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 ナカロマ 96

ぐらりと体が傾いて、
落ちると思ったけど、振り向きざまに立体機動を装備したリヴァイの姿が目に映る。

その手が瞬間的に操作装置に掛かるのも、見えた。

見えたのは一瞬だったけど…彼が必ず助けてくれると強い確信があった。


だから私は落ちかけている自分よりもリヴァイが煉瓦の壁で手を擦りむかないかとか、そんなことを心配していた。



…誰もいないと思ったのに。

いるなら、いるって言ってよ。
リヴァイの気配ばかり…探してた。


パシュ、とワイヤーが放たれて、それより早くリヴァイが木枠を踏み切る音がした。
煉瓦造りの塔の壁が、スローモーションで通り過ぎて行く。

次の瞬間、逆さに落ち始めていた体が彼に抱き留められた。

背中に回った腕が衝撃を受け止めるように強くて、少しだけ痛い。

焦った表情なんて今まで見たことが無いのに。

どうしてだろう、
私を助けてくれる時には少しその瞳が焦るように見えるのは。


ぐん、とワイヤーの力で二人の体が上に持ち上がる。


リヴァイは重力に逆らって壁に着地して、その膝の上に私を乗せた。



「……大丈夫か?」



いつも。
いつも迷いなんかなく助けてくれる。

これで、何度目?

私を助けようとその手が伸ばされるのがこんなに嬉しい。

いつもと同じ、あまり表情を出さないままのはずなのに。
その手と顔は誰に接する時よりも近くて、優しく見える。

リヴァイ。これはリヴァイのせいだよ。

…勘違い、してしまう。



「…、怪我は…」



そう言って背中を支えるリヴァイのシャツを半ば無意識に、ぎゅっと握った。

それに少し驚いたみたいに彼が私の目を覗き込んだ。



もしかして、
もしかして、だけど。

大切にしてくれてるのは分かる。
心配してくれるのも分かる。

何度も子供扱いされているのかとも思ったけど。

あの夜心臓が破裂するくらいドキドキしたのは、リヴァイの態度と行動のせい。

…それは間違いなく私を一人の異性として扱ってくれたから。

異性として大切にしてくれる、その意味。
心配しているから自分の傍を離れるなと言ってくれたあの瞳。


そんなことあるわけないっていつも思ってたけど。

でも、そう考えないともう辻褄が合わない。





リヴァイの瞳にはものすごく不思議そうな顔をしている私が映っているはずだ。




「……リヴァイ、もしかして、だけど……
私のこと…好き…だったりする?」




空気が止まる。



私の呼吸も止まって、一瞬一瞬がやけに長い。

でも、もう逃げない。

だって私の大切なものはいつもあなたで。

あなたから逃げたら、私の人生って意味がないんじゃないかって思えるほど。





…沈黙を破ったのは、リヴァイだった。





一瞬、ほんの一瞬だけ眉間をしかめて、表情はいつものまま。

いつもの私をからかうような、少し呆れたような困ったみたいなあの表情。




「まさかとは思っていたが……」




ふわりと抱き締めるように体勢を変えられて、さっきより近くで私を見下ろす彼の瞳。





「お前、気付いてなかったのか」



  


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