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 サルタナ 32

数日後、私は他の班の代表者と共に調査兵団本部第三会議室へ呼び出されていた。



前回の遠征での結果を元に次回以降への立案がなされ、決定事項のみが淡々と通達される。
各班ごとの壁外での配置や作戦も通常この場でされる。


エルヴィン団長を中心に見慣れた面々がずらりと並ぶ。
そこには勿論、彼の姿もあった。
いつも通りの読めない表情に、睫毛を少し伏せて書類を確認しているようだった。

初めこそその中に自分がいるのは少し気後れしてしまったものだけれど、何事も数を重ねれば平常心でいられるものだ。




けれどそれでも、今回はいつにも増して場の空気が張り詰めるほどに重い。


それは団長の話が進むに連れて重みを増していくようにも感じられる。

それぞれが机上に広げられた壁外の地図に目を走らせ、逡巡しているようだった。


エルヴィン団長の話はいつも通り簡潔で、残酷すぎるほどに的を得ている。
…理性的に聞いていれば、の話だけれど。




「───通達は以上だ。
他に質問がなければ各自解散してくれ」




その声を合図に扉が開けられ、一人また一人と部屋を後にする。




私がやっと頭の中を整理するように息を吐いたのは、無意識に足が向いたあのソファの部屋に入り、凭れ掛かるようにしながら扉を閉めてからだった。


外はまだ明るい。

いつもなら訓練や雑務に追われる忙しい時間帯だ。
彼もこの時間には顔を見せないだろう。

私も、本来ならすぐにでも自分の班の元へ戻らなければならない。




先程聞いた内容ばかりが何度も頭を巡っていた。


調査兵団が何年も財政難に悩まされているのは周知の事実だ。


団長が少し前まで王都に向かったまま、何日も戻ってこないと班長同士で集まった際にも話題に出ていた。

その団長がこちらへ戻ってきてすぐ、こうして私達に招集が掛かった時点でなんとなく良い予感はしていなかったのだが。


要は、兵団の存続に疑問を持つ人間が増えてきたのだ。
後ろ盾失くしてこの兵団の存続はあり得ない。



エルヴィン団長や兵長の就任から兵士の生存率も増えてきてはいるものの、それでも民衆から湧く存続否定派の意見が収まらなくなってきたようだった。
民からの血税で、死傷者を闇雲に増やすだけの集まりがこのまま続いていい道理はない、と。


次回の壁外調査ではその否定派を納得させる程の実益を得なくてはならないと、団長の口調はいつも通り淡々として、どこか機械的にも聞こえた。


王政や民衆を納得させるだけの成果。
これから先も続いていく調査兵団の為。



それらを踏まえると団長が今回下した作戦と判断は全うなのかもしれない。

成果を上げなければ調査兵団への予算は大幅に減額され、壁外調査への許可も以前以上に下りにくくなるという王政から圧力があったという噂もある。



  


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