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だんだんと人の声が消えいき町がやっと静かになったころ、ノエルは新しい気配を2つ感じ取っていた。今度は麦わらの一味は絡んでいないようだが、ゾロやナミ以外もそろそろ目を覚ましてもいいころだろうとノエルは再び町の中へと入って行った。
「──で?10億の恩賞を約束してくれるの?護衛隊長。私達に助けを求めなきゃきっと・・・王女死ぬわよ?」
見つけたのはナミとゾロ、そして町長と名乗っていた男だ。
名前はイガラムといいアラバスタ王国の護衛隊長。ここまで船に乗せてきた水色の髪の女がアラバスタ王国の王女、ネフェルタリ・ビビ。この2人が組織に潜り込んでいたことが社長にばれた今、この2人の命が狙われている状況だ。
「私のような一兵隊長にそんな大金の約束は・・・!!!」
「ん?まさか一国の王女の値段はそれ以下だって言うの?」
「!!!・・・・・・!!!」
「出せ」
そんな状況の中、何故彼がナミに脅されているようなことになっているのかというと、「王女の命を守りアラバスタ王国まで送り届けてくれれば莫大な恩賞を渡す」とイガラムがゾロに頼んだのを運悪くナミが聞いていたのだ。
可愛い顔をしてなんて恐ろしい子なんだと、話を聞きながらノエルは顔を引きつらせていた。
「ならば、王女を無事に送り届けてくださるというのなら!!王女に直接交渉していただければ確実です!!!」
「・・・まず先に助けろってわけね」
「こうしている今にも!王女は奴らに命を!!!」
「わかったわ、おたくの王女ひとまず助けてあげる」
仕方ないかとため息を着いたナミの目がとらえたのはゾロの姿。行って来いと言うナミの言葉に即答で拒否するゾロにナミはさも当たり前のように自分のお金は自分のものだが自分の契約は一味全員の契約だと言い放った。
これにはノエルも笑ってしまいゾロとナミの2人はやっとノエルに気付いた。
「ノエル!」
「ちゃちゃっと行ってきたら?ゾロちゃん」
「そう言うお前が行け!つうかやめろその呼び方!!」
「あらやだ、女1人を戦場に出す気?男としてどうなの」
「お前ら・・・!!」
「なによ、ちょっと斬ってきてくれるだけでいいのよ!」
「おれは使われるのが嫌いなんだ!!あのアホコックと違ってなぁ!!」
その横をたくさん食べて真ん丸になったルフィがべんじょとつぶやきながら通り過ぎていく。そんなルフィを微笑みながら見送っている間にナミに言い負かされたゾロが悔しそうに怒りながら助けに向かって行った。
「面目ない・・・・・・!!!」
「・・・・・・!」
「私にもっと力があれば王女をお守りできたのに・・・!!」
「大丈夫よ、あいつはバカみたいに強いから」
「・・・王女にもしものことがあったら・・・王国はもう終わりだ!あの方は生きねばならん・・・・・・!!」
それまで笑っていたナミがじっとイガラムを見る。ノエルは煙草に火をつけナミとイガラムの話を聞きながらイガラムの手当てを始めた。
「何で正体もわからないようなボスの言うことをみんな聞くのよ」
「バロックワークスの最終目的は理想国家の建国。今のこの会社で手柄を立てたものには後にボスが作り上げる理想国家での要人の地位が約束されるのです」
「なるほど」
「・・・ん?」
「え、なに?どうしたの」
イガラムの手当てをしていたノエルが急に振り返りさっきルフィが歩いて行った方をじっと見る。トイレに行ったはずのルフィはどうやらゾロといてなぜだかルフィからは少しだが殺気を感じたのだ。
「ちょっとルフィのところ行ってくるからあとよろしく」
「どうしたのよ」
「んー・・・嫌な予感がするの」
あとの手当てをナミに任せノエルは2人のところへ急いだのだが、見つけた時にはルフィがゾロに殴り掛かったところ。
「殺す気か!!」
「ああ、死ね」
そして始まった2人の勝負。助けるはずのビビもビビを狙うバロックワークスの2人も呆気にとられている。ノエルは煙草をひと口吸ってそのまま咥えると2人のことはそのままにビビの護衛に付くことにした。
「今度はなんだ」
「なーにー?戦えるの?このおん、な・・・!?」
何も言わずただ煙草の煙を吐き出したノエルが2人を見据えると彼らの顔色が悪くなり体が震え始める。その後はノエルが手を出すことなく、ルフィとゾロの勝負に巻き込まれ吹き飛ばされていった。
「あなた達、どうして私を?」
「その話はあとで」
今はバロックワークスを、と思いボロボロになりながら戻って来た2人に向き直ったノエルだったが自分が手を下すまでもなく2人はゾロとルフィによって戦闘不能にされてしまい、その場はゾロとルフィ2人の戦場になってしまったのだった。
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