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 アリビンゲーブ 42

「今日は皆疲れただろう。
各自ゆっくり休んでくれ」

班長からの言葉を聞き、一人、また一人と厩舎から出て行った。

「エマ、じゃあ、また後でね」

「あ、はい。」

最後に先輩がそう言い残して出ていくと、舎内には馬達と私一人だけとなった。
馬達には専用の調教師が待機しているのでもう自分にもすることは無いが、温かい生き物の体温に触れていると波立っていた気持ちが落ち着いていく。

壁外でも自分の足として頑張ってくれたこの馬にも最大の感謝を捧げたい。
調査兵団はこの馬達がいてこそ成り立っていると言っても過言ではない。

逞しい鬣を撫で、大きな体に寄り添う。
しばらくそうしていると、足元に散らばった飼い葉を踏む音がした。
誰か舎内に入ってきたようだ。

「…?」

誰か班員が戻ってきたのかと顔を上げると、そこにいたのは一人の男性兵士だった。
顔に見覚えは無い。

体は私の方を向いてはいるが厩舎内を見渡すばかりで言葉を発しようとしない。


「あの…?」


不思議に思って声を掛けると、彼は目だけを動かして私を確認し、にこりともせずにこう言った。

「…兵長がお呼びだ。付いてこい。」



  


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