寒がりなノエルは少しでも温かくいようと、唯一じっとしていたゾロの背中に身を寄せていた。
「ったく・・・で?お前はここまでどうやって登ってきたんだよ」
「・・・寝て起きたらここに」
「ふざけてんのかおい」
「寒いから寒いから」
動こうとするゾロの背中を掴み無理矢理座らせてまたくっつく。そんなノエルとゾロを見ていたのは雪のたまに乗りながら遊んでいたルフィだ。
「いつかちゃんと話すから」
「あ?」
「だから今は何も聞かないでやってよ」
声が小さくない自分の背中に額をつけて黙るノエルにそれ以上聞いてはいけない気がしたゾロはそのあとは何も言わなかった。
するとそんなノエルにぐるぐるっと何かが巻きつく。ぐるぐる巻きつく何かなんて船長でゴム人間のルフィ意外あり得ないのだが。
「こっち来いノエル!」
「ちょっ!だから!」
「おいルフィ、そいつはモノじゃねェんだぞ」
「わかってる!」
毎度毎度危ないからやめなさいと怒るがルフィは笑ってそのままノエルを抱きしめた。
「これなら寒くねーだろっ?」
「身動き取れないけどね」
「にっしっし」
「はぁ・・・いつもありがとう」
ノエルの言葉に嬉しそうに真っ白な歯を見せて笑うルフィの胸にノエルは頭を預けた。
思えばここに来てからルフィはなにかとくっついてくる。昔は自分を姉のように慕ってくれていたルフィだから姉がとられてしまうとでも思っているのかとノエルは勝手に考えていた。
しばらくしてチョッパーが姿を現したのだが、彼は何故か包丁を持つくれはに追われているではないか。
「みんなソリに乗って!!!山を下りるぞぉ!!!」
ロープウェイの準備を終えたウソップとルフィもそれには目を見開いた。ソリでなんてどこから下りると言うのか。しかしこの時の彼らには考える余地もなくとにかくチョッパーの引くそりに乗り込むしかなかった。そして別れを惜しむ間もなくくれはに挨拶をする間もなくそのまま城をあとにした。
山を下りた後もそのまま走り続けていたのだが後ろから聞こえた砲撃音にソリは止まる。
「ウオオオオオオオオ」
振り向けば雪国にはふさわしくないそれはとても幻想的で今までに見たことのない大きな大きな"桜"が咲いていた。
自分に夢を与えてくれた父とその夢の手助けをしてくれた母がまるで行ってらっしゃいと言ってくれているようだ。チョッパーはその桜に向かってずっと吠え続けていた。
無事に島を出た一行は夜桜を背に宴を始めていた。
見えなくなりつつある島をずっと眺めているチョッパーをよそにクルー達はどんちゃん騒ぎ。しかもチョッパーが医者であることを知らずに勧誘していたことを知ったナミは呆れかえっていた。
「なぁノエル」
「ん?なーに?」
ノエルはチョッパーを膝に乗せて抱きしめ暖をとっている。
「あいつらはいつもこんなんなのか?」
「そうね。チョッパーも慣れて行かなきゃね、仲間なんだもの」
「仲間・・・!」
「そう、仲間」
「いひひっ」
そう2人が話しているなか、ルフィと一緒に鼻割りばしをしていたウソップが酒を手に持ち皆の真ん中に立つといつものように仕切り始めた。
「よーしてめェらみんな注目───っ!!!えーここでおれ達の新しい仲間船医トニートニー・チョッパーの乗船を祝し、あー改めて乾杯をしたいと思う!!」
ゾロとサンジはケンカを始めるし、ルフィはもっと肉を出せと騒ぎたて、カルーは飲み過ぎて酔っぱらいそれを心配するビビ。もうウソップの話を聞いているのかいないのか、ナミもノエルもそんなみんなを笑って見ている。
「おれさ・・・・・・」
「うん?」
「おれ・・・こんなに楽しいの初めてだ!!」
自分も鼻割りばしをやりながら涙を流し嬉しそうに笑うチョッパー。
「新しい仲間に!!!乾盃だァア!!!!」
「カンパーイ!!!」
ウソップの言葉に続き全員がそう叫び皆が笑顔でグラスを持った手を高く上げた。
船はこれから最高速度でアラバスタへと進んでいく。そんな麦藁海賊団を見送るように、船の後ろでは綺麗な満月と美しく花開いたピンクの桜が浮かんでいた。
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