△ アリビンゲーブ 03
そんな時だった。
いつもの様に訓練を終わらせ宿舎に帰ろうとすると、一人の兵士に声をかけられた。
見たことのない男だ。
書類を抱えているし…本部付けの人かな。
「君、エマさん?
リヴァイ兵長が第二会議室で呼んでたよ」
行き違いざまにそう告げられた。
へ……、兵長が?
私何かした!?
途端に不安になるが、気を取り直して兵団本部へと向かう。
兵長と面と向かって話すのなんて初めてだ。
私は悲しいことに成績優秀者では無いので、褒められる覚えが全く無い。
かと言って、叱られるようなことも見に覚えが無い。
狼狽えながらも階段を登り、目的地を確認する。
丁度会議が終わったらしく、何人かの分隊長や班長が談笑しながら出てくるところだった。
その様子を敬礼しながら見送り、人足が途絶えた所で会議室を覗き込む。
兵長はまた出てきていない。
…いた。
夕暮れ時の会議室に彼は一人で腕を組んで座っていた。
目線は机上の書類に向けられているようだ。
逆光で表情は見えない。
といっても、彼の表情が変わったところなど見た事がないのだが。
「兵長、お呼びでしょうか。」
そう、遠慮がちに声をかけると彼は静かに顔を上げた。
「ああ、お前か。話がある。ついて来い。」
がたん、と立ち上がると書類をまとめてスタスタと歩き出す。
小柄なその背丈は私より微かに高いくらいだ。
本部の建物から上官達の部屋がある塔へと向かう。
一般兵士は通常立ち入りを許されていないが…。
向かっているのは、もしかしてもしかすると、
彼の自室?
話と言うのはそんなに重要機密なのだろうか。
かなりの速度で歩く彼の背中を見つめながら一人悶々と考えを巡らせる。
が、当然答えは出ない。
一般兵士用の宿舎と違い、一人一人の部屋を与えられているというこの塔は静寂を保っている。
カツカツ、と二人分の足音が廊下に響く。
他の上官は既に休んでいるのだろうか、
誰ともすれ違うことは無かった。
どこをどう歩いたのか、同じような部屋が並ぶ中で彼が立ち止まる。
がちゃりと音がして重い木の扉が開く。
