△ 夢百合草 14
食べ盛りの雪彦におかわりを盛りながらも、心配なのはリヴァイさんのことだった。
「雪、あの人あれで足りてると思う?大丈夫かなぁ」
「足りなかったら出てくるだろ。心配だったら見てくれば」
「うーん……それとも口に合わなかったりして…」
何度かそうして台所をうろうろする私を雪彦は面白そうに眺めていた。
結局踏ん切りがつかず、雪の言うように何かあれば部屋から出てくると思い直した。
何度か襖が開いていないか伺ったけれど、客室は至って静かなものだった。
食事の片づけをした後、水を見てすっかり忘れていたあの人の濡れた服を洗わなくてはと思い出した。
雨も降る心配もなさそうだし洗って外に干しておこう。
脱衣室からは貸した着物で出てきたのだからそこに置いたままになっていると思い、浴室へと向かう。
浴室と脱衣室へと向かう引き戸を開けると、脱衣室の棚の木枠に丁寧に干されている彼の服が目に入った。
思わずその光景に目を見張った。
彼の洋服全てがしっかりすぎるほどに綺麗に濯がれている。
木綿のような手触りの白い薄手の中衣のものと、その上に来ていた茶色い上衣。
袴と股引の間の様な、白いぴったりとした服は、確かお姉さん方が洋袴と呼んでいたものだ。
その服全てが綺麗に皺までピンと伸ばされていて本当に驚いた。
男の人なのに丁寧な人だ。
丁寧、という言葉は正しいのだろうか。
初めに顔を見た時の彼の威嚇的な瞳を思い出す。
神経を尖らせているような感じにも見えたけど家に着いてからは少しその印象も変わった。
疲れていることと具合が悪いこともあるんだろうか。
警戒心が強そうで疑り深そうな気配もあった。
体調がよくなったらあの鋭い瞳ももう少し柔らかくなるんだろうか。
脱衣室は風通しも悪いの外に干そうと思い、その服をひとつひとつ手に取るとしっかりと水切りもされていた。
まだ乾いてはいないけれど私が洗い直す必要もない程砂も海水も洗い流せたようだ。
丁寧というか、この感じだと小さいことも気になる性格なのかもしれない。
父も弟もこんな風には家事は出来ない。
洗濯なんて私と母の仕事と思っていることもあるだろうけど。
西洋の男性は家事もするんだろうか。
彼ももしかして食事とかも作れたり?
いいなぁ、男性が家事をしてくれるなんて。
私も今の内に雪にもご飯の作り方でも教えておくのもいいかもしれない。