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 ロスマリナス 17

ふわりと、今までとは違う香りが手に持ったカップから漂った


どこか
甘い果物のような


それは二度目にあの女から渡されたハーブだった
多めにもらった一度目の葉に少しだけ混ざっていたようだ


その香りが鼻孔をくすぐる

初めて嗅ぐ香りなはずなのにどこかで嗅いだことのあるような…ひどく懐かしい気がした








その香りがする液体を口に含んだ瞬間

忘れていい、と振り絞るようなあの女の声が頭に響いた



…忘れろ?

……何を?



はっきりとその言葉も思い出せるのに
その前後に何があったのか、どんなに記憶を探っても分からない

その声だけが切り取られたように浮かんで消えた



こんな記憶は自分にはない



なんだ…いまのは








ハンジはカップを持ったまま動かなくなった俺を横から見ていたが、不意に身を乗り出してもう一度だけ俺の顔を覗き込んだ



何も言わず、その瞳には特に何の感情も映っていないように見えたが



本当に、覚えてないの?
とだけ呟いた



  


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