△ アリビンゲーブ 46
−−−−−部下に手を出すことは兵団の為にも、お互いの為にもならない、なんてことは分かっていた。
のめり込めばのめり込むほど身動きが取れなくなる。
規律的にも、精神的にも−−−。
欲しいと願ったものはいつだって手に入れてきたが、今自分がいる世界はそれが通用しない場合もある。
特に相手がいる場合は、相手が迷惑を被ることも、身を危険に晒すことだってあるかもしれない。
そんなこと、考えるまでも無いほど分かり切っている。
分かり切っていたはずなのに、それを経験しないと分からないなんて…俺はガキ同然だ。
理解しているのならばそれを見捨てれば終わる話が、それすらも出来そうにない。
俺には分からない。
何故自分がこんな行動を起こしているのか。
当初は割り切って考えていたはずなのに、いつだって頭をよぎるのはあの表情と香りだった。
ガキ臭ぇ甘い匂いだと思ったが、行為を重ねるうちにアイツの香りは変わっていった。
時折見せる反応や表情は完全に子供のそれではなく、さらに独占欲を駆り立てられる。
手を出して、それだけで終わらせれば後腐れしないはずだったもの。
それをずるずると引き延ばし、アイツがゆっくりと自分の色に染まっていくのを見たくなったのは俺自身の誤算だ。
憲兵の話を聞いたときには、いい機会だと思った。
自分で断ち切れないのであれば周りからそうせざるを得ない状況に持ち込めばいい。
そう思ったが、自分の身辺が急に騒々しくなり、柄にもなく他人の身を案じた。
会いに行くべきではないと分かっていても体が動いていた。
アイツは、決して俺の弱み、などでは無い。
…無いはずだが。
もしアイツに何かあったときには俺は黙って見過ごせるのか?
−−−答えは、否だ。
誰にも、手出しはさせたくない。