△ アリビンゲーブ 60
ぱたた、と一時は引いた筈の涙腺が緩むのを感じた。
顎に添えられた彼の手が、
涙に気付いて優しくそれを拭う。
喉が熱い。
胸が、熱い。
兵長。
あなたのことを、このまま好きでいていいんですか?
…諦めなくて、いいんですか。
「……返事は、二つに一つだ」
言葉とは裏腹に、彼の瞳は優しさを含んでいる。
私の涙がどんな意味なのか、彼には既に分かっているはずなのに。
自分でも不純な動機だと思う。
命懸けの恋だと分かっている。
それでも、この人は諦め切れない。
「すぐに…追い付きます…」
涙と共に自分の想いが溢れるようだった。
彼の頬を包み込むように触れると、前回の様に腕をぐっと掴まれて彼の首に回される。
彼のムスクの香りが鼻を掠めた。
そのまま、熱くて深いキスを交わす。
がっしりと上半身を掴まれ、彼のいいように口づけられる。
「ん…っ」
心も、身体も、彼の魅力に抗えない。
はぁ、とやっと口を離すと、耳元で彼が囁いた。
「昇ってこい、エマ。」
「…っ、はい」
体がゾクリと波立つ。
「……俺のとこまで」