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 アリビンゲーブ 22

最早通い慣れた廊下を抜け、既に私が来ると知っているはずの彼の部屋の扉を三度、小さめに叩く。

コツコツコツ。
…少し待つが、返事は無い。

こんなことは初めてだ。
いつもなら低い声で入室許可があるのだが、全く静まり返っている。

ど、どうしよう?

廊下に他の靴音が響き、びくっと辺りを見渡す。

私を困らせるのは、こういった状況だ。
兵長からは誰にも見つかるな、とか誰にも言うな、だとか口止めは一切されていない。
だが、彼の私の口を塞ぐようなキスや明かりをつけない行動はきっとバレるのを避けているのだと思う。

一瞬靴音は兵長のものかも知れない、とその人物が角を曲がって来るのを待とうかとも思ったが、よく聞くと歩幅が長く、足を擦って歩く音がした。

兵長はそんな歩き方はしない。

判断が瞬間的に遅れた。
素知らぬ顔で宿舎に戻ることも出来たはずなのに、角を曲がってくる人物の影が見えた時、弾かれたように私は兵長の部屋の扉を開けて中に飛び込んでいた。

ギイバタン!

思ったより大きな音が響いて驚いたが、とりあえず顔も見られなかったので後から問題になることもないだろう。
思えば私は毎回扉を強く閉めている気がする。

ここに来ると無意識に力が入ってしまうのかな。
次回からは気をつけなければ。

ほっと息をついて部屋を改めて見渡すが、やはり兵長の気配はない。
浴室にもいないようだ。

今日のことを忘れているのかな?

手持ち無沙汰で部屋をうろつくが、主がいない室内を物色する趣味はない。

それにしてもいつでも小綺麗にしているな。
立場上忙しいはずなのに、毎日掃除しているのだろうか。

一息ついて、パリッと伸ばされたシーツに気圧されたが諦めてベッドに腰掛けると彼の香りが優しく香った。
いつも何の香りか気になっていたが、香水ではないようだ。

本当にふとした時に軽く香る程度。
あんなに目付きが悪い割に、香りは上品だなんてなんだか反則だ。

体を倒すと、ふわり、と香りに包まれた気がした。
目を閉じると急激に眠気が襲って来る。

あ、寝ちゃだめだ…と思う間もなく意識がまどろみ、全身の力が抜けて行った…。



  


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