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 アリビンゲーブ 56

どれくらいの間そうしていたのか、時間の感覚はとうに無かった。
…少なくとも私には。

いつのまにか深いところまで落ちていたようだ。

…頬を優しく撫でられた、幸せな夢を見た。
遠い意識の中で、彼が静かに部屋を出て行く音を聞いた気がした。

は、と目を覚ますと既に兵長の姿は無かった。
窓の外は薄暗く、今が朝なのか夜なのかも検討もつかない。

私、どれくらい寝ていた…?
ベッドからまだ重い体を起こして、まだ自分が全裸だったことに今更赤面する。

あれから何度抱かれたのだろう。
途中から何も考えられなくなり、覚えているのは温かい兵長の手の感触だけだ。


ふと自分の体に赤い印が散りばめられているのが目に入った。

「えっ…」


上半身にも、下半身にも…。
体中至る所に彼の唇の軌跡が残る。
一つ一つつけられた記憶はない。
頬が熱を帯びていくのが自分でも分かった。
それにも気付かないなんて…
一体自分はどれくらい乱れていたのか。

胸にも、脚の付け根にも、腿にも。
間違いなく彼が触れ、キスをされている。

途端に自身の体が彼のものだという感覚に襲われた。

…自分の体なはずなのに。
それは身体が、兵長という一人の男に忠誠を誓った印のように思えた。

跡をつけられた自分の肌をなぞってみると、確かに兵長に全身を愛撫された覚えがある。
とくんとくんと兵長を思い返す度に体が火照っていく。


…とりあえず、
ふ、服を…。


そこまで考えて、衣服を全て浴室に置いて来た事を思い出した。


びしょ濡れのはずだ、
乾かさなくては…。

ベッドから足を降ろしかけ、ふと部屋の隅に私の団服とブーツが小綺麗にまとめられているのに気が付いた。

綺麗に水気を切られたそれらは、
シャツに至ってはアイロンまで掛けられているようで、ブーツだけがまだ多少湿っている程度だった。

全くもって感服してしまう。

本当に兵長は几帳面だ。
私はここまで綺麗に纏められるだろうか。

ーーー次は私が片付けをしなければ。
そう自然に考えてから、はっとする。

…次、は?

私達に、いや、私に次はあるのだろうか。



  


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