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目を覚ましたノエルは自分にかけられていた毛布にくるまり、声の聞こえてくる隣の部屋に入った。そこには物陰に隠れているチョッパーとなぜか頭から煙を出しているサンジとルフィ、それからナミとくれはの姿があった。
「・・・何してるの?」
「ノエル!」
「ッノエルちゅわあああん!!」
サンジはすぐにノエルに近寄り肩を掴むとじっと顔を見つめた。
「ん?」
「顔色良くなった・・・もう大丈夫なの!?俺心配したんだよ!?」
「もう大丈夫よ、ありがとう」
そう微笑むとサンジはまた目をハートにしてノエルに抱き着こうとするのだが、今度はそうなる前にルフィがノエルをひっぱり自分の腕に収めた。
「お前はそうやってすぐノエルにくっつくなよ!!」
「あァ!?お前はどうなんだよ!!」
「おれはいいんだ!」
「うるさいよお前達!!!」
くれはの一喝でおとなしくなる2人だったが、物陰に隠れていたチョッパーを見つけてまたそれを追いかけていく。更にそれを追いかけて行くのはまさかのくれはだった。
「おとなしくしててほしいわ・・・」
「元気で何よりじゃない」
そう笑い開けたままになっている扉を閉めようとノエルが動こうとすると、何とかルフィとサンジから逃げてきたチョッパーが部屋に戻ってきた。
「ノエルは座ってていいぞ!それにお前もちゃんと寝てろよ!」
きょろきょろとあたりを見ながら2人がいないことを確認するとゆっくりと扉を閉めてくれた。
「よかった、ナミちゃんもよくなってるみたいで」
「ええ、熱もほとんど引いたみたい」
「でも寝てなきゃだめだ」
ドクトリーヌの薬はよく効くからと説明をしてくれるチョッパーにナミがありがとうと言うと彼はピタリと動きを止めた。
「あんたが看病してくれたんでしょ?」
「う・・・!!うるせェなっ!!に・・・人間なんかにお礼を言われる筋合いはねェ!!ふざけんな!!」
と言葉では怒っているが顔は笑ったり怒ったり忙しそうだ。
「感情が隠せないタイプなのね」
「かわいいでしょう?」
ノエルは話しながら勝手にティーポットを取り出し勝手に紅茶を入れて椅子に膝を抱えるように座った。
「・・・お前も海賊なのか・・・・・・!!」
「ええ」
「ほ・・・本物か?・・・・・・!!」
「本物よ。ノエルも一緒に船に乗ってるわ」
「え?」
「わけありでね」
質問をしながらそーっとナミに近づいてちょっとだけナミに触れてみるチョッパーをノエルは笑って見ていた。
「海賊に興味あるの?」
「ねぇよバカ!!ねぇよ!!!バカ!!!」
「わかったわかった、ごめんごめん・・・でも・・・じゃあ、あんたも来る?」
「お!!?」
にっこり笑ってそんなことを言うナミに、チョッパは驚き過ぎて目を丸くし喋らなくなってしまった。
「・・・・・・だいたいお前・・・おれを見て恐くないのか・・・・・・!?トナカイなのに2歩足で立ってるし喋るし・・・・・・青っ鼻だし・・・」
だんだん小さくなる声にノエルはチョッパーを抱き上げようとしたが再び現れたルフィとサンジにチョッパーは悲鳴を上げて部屋を飛び出して行ってしまう。それと入れ替わりにくれはが戻ってきた。
「感心しないねェ小娘・・・あたしのいない間に許可なくトナカイを誘惑かい?」
「・・・あら、男を口説くのに許可が必要なの?」
そう言うナミの言葉にくれはは声を上げて笑うがふと目を閉じると静かに話した。チョッパーの心には深い傷がありその傷は医者でも治せない大きな傷なのだと。すでにその話を聞いていたノエルは椅子に膝を抱えて座り直すと顔を伏せた。
「この世に生まれた瞬間に・・・親に気味が悪いと見離された・・・『青っ鼻』だったからさ」
生まれたての子供が常に群れの最後尾を一人離れて歩いていた。そしてある日食べてしまった悪魔の実のせいでチョッパーはいよいよ化け物扱い。人型になって人里に下りてもそれは変わらなかった。
「何が悪いのかわからない、何を恨めばいいのかもわからない。ただ仲間がほしかっただけなのにバケモノと呼ばれる。もうトナカイでもない・・・人間でもない・・・あいつはね、そうやって・・・・・・たった一人で生きてきたんだ・・・」
そんなチョッパーの心を癒すことができるか。そう問われたナミは黙ってくれはを見る。
「あいつが心を開いたのはとあるヤブ医者と・・・・・・お前だけだったねェ、ノエル」
「え?」
どうしてノエルが?と言うようにナミがそっちを見るが、当の本人は何も言わずに微笑むだけだった。
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