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静まり返る城の外で背を向けているチョッパーがくれはとノエルを呼んだ。その小さな背中は少し戸惑っているようにも見える。
「あいつ・・・俺のこと、仲間だって・・・」
あいつとはルフィのことだ。自分の大事な人のドクロを守り、自分を仲間だと言ってくれたそんなルフィの言葉がチョッパーの耳にずっと残っていた。
やがて城の上から聞こえた爆発音に3人が城の上に目をやるとてっぺんから顔を出したのはワポルだった。
「ドクトリーヌ・・・ドラム王国が・・・・・・!!」
「この国は・・・・・・ドクロに負けたのさ。ヒッヒッヒ」
そこに出てきたルフィがなにを言っているのかは聞こえてはこないが、その両手がぐんぐんと後ろに伸びていくのが見えた。
「なぁ、ノエル」
「んー?」
上にいるルフィを見つめたままのチョッパーがノエルに言った。
「あいつ・・・すげぇな・・・」
「すごい?」
「うん・・・なんかわかんないけど・・・とにかくすげェって・・・思った」
ノエルはチョッパーを撫でてやる。そこに聞こえてきたのはわこるの叫び声とルフィの声。この国はきっと生まれ変わる。ノエルはそう思いながら風に揺れるドクロを見つめた。
「おい引っぱるな」
「よし、援護するぞ!!」
そこへ聞こえてきた聞き覚えのある2つの声。突如現れた扉から出てくるゾロとその後ろで怯えているウソップだった。
「・・・ノエル!」
「え、ノエル?」
ゾロの声で安心したウソップが顔を覗かせて自分でもその姿を確認するとやっとゾロから離れた。
「・・・お前ここまでどうやってきたんだよ」
「え?あ、そうだな」
「ん?んふふー」
ゾロの言葉にウソップはそう言えばとノエルを見る。まだ能力のことを何も話していない彼らに「風に変身してひとっ飛び」なんて言えるはずもなく、何とかごまかそうとノエルが口を開こうとした時だ。
「おりゃあああああああああああああ!!!」
突如聞こえた声に3人が上を見ればそこをめがけて飛んでくる一つの影。ノエルは静かにその場を離れた。
「なにいィーッ!!!?」
「ルフィ!!!」
「あ、ゾロ、ウソップ」
大声と共に勢いよく飛んできたのは毎度お馴染船長のルフィだ。途中でゾロとウソップだと気づくも止まれるはずもなく、ルフィはそのまま突っ込み2人は見事に巻きこまれてしまった。
「なにしてくれてんだてめェっ!!!」
「お前もなに1人助かってんだノエルー!!」
「なーんだ、その服何か見覚えがあったからまたあいつの仲間かと思ったよ。お前らも登ってきたんだな」
いつものように悪びれもなく笑い飛ばすのがこの船長だ。ノエルもその横で笑いながら、話が逸れたと内心ほっとしていた。
「ウソップ、お前登れねェとか言ってなかったか?」
そう言うルフィにやっと立ち上がったウソップが冒険話を始めるのだが、それはあとから顔を出したビビによってさえぎられることとなってしまった。
「ナミさんとサンジさんは無事なの!?」
「ああ、元気になった」
「よかった」
ルフィが笑顔で言えばビビも安心したように笑う。その後ろで冒険話を続けるウソップの声はおそらく誰にも聞こえてはいないだろう。
「──で?お前は城のてっぺんで何してたんだ」
「王様をブッ飛ばしてたんだ」
ルフィがそう言ったのはちょうどドルトンが顔を出した時だった。
「・・・じゃあやはり・・・さっき空の彼方へ飛んで行ったのはワポル・・・・・・!!あとの2人はどうしたんだ!!?」
「トナカイがぶっ飛ばした」
簡単でなおかつあっさりとしたルフィの答えにドルトンはまた驚き、そして考えていた。
決して弱くはないワポルとその手下を倒したのが目の前にいるその少年とトナカイだなんて。
「・・・あのワポル達を・・・・・・トナカイ!?」
ふと視線を感じたドルトンがハッと振り返った先には、木の陰に隠れているつもりのチョッパーがじっとこちらを見つめている。ドルトンはその青い鼻を見ていつかのことを思い出した。
「君は・・・あの時の・・・!?」
「(あ・・・・・・!!)」
それを思い出したのはドルトンだけではなくチョッパーも同じ。一緒に戦っていてくれたのかとドルトンはチョッパーに向かって土下座をした。
「ありがとう、ドラムはきっと生まれ変わる!!!」
その行為の意味をおそらくわかるものはいないかもしれないがチョッパーにさえ伝わってくれればそれでいい。
ノエルは土下座をしたままのドルトンや隠れたままのチョッパーを見て微笑むと「寒い寒い」と呟きながら1人城へと戻っていくのだった。
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