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 ナカロマ 72

その返事に首を掴んでいたリヴァイの手が一瞬だけ動いた気がして、痛みを覚悟し思わず身体を縮ませてぎゅっと目を瞑った。



「……!」



リヴァイとも、これきり。

もう、彼を想って泣くこともないんだ…。



ーーー?



そう思ったのに、首元の彼の指先にそれ以上力が入ることはなくて、恐る恐る目を開いた。

薄く開いた視界。

悲痛そうに眉根を寄せて、傷ついたような表情のリヴァイの顔が滲んで映る。



…滲ん、で?


そんな顔、しないで。





「……泣くな」




込み上げる感情はもうどういうものか自分でも分からない。

目頭はずっと前から熱くて、じんとしていたのは覚えてる。

それでも堪えていたはずの涙は、いつの間にか頬を流れていた。


わたし、いつから泣いてた…?


強く押さえつけられていた喉が唐突に解放されて、ひゅう、と新鮮な空気が肺へ入る。

少しむせるようにして呼吸を整えようとするも、吸った息からすぐに嗚咽へと変わっていった。

首から離れたリヴァイの親指は頬に流れる涙を拭ってくれるけど、堰を切ったように後から後から涙が流れる。

「…っふ………」

耐え切れず声が漏れて、肩が震える。

零れだす涙を慌てて頬に伸ばして拭き取った。


違う。
こんな風に困らせたいわけじゃない。


怖かったわけじゃない。

リヴァイが悪いんじゃない。


殺されてもいいと思ったのは、本気だったのに。




「……悪かった」




悪くない。

リヴァイは悪くない。


大丈夫って笑って言いたいのに、泣きながらそんなこと言ったって意味ない。

顔も、涙を拭く手も熱を帯びてきて言葉にならない。


伝えられない気持ちと一緒に、拭っても拭っても絶えず溢れてきた。






「エマ……泣くな」





するりとリヴァイの手のひらが泣き止まない私の顎を掴んで、顔がぐっと近づく。



…、え……?



そう思った瞬間に、目尻に柔らかい感触を覚えた。

さらりと、リヴァイの髪が頬をくすぐる。

……触れたのは、指じゃない。

頬でもない。

ほんの少しの瞬間だけ体温がじわりと混じって、すぐ離れる。



い、いま……



あまりにも驚いて涙を溜めた目を大きく見開くけど、リヴァイの表情はいつもと同じく読めないまま。

でも、目を少し細めてわたしの目元を見つめる。

手は目尻の涙に添えられて、雫を零さないように指先を軽く肌に押し付けてから、つつ、と横に逃がしていく。



さっきまでの怖いくらいの空気は既にどこかに消えていて、それに気付いて心臓がどくっと動き出した。


頬に触れたままのリヴァイの手が熱い。

間近に感じるリヴァイの体温が、熱い。

鼓動が聞こえる。
…どっちの?





「……エマ……」





あ……




切ないくらいの声色で、リヴァイの唇からわたしの名前が呼ばれる。


心地よくて、頭がしびれる。

優しいくらいの瞳も、綺麗な鎖骨も、形のいい薄い唇も。
彼の行動の一つ一つに翻弄されて、目が離せない。


胸が怖いくらいどきどきとうるさい。




こんなリヴァイ……初めて。




どうして?
さっきのは、もしかして……



  


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