△ アリビンゲーブ 51
空気を求めて彼の両腕をきつく掴んでいた手もするりと力を無くす。
頭はもやがかかったようにぼんやりとし、腰からも力が抜けてしまい完全に兵長に体を預ける形となってしまった。
それを見て兵長も唇を離し、腕の力を緩めた。
「っ…はぁっ…」
やっと解放されても全身に力が入らずにくたりと座り込んでしまいそうだ。
そうなる前に兵長は私を抱き直し、何を思ったか私のジャケットを脱がし器用に立体起動装置を外して、浴室へと抱え込んだ。
…この人、何考えてるの?
最早文句を言う力も無く彼の行動を見守ると、そのままシャワーの水栓を開く。
兵長は上半身こそ何も着ていないが、まだブーツもズボンも身に着けているし、加えて私はまだシャツもズボンも身に着けたままだ。
彼の胸元に抱き止められたまま頭から湯を受けることになり、しばし呆気に取られた。
兵長…?
彼の顔を伺おうとして顔を上げようとするが、
背中に回っていた腕が頭の後ろに回され、ぎゅう、と抱きしめられた。
「!」
彼の逞しい胸板が頬に、彼の唇が額に当たった。
やはり私より幾分か体温が高く、抱き締められるとその心地よさにくらりとする。
とくん、と耳に響く鼓動は、彼に直に触れている何よりの証だ。
そっと目を閉じて彼の体温を頭と体で覚えこむ。
しっかり覚えておきたい。
彼の胸の中でこんな幸福感を味わうなんて、もう二度と無いのだから。
彼は私に色んな感情を与えてくれる。
歯がゆさも悔しさも、胸の高鳴りも、切なさも、手に入らないという、焦燥感も。
ぎゅっと彼の胸の中で拳を握ると、不意に彼が体を離して私のシャツに手を掛けた。
一つ一つボタンを外していき、
完全に濡れたシャツをゆっくりと脱がしながら、
体にキスを落としていく。
その行為はあまりにも当たり前に思えて、
私には最早恥ずかしがるという気さえ起きなかった。