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 ブバルディア 03

−−−……えっと、つまり、邪魔が入らないってこと?



朦朧とした頭でリヴァイの言葉を何度も繰り返した。




確かに私の部屋はここと違って両隣りとの距離も近い。
時には隣の部屋の話し声も聞こえるくらい。

部屋の鍵も小さい金属のフックを丸く曲げられた金属製の穴に差し入れるだけの簡易なもので、力を入れれば壊れてしまいそうなほど軟弱なものだ。


あってない様なもの。
鍵と呼べるのかも不思議だ。


邪魔が入らないってことは。

そ、それって、恋人同士に取ってはいいことじゃないの?

やっぱりリヴァイの思ってることは分からないよ。

頭がしっかりと回らない。


まだ私のものになってくれない。
いつになったらこの人の考えが分かるようになるんだろう。


息を整えながら、リヴァイの服を小さく握ったままだった手を力なく解く。


彼から離れようとしたのに、その前にその手がぐっと熱い手に握りしめられた。



「……つまり、お前がどんなに泣いて嫌がったとしても、誰も助けに来ないってことだ」



不意に漆黒の瞳に射抜かれる。
それに驚いて、理解が一瞬遅れた。

「え?あ…っ!」

その手をそのままぐいっと引っ張られて、少し強めにベッドに倒された。


投げ出された私の上にリヴァイが乗りかかる。

少し硬めのスプリングがキシ、と小さく音を立てた。


掴んだ手をそのまま顔の上に縫い付けて、薄暗い室内なのにその瞳がしっかりとこちらを見下ろすのが分かる。


「これ以上いくとどうなるかも分かるな?

……途中でお前が泣いても、俺は止めない」


強めの腕の力と、有無を言わさない瞳の色。

その言葉の後に続くように、着ているシャツの隙間からするりともう片方のリヴァイの手が滑り込み、直に皮膚に触れた。

その感触に身体が一瞬だけぴくりと強張る。

質問されているのにリヴァイの瞳に目を奪われて、思考が遅れるのをもう何度経験したんだろう。

以前はこんなことなかったのに。

昔エルヴィンの家に来るリヴァイの瞳には、こんな風にどこか熱っぽい色は映っていなかったと思う。
面倒くさそうで呆れたような表情が多かったはずだ。


それでも、その言動の奥にはいつでも受け入れてくれている優しさを感じていて。


その言葉に遅れて思考がやっと動き出す。
旧本部で、想いが通じた日のことを思い出していた。


見下ろしてくる鋭い視線をそのまま受け止めて、見つめ返す。

触れてほしい。

この肌にも、気持ちにも。

どんなに怖い言葉を使ったってリヴァイがひどいことをするとは思えない。
もしされたって、この手になら……構わない。

その言葉と瞳に答えるように、ゆっくりと口を開く。

何年も前から、私の答えは決まっている。



「……嫌なんかじゃないって、言ったでしょ…?」



その言葉はリヴァイにしっかり届いたんだろうか。
いつもと変わらない表情に少しだけ不安を覚えるけど、不意にその瞳が細められて安心した。

彼の表情が柔らかくなる瞬間が大好きだ。
どきどきと、胸が高鳴る。


気持ちを探り合うようにお互いの姿を瞳に映しながら、その距離が近づいていく。


リヴァイはきついくらい掴んでいた手を離して、そのまま私の頬を撫でた。


優しい言葉なんて言ったりしない人なのに、その行動はどこまでも優しい。
肌に触れられるたびにその心の内は愛情に溢れている気がしてしまう。


だから、リヴァイに触られるのは気持ちいいのかな。


言葉じゃなくてもいいから、いつもは見ることが出来ないその気持ちを少しでも感じられたら、と思う。


まだどうしてもキスをする時の瞳を閉じるタイミングが分からなくて。

近づくリヴァイの熱とその整った輪郭を見ていたくて、つい唇が触れるまで目を閉じられない。



リヴァイの顔が近づいて。
甘い吐息が混ざって。

ふわりと彼の香りに包まれてすぐ、唇に暖かい感触が触れた。

唇の触れ合ったところから、身体が繋がっていく。
押し付けられる体温がどうしようもなく嬉しく感じた。

何度も角度を変えて唇を食んで。

いつの間にか、リヴァイの熱いくらいの舌が自然なほどに口内に入り込んでいた。

その感触があっという間に整えたはずの呼吸を奪っていく。



「ん、……っ」



不意に深く舌が差し込まれて、腰から体が跳ねた。


舌を最奥まで入れる為に、リヴァイの腕が私をきつく抱き寄せた。

歯列をなぞり、舌を絡めとって吸い上げられる。

上あごを舌先で触れられるとじわじわと体の芯からくすぐったいような感覚が上り始める。


「―――はぁ………ぁ、…んん…!」


どこまでも深いキスに、あっという間に体の力は抜けていく。

キスは時々するようになったけど、こんなに奥の奥まで触れられるのは初めてだった。


何度もされて慣れてきたはずのリヴァイのキスが、また少し違く感じる。


時折私に息をつかせるように間を置いていたのに、途中からはその余裕さえもなくなったように隙間もないくらい唇を重ねていた。


教えられた通りにリヴァイの行為を受け入れて、それに応える。
唇を重ねる度に夢中になっていった。


頭の芯がくらくらと溶け始めて、目を閉じて彼の体温と体の重さだけを感じる。
息苦しささえも身震いするほど心地よくて。


キスに翻弄されながら気付けばリヴァイの手が服の下を這って、背中側から抱き締めるように下着のホックを外した。

胸の締め付けがなくなり、私はその留め具が外れる小さな音を羞恥と期待、少しの不安なんかが入り混じった気持ちで聞いていた。


背中に回っていた腕が緩められて、ベッドに背中を沈め、少し顔を離したリヴァイを荒い息のまま見下ろす。


一瞬熱を持った瞳と目が合うけど、間髪入れずに首元に口づけられて、その甘い刺激に喉から吐息が漏れた。


「………ぁ…っ」


首から鎖骨、鎖骨から胸の間へと降りていく熱い唇を先回りするかのように、リヴァイの指先がいつかのように上から順にボタンを外していく。

ぷつ、とひとつずつ露になる自分の肌が彼の目に映るかと思うとやっぱり恥ずかしい。

思わず身を起こそうとするけれど、それも強い腕にぐっと抑えられてしまった。

結局ろくな抵抗も出来ないまま、肌の上でシャツの合わせがさらりと開く。



リヴァイの指先が静かにおへその辺りから上へと上がっていき、ホックを外したままの下着の下から滑り込むように胸の始まりに触れかかった。



  


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