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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -


 ナカロマ 90

ぎゅっと思わず唇を噛んだ。

掴まれた腕を懲りずに離してもらおうと力を入れると、する、と少しだけリヴァイの手が緩んで腕を伝って下がり、そのまま手の平を引くように握った。

指先が少しだけ絡む。


とくんと胸が鳴るのに同じくらい痛く切なくなる。

だから、なんでこういうことするの…?



「…リヴァイだって…」


「……ん?」


「リヴァイだって、色んな事ちゃんと言ってくれないと分からない。」



心配してくれるのも、お見舞いに来てくれるのも。

私はいつも他のひとから聞くばかりだ。
それをちゃんとリヴァイから言ってもらったことなんてない。
リヴァイの態度が私に対して柔らかくて優しくて、いつでも話を聞いてくれるのは分かってる。



それはものすごく嬉しい。
…嬉しい、けど。
それだけ?


優しくしてくれるのは世話を焼いてくれるのは義務感からなの?

他のひとにもこうして接するの?
それとも私だけなの?

こんな普通に手を握ったり出来るのは、まだ小さい子供だと思って接してるから…?

言ってくれなきゃ…分からないよ。



「私を子供としか見れないなら…ちゃんと、そう言ってほしい……」



そうしたら、もう変な事思わない。

意識しないように頑張るから。
今まで通り、ううん、今まで以上に距離を保って。
何があっても、もう二度と抱き着かないようにするから。



「…子供…?」


「……」




ずき、と胸が痛む。
自分で聞いたことなのに、なんでかやっぱり聞きたくない。



「お前は、俺がガキにこんなことすると思うのか」



そう言ってからリヴァイは私の腕を離して、ごく自然な動作で両腕を私の背中に回して抱き寄せた。


「……!」


背中と腰に直に触れられて小さく身震いする。

彼の両手は私を力強く捕まえながらも優しくて。

思えば、私から抱きつくことはあってもリヴァイからされることは今までなかった。

は、と一瞬あの森で抱き締められたことが思い出されたけどあれは熱があった時だし、しっかり覚えているわけでもない。
あれはなんだか夢のような気がして仕方なかった。

でも今度は本当に、間違いなく抱き締められている。

ぐっと肌がくっつくように抱きしめられると素肌同士が合わさって、その熱さにくらりと気絶しそうになる。

胸を隠している腕が当たって痛い。
彼もそれに気付いたのか、抱きしめられたままその腕を掴まれて下に降ろされる。


「あ…っ」


更にきつく抱きしめられて胸が彼に当たってしまう。


「あの、リヴァイ……」


なんとなくいけない一線を越えているようで軽く彼の体を押してみるが、例によってびくともしない。


「…俺は、確かにお前を手のかかる奴だとは思っているが…」


彼の、掠れた声がする。
だけど頭が上手く働かない。

背中に回った彼の手がつつ、と移動した。
私の肩と首を撫でてから背中から腰へと下にゆっくりとなぞっていく。



「…っ」



背中にかかる濡れた髪を彼の手が優しく撫でる。
水の雫が、身体を上から滑っていく。

すでに冷えたはずの雫が肌を通るたびに肌がそれを感じ取ってぞくりと震えた。


その温度が熱いのか冷たいのかさえも分からない。

冷たい水の雫が一瞬火傷しそうなほど熱く感じる。


身体が、痺れていくみたい。

くすぐったいような初めての感覚に思わず手を当てていたリヴァイの胸板に身を預けた。



「…ただのガキとは思って接していない」



彼の言葉が、抱き留められていることが、嬉しい。

夜風が冷たいはずなのに私の体は彼に支えられて寒さも感じなかった。




「……エマ」




今までにないくらい甘く名前を呼ばれて頭がぼんやりとする。

リヴァイが、私を見つめる時間。


…もっと呼んでほしい。




「それが嫌なら、しっかり拒否してみろ」



  


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