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 サルタナ 47

別棟から離れながらも、まだどこかそわそわと落ち着かなかった。


あの鋭くて冷たいような瞳に見られていると思うと、
いつだって心穏やかでいられなくなる。


コツコツと自分のブーツが立てる靴音だけが響いていた。
消灯時間は過ぎている。


あんな風にうたた寝していまうのは予定外だった。

…急がなくては。


優しいのか優しくないのか、
それさえも分かりにくい彼の言葉を思い出していた。

どの部下にもああして声をかけるんだろうか。
体調を整えろと言ってくれたのはきっと彼の本心だったのに。


嘘を、ついてしまった。

胸の中がもどかしくなる。
何かが引っかかったような、小さな傷が残ったような。
それらは決して心地の良いものではなかった。


少しだけ急ぎながら足を向ける先は女性兵舎───ではなく、医療棟だ。




夜間の緊急要員として、適任の班員が補充されるまで何か役に立てないかという私の申し出は、発言権のある彼女の二つ返事で承諾された。


調査兵団の方から許可を貰えたと伝えてあるけれど、もちろんそれも嘘だ。

日中の調査兵団から、
夜は医療班へ。


はっきりと線引きが出来るものはとても好ましい。

分かりやすくていい。
それだけでほっとするのだ。







医療棟では人手がある昼間のうちに包帯を替えたり傷薬を塗ったりと、大まかな処置は済ませてある。

医療班にいる数人の知り合いからも是非と推されたのでよかった。
見回りと鍵の管理、それから比較的容易な看護であれば医療に関して素人同然の私でも問題なしと判断されたらしい。

備品管理庫と薬品棚の中には劇薬や危険物も保管されていることから、班長以上の兵士でないと鍵の管理は任されないそうだ。



夜間は新兵も含めた少人数制で看護しているようだった。

専門知識を持った医師も現在はたった一人で、それも通常は日中に勤務するのみ。
夜間は医療班班員のみが常駐し、対応できないような事ば事態があればすぐにその医師を呼びに行くというものだった。


深刻な人手不足というのは本当のようだ。

壁外調査に行けば八割が負傷するという状況で、その治療の要の医療班が機能しないという事態はどうしても避けなければならない。


なんとかこの問題も解決法が見つかればいいのだけれど…。


初日に看護長自ら色々と見せて回ってくれた。
痛み止め薬の使用法も、含めて。



麻薬の原料としても知られる薄い紫色の花。

適量で痛みは消え、少し多ければ意識は混濁し、それを超えると呼吸や脈が乱れる。

その花の存在は、疎い私でも知ってはいた。



実際に目にしたのは初めてだった。
医療班ではよく使われているそうだ。

見た目からは想像の出来ない作用を持つ、何とも小さくて儚げな花だ。

鍵の掛けられた薬品棚にその薄い紫を見ながら、他の施設を案内してくれる看護長の後を追った。



    


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