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 アリビンゲーブ 58

…?

想像していた言葉とは違った。
まだ私がここにいるのを咎めているわけではない、らしい。
兵長の指が頬を伝い、顎のラインをなぞる。

それだけのことなのに、愛撫を受けたような気になってしまう私は本当に救い様がない。
触れられた部分から皮膚を通して、
感情が全て伝わればいいのに、と思う。

私の想いも、彼が考えている事も、
全てお互いに伝わればいい。
そうすれば。
そうすれば、私は…。


「エマ…お前は、どう思っている」

自分の考えている事が通じたかと思い、一瞬どきりとした。

「え…?」

私がどう思っているか…?
何を?
兵長、を?
そんなの、決まりきっている。


「分かっているかも知れねぇが、俺は色恋沙汰は得意じゃない。」


兵長は至って冷静に言葉を紡いでいく。
こんな風にこの人と向き合うのは、初めてだ。

「ただ、お前をどうすればいいか分からない。
…お前は、どうしたい」

つ、と彼の指が唇に触れる。
ぴくりと背中が反応してしまう。

自分に対しての質問だと分かってはいたが、その声色は彼自身にも問いかけているような気がして、声を出すことが出来なかった。
何より、彼の私に対しての言葉を聞けるのは今しかないと感じた。

何もかも見透かしてしまいそうなその瞳には私が映り、その内側もきっと私を映し出している。

兵長は、私を邪見にしようとは思っていない…?
しかも、この話の流れだと、
まるで…。
高望みしてしまう。
勘違いしてしまう。

突き放すつもりなら、期待させないで…。


「…俺にはお前を縛る権利も無い。
ましてや、お前を危険な目に合わせる気もねぇが…」


そう言うと彼は言い淀み、眼を逸らしてしまった。

私はその言葉を聞いて、目を見開いた。
なんだか自分の都合の良いように聞こえてしまう。

私の耳がおかしい?
兵長が、私を危険な目に合わせたくない?
あの兵長が、まさか私を心配している?

彼の真意を聞きたいとは思ったが、まさかこんな言葉を聞けるとは思っていなかったので、これは夢かとさえ疑ってしまう。



  


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