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先に部屋に戻っていたノエルは毛布にくるまりまた紅茶を飲んでいた。窓からは綺麗な満月が見えている。そこへぞろぞろと入ってくる男達とそれに混ざってナミやビビも部屋に戻ってきて、ナミはそのままベットへ寝かされた。
サンジやドルトンの治療を終えたくれはは城の武器庫のカギはないかとドルトンに訪ねた。そのカギはワポルが常に携帯していたらしくずっとそうならワポルと一緒に空へ飛ばされてしまったと言ったのだが、そこで口を開いたのはナミだった。
「うちの船員の治療代なんだけど・・・タダに!!・・・それと私を今すぐ退院させてくれない?」
無理なお願いだとわかって言っているのかと、くれはがそれを承諾するわけがなく莫大な報酬とあと2日は安静にと言われてしまう。ビビもナミの体を心配するがナミは笑ってあるものを取り出した。
「武器庫の鍵、必要なんでしょう?」
そう言うナミの顔は魔女にも負けず劣らずの悪い顔。ワポルからスッたのだと笑うナミに流石のくれはも呆れ顔でその鍵を受け取った。
「いいかい小娘、あたしはこれからちょっとした二用事があって部屋を開けるよ。奥の部屋にあたしのコートが入ってるタンスがあるし、別に誰を見張りにつけてるわけでもない。それに背骨の若僧の治療はもう終わってるんだが・・・いいね、決して逃げだすんじゃないよ!!」
そう言い残し手の空いている男たちを引き連れて部屋を出ていくドクトリーヌに、ノエルは紅茶を口にしながら素直じゃないなと笑った。
「・・・コート着てサンジ君連れて、今のうちに逃げ出せってさ・・・」
「私にも・・・そう聞こえた」
のんきに笑うノエルに対しナミとビビは呆れた様子。その横でドルトンは首をかしげてその様子を見ていた。
「じゃあ行きましょうか」
「そうね・・・ほらノエルも行くわよ!」
「はいはい」
気を失ったままのサンジは女3人でも運ぶのは容易じゃなく、結果引きずっていくことに。ノエルが能力を使えば浮かせることもできるのだが、引きずられるサンジに心の中で謝りながらノエルは2人について行った。
「おれは・・・お前達に・・・感謝してるんだ!!」
「・・・・・・チョッパー?」
外へ出るとちょうどルフィの勧誘にチョッパーが返事を出しているところだった。
「だっておれは・・・・・・トナカイだ!!!角だって・・・蹄だってあるし・・・・・・!!青っ洟だし・・・・・・・・・!!!そりゃ・・・海賊にはなりたいけどさ・・・!!おれは人間の中までもないんだぞ!!おれなんかお前らの仲間にはなれねぇよ!!!・・・だから・・・お礼を言いに来たんだ!!!」
そう叫んだチョッパーは涙をためて悲しそうに俯いた。チョッパーの過去を知っているノエルもくれはから話を聞いたナミも想像できただろう。おそらくそれがチョッパーのルフィへの答えなんだと。
すると俯いていたチョッパーが静かに話す。
「誘ってくれてありがとう・・・おれはここに残るけど、いつかまたさ・・・気が向いたらここへ」
しかしそれはルフィには通じなかった。城の上に浮かぶ満月にルフィは両手をあげてめいいっぱい叫んだ。
「うるせぇ!!!いこう!!!!」
そんなルフィの言葉に顔を上げたチョッパーは目を丸くした。その目にはあふれんばかりの涙が溜まっている。
「うるせェって勧誘があるかよ・・・」
相変わらずの船長にナミやゾロは呆れウソップやビビは笑っていた。ルフィの言葉は少し雑で強引だったけれど、チョッパーにはこういうほうがよかったのかもしれない。
「お゛お゛!!!!」
ルフィの言葉はしっかりチョッパーに届いていた。溜まっていた涙を流して力強くそう返事したチョッパーに駆け寄ったノエルはそのまま抱き上げると優しく笑ってぎゅっと抱きしめた。
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