△ ナカロマ 89
左腕を肘の辺りで掴まれているので右手で胸元を覆いながら真っ赤になって俯く。
絶対、耳まで赤くなってる。
赤い顔とは対照的に頭の中はすでに真っ白だった。
だって……だって、信じられない。
私は水の中とはいえ一糸纏わぬ裸で。
上半身は大胆なくらい外気に晒されている。
リヴァイも上半身は目のやり場に困るほど露で、肌の温度が嫌でも伝わる。
熱い、肌。
力強くて逞しい身体。
それがすぐ近くにある。
いつも抱きつきたいと思っていたその体が、その肌が、一枚のシャツがないだけでこんなに違って見えるなんて。
彼の優しい香りがいつもより鼻をくすぐる。
…リヴァイの、肌の香りだ。
それに気付いて目の前が眩暈のようにくらくらとした。
逃げるなって…?
腕はまだがっしりと掴まれている。
これでどうやってリヴァイから逃げられるの?
呑気に二人で月光浴なんて、絶対無理。
…ひどいよリヴァイ。
私ばっかり、意識して。
いくら私のことを女扱いできないからって、そんなにいつも通り普通にしていられるとかなり傷つく。
情けないやら恥ずかしいやらで、泣きたくもないのにじわりと涙が滲んだ。
「…エマ…?」
「放して…」
「なに泣いてる、こっち向け」
「やだってば…」
ぐい、と腕を引っ張られた。
私たちが立っている場所は水嵩が丁度私の腰のあたりまでしかない。
顔を覗き込まれて、胸を隠す手に嫌でも力が入る。
「…なんで泣いてる」
少し呆れたみたいな声。
よく泣くやつだなって思われてるに違いない。
でも、こんなのいつもの私じゃない。
リヴァイのことでなければこんなに涙腺が緩むこともないのに。
…なんで、見せたくないこの人の前でだけこんなに弱くなっちゃうんだろう。
これじゃあ涙を利用して気を引こうとしてると思われたって仕方ない。
「泣いてない」
さっきは素直になりたいと思ったはずなのに、すでに気持ちとは裏腹の言葉が口を突いて出る。
でもリヴァイには情けないところばかり見られている。
こんな自分、嫌なのに…。
「…言わなきゃ分からねぇだろうが」
何を、言うの?
私のこと好きになって、異性として見てって。
そう言えばいいの?
そう言ったら何かが変わるの?
好きすぎて情けないところ見せたくないって。
リヴァイのことがすごく好きだって、そう言ったら。
なにか言ってくれるの…?
いつも何も言ってくれないのは、どっちだと思ってるの。