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天候は雪。普段なら異常なくらいの防寒をしているノエルが誰よりも薄着でナミの看病を続けていた。それを見守りながらサポートしているのがサンジとビビだ。
「ノエルちゃんはずっと何をしてるんだ?」
「わからない・・・でも、40度あったナミさんの熱が39度で止まってるの」
傍から見ればただ目を閉じてナミの手を握っているだけ。だがナミの熱は39度以上上がることはなく呼吸も安定しているのだ。一体2人の間に何が起きているのか、クルー達は気になりながらも本人には聞けずにいた。
「ノエルさん少し休憩を・・・!!?」
「!」
ビビが声をかけたのとほぼ同時、船が大きな揺れに襲われた。急なそれにバランスを崩したノエルを支えたのは羽を広げたカルーだった。
「クエッ!」
「ありがとう」
「なんなのこの揺れはっ!!!」
「しっかり舵とれよ!ナミさんに何かあったらオロスぞてめェらァ!!」
揺れと振動がナミに響かないようにサンジが器用にベットを持ち上げて支える。揺れが収まるとサンジはナミのことを2人に頼み部屋を出て行った。
「ノエルさんこれを着て。風邪をひいてしまうわ」
「さっ・・・」
「ノエル・・・さん?」
「ッ寒い・・・!!」
「きゃっ!!?」
どれほどナミを心配していたのだろう。今の揺れで一時集中が切れたノエルは急に寒さを感じビビに抱き着いた。それに驚きながらビビが上着を羽織らせると「人肌がいちばんあったかい」と言ってさらにぎゅうぎゅうとビビを抱きしめるノエル。そんな彼女にビビはおかしくなり口を押さえて笑っていた。
一方外ではルフィ達が銃を持った武装集団に囲まれ、船は占拠されていたのだ。
「おれ達はドラム王国へ行きたいのだ。永久指針、もしくは記録指針を持っていないか!?」
そう問うのはカバのような被り物を身に付けたずんぐりむっくりとした男。サンジが目当てのものはないと伝えルフィが帰れと言えば、その男は何を思ったのか小腹が空いたとメリー号の一部をかじったのだ。
「な!!?」
「なんだあいつァア!!!?」
「おれ達の船を食うな!!!」
これには船長のルフィが黙っていない。止めようとするルフィに男の部下が銃を向けるがルフィはそれを殴りそれを合図にこの狭い船の上で戦闘が始まってしまったのだ。
次第に部屋の外がうるさくなってくる。ビビはナミやノエルの事を心配しながらも外の様子を気にしていた矢先に聞こえてきた一発の銃声。
「銃声・・・・・・!?カルー!!ここをお願い!すぐ戻るから!!」
「グエッ!!」
ビビが部屋を出たのを確かめてからノエルは頭を押さえその場にへたり込む。
「・・・・・・クエー・・・」
「大丈夫よ、ありがとう」
ノエルを心配したカルーがツンツンとくちばしでつつく。そんなカルーに笑ってみせると優しく撫でた。
「・・・外、静かになったね」
銃声も騒ぐ声も聞こえなくなるとサンジとビビが部屋に戻ってきた。
「おかえり、大丈夫?」
「ええ」
「船を一部食われちまったけどな」
「・・・ん?」
「ナイフも食ってたな、雑食か」
「痛い痛い」
そんな話をしながらもノエルはしっかりとナミの手を握っていた。
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